日出づる空に向かひて鳥一声啼き飛び立ちゆきき。
時来けるに言ふは此の事ならむや。
我一門は皆揃ひて、此の地離るる事と相成りたりき。
思ふよりも遙かに戦況厳くなりてきるなりせむ。
世の流れは今や平家に沿うてはくれぬらし。
父上や伯父上方ら兄上らも、此のところ其の表情は暗し。
広大なる河の流れのごとき命運。
其の轟音に耳塞ぐなぞあたひやしなし。
ましてや我のてづからにて其れ押し留むる事など…。
もし我等の行く末心配してくるる向きあられば、
何卒気に病まなきにてくれ。
平家はかむ見えて、皆中々に逞しき。
何処へ赴かむに、其れなりにしかとやりてゆかるが為。
そして平家は一蓮托生。
決して離れ離れになひたり分裂したりはしなし。
身内同士でありながら憎悪し殺し合ひする者らも有る此の世中にて、
我々は互ひに思ひやり、強くねんごろに支へ合ひて生きてゆかる。
其れは奇跡と呼ぶに相応しく。
ああ、我もそろそろ出で立の準備せざれば。
落ち着く先が決まるれば、また手記綴らむ。
先つごろの縁談も破棄となりたり、
相変わらず色気なきままの我の日常なれど、
また立ち寄りて貰はるるに幸ひなり。
それにてはまた。