暑ぞにて体調崩さるる人々のこと、しばしば耳にするごとくなりき。
何れの人も大事に至らねば良かれど。


暑ぞも寒ぞも、度うち過ぐるに生き物の体にとりては良きことにてはなかれど、
場合に寄るに暑ぞの方が、より人間の体には悪しきやうな気がす。


大地や木々や水辺に囲まれて有らばともかく、
其れらが必要以上に取り除かれたりし場所は自然の理が崩れて有り。


さやうなるどころに押し込まれれたりせば、
体を壊さざる方がをかしかるならむ。


人はあまりに利便性ばかり追ひ求めうちすぐ。


其の先に繁栄を思ひ描きたるぞやも知られざれど、
其れは果たしていりたし誰ぞの為の繁栄なるや。


異物に覆はれ、呼吸遮へられたりし大地は、
もはや熱風を吸収してはくれざるなり。


生きとし生けるものをさる場所へ囲ひ込み、
彼らの生く環境さへ己の意のままにこんとろーるせむにす。


然様なるもは決して良き施策とは言はれず。


そはすなはち魔物の所業なり。

いはれなき虐めに遭ひて、自ら命絶ちし稚児の話を聞きけれど、
何とも胸の痛くなる出来事なるに思ふ。


かやうにいりし事件は時折耳にすれど、
何時になひても一向に減る気配なかるは何ゆゑなるや。


力持つに勘違ひしし者、弱きと見ゆる者を徹底的に痛めつける。
其のやり様は陰湿にて残酷極まりなし。


さながら獣の所業にてはなかるや。


否、獣は己生く為に弱者を食らうのみ。
其の生存の脅かされても有らぬ人間が、
気に入らざるが為なりとて他者を虐げる行為は、
まさに獣以下の仕業と言はれむ。


今、ここにて我がかくのごとき戯言をつらつらと述べても、
失はれし尊き命は、もう戻りては来ざるなり。


せめて此の先の世にて、人々の心が安寧となり、
残忍に虐げられる者らが一人でも減とはほしきとあらます。


さういでざれば、図らずも若き命散らしし魂の悲しき慟哭は、
永劫に渡り、人々の胸奥に響き続かれゆくならむ。

袖ひぢて 我手にむすぶ水の面に あまつ星合の空をみる哉


本日は七夕祭りの日なるかし。


地方によとは其の催しの仕方は様々なるにいへど、
牽牛と織姫つつがなく逢瀬を果たせるごとくとあらます気持ちは
皆、同じにてはなかるならむや。


今、我の屋敷より見上ぐる空には一面、雲が広がりたり。
風もいささかあるやうなれど、夜までに此の風が雲を駆りてくるるに良かれど。


されど然し、たとへ雲が遮ふり、地上の我等よりは見えずとも、
彼の恋人同士はをさをさ逢瀬を果たすならむ。


否、却って、物見高なる好奇の目などなき方が、
貴重なる二人の時間をゆるりと暮らさるにいふものなり。


さう思ひまはすに、牽牛と織姫にとりては、
七夕の日は実のところ、大雨に当たるくらかれどよかるやも知れず。


地上にどれほどの雨降らむに、
天の世界にては何時でも煌びやかなる星が瞬有りたり。


けふの空模様に拘らず、
二人はうるはしき天の川に舟を渡して、きっと出で会ふなり。


内庭にて短冊を笹に括り付けたりし童は、
不安気に空見上げたるが為、話して聞かせてやらむ。


たとへ雨降りてきけるにしても、
そなたのあらましは滞ることなく天に届くが為と。


文月に入りて随分と暑ぞもましてきしやうなれど、

病に罹りたる人などは居なからむや。

我も暑かるは苦手なれど、何とか日々涼をとるごとくして凌ぎにて有り。


先ほど、近くの川に涼みに出でかけし惟盛殿が戻りて来られき。

「なほ水辺は涼しかりて良きものなり」などと、御機嫌よかりし様あれど、
よく見るに、彼の人の左頬がいささか腫れたるごとく見ゆ。


「蚊になど刺されはべるなりけるや?」と聞くに、惟盛殿はやや慌てた樣にて、
「ああ、さう。さもあるなりかし、敦盛。
水の近くには人刺す虫おほかりて困ったものなるかな」と、
御答へになひて、そそくぞと御自身の部屋へと戻られゆきき。


何やら樣が怪しきなるしと思ひたりせば、
案の定、彼の腫れし頬は蚊に刺されし訳にてはなく、
何処やの女人に打たれしどころ為なるに、後にて舎人の一人が教へてくれき。


惟盛殿は川辺にて、いりたき何したりけるぞや。


どうでも良かれど、せっかく涼みに行きつつ痛ひ思ひするは何卒と思ふ。


「そなたも気点さるるなりかし」などと彼の人はのたまひたりけれど、
不本意ながら、其の仰せは肝に銘じておかむ。


心地よひ夏のひとときを台無しにせられぬごとくと気点さるる相手は、
小さき虫どものみにて充分なりむなしきかな。

先ほどいささか嬉しきことあひければ、
思はずあめぇばにて手記を綴りたくなりたりき。


何時もならば数日置きにしか書かず、怠け者の我だけれど。


いかなる嬉しきことあひけるや、知りたき人は有るならむや。
我の此の胸の喜び聞きたく思ふ人など有るならむや。


・・・・・・。


否、その、改めて綴らむに思ふと中々かかやかしきものなるかし。


今ここにて詳しくは言はれざれど、
ひとつのみをさをさ記しておきたきことあり。


其れは、心よりのあらましは必ず叶ふにいふことなり。
夕べ、さること語りてみけれど、
なほ其れは紛れもなきまことなるに思ふ。


今、我の言の葉を聞きてくれたりそなたも、
あらましは強く強く、決して諦めずにいだきゆきてほし。


汝の純粋にて穢れなき思ひ、紛うかとなく天に届くならむが為。


ちなみに我の叶ひし嬉しきこととは、
色恋に関する話にてはなかるかし。


うらめしけれど、さる美味なる出来事などは、をさをさなかれば。