何やら隣国騒がしきやうなり。
詳しきことは分からざれど、我国に対して不満あるならむや。


彼の国とは清盛伯父上が昔より交易進めてきて、
人々との交流も恙無きものなるに思ひたりけれど、違ひけるや。


あな同じ地に生く人間同士であれど、異なる考へや諍いなど生じるゆえ、
増してや海を隔て違ふ言語にて話す人々と相違ふは、

致し方なかるやも知られざるかし。


しかしなほ、如何なるに差異あらむにも、人間は人間なり。
愚かしき憎悪の念などに振り回さるることなく、

互ひにまた笑顔交はし合ひ、

平和なる世に向かひて手づから携えてゆかるれば良きと思ふ。


憎しみよりは何も生まれず。

其の果てにあるもは只破壊と自滅のみ。


かりそめなる感情に心を支配せらるぞも分からずもなかれど、
今ひとつ一歩引きて、何が最も正しきことなるやに、
思ひたみせてほしきものなり。


正しきこととはもちらん、
悪しき政に加担することでも傍観することでもなかるならむ。


粘り強く暴力もちふることなく、
世の人々の幸ひ有り構築しゆく。


地味にて歩みは遅かるやも知られざれど、
其れ最も大切にて且つ確実なる方法にてはなからむや。

旅よりつつがなく帰還しき。


先週には帰りて来たりけるぞのみれど、

片付けやら何やらに手間取りたるうちに、また日うち過ぎたりけるかし。

何や殊なる用でもなし限り、あまり遠くの地へは殆ど赴くことのなき我なれど、

此度の旅は本当に良きものなりき。


終始天候に恵まれ、やや暑ぞは厳かりしものの、

行く先々にては何処でも楽しき思ひしき。


予てより訪ねてみけりたき寺や神社などにも参拝あたひしし、

なにゆゑや我の名の付けられし蕎麦や御飯も給はることあたひき。

此の食事なるぞかしや美味なりけるかし。


全体的にいと充実しし旅なりけれど、只ひとつ、不可解なるもの目にしき・・・
其れが此。


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とある寺への細道歩みたりけるにころ、

一匹の秋太刀魚らしき魚が道に横たわりたるなりき。

周りは民家あるのみにて、秋太刀魚なぞ生気息する水場など無かるぞのみれど。


いと謎なり・・・。

明日よりいささか遠き地へと旅に出づれば、こちは留守になる。


此のところあまり手記書くぞもままならざりし上に、

斯様にして留守にまにてしまふは何ともやるせぬものなるかし。


けれども旅に出づるにいふは、己の見聞を広めることにも役立つ。
何やと大変にはあれど出で立することにしき。


・・・有りや、帰りてく。もちろん。

何なりやかやうな書き方しせば、まるで今生の別れのごとく聞こゆれど。


嗚呼。さもあるかし。
「旅に出づ」といふ言ひ方して、二度と戻らぬ者もおほかるかしが為・・・。


さうやりて重なりしとらうま、信ずる心そけたるならむ。

然し我の場合は真に只の普通の旅なり。


幾日かしせば、しかと戻りて来。

見知らぬ土地にて目にししいろんなる物、

土産話としてここに書き記さむ。


あな、我の帰りなるぞ

待ちわびてくるる奇特なる者も有らざるならむずれど。

ぱそこんが儚くなりたりき…。


否、ゆえにと言ひて
あめぇばにて手記を綴られぬわけにてはなかれど、
すがら我と明かし暮らし共にしてくれきぱそこん逝きたりし事、
いと悲しきなり。


先週の出来事なるぞ然はあれど、暫くは気持ちも凹みてせざらむ、
何したりてもやるせず。
心にぽっかりほげりたといふは、斯様にいふ事ならむや。


代はりのぱそこんは何とか用意あたへど、
なほ何やと勝手違ひ、使ひ慣るるまでは暫く苦労しさもあるかし。


物には魂なるぞ宿らざりたるといへど、
いざ喪失しし時に味はふ悲しみは如何ともし難し。


其れとも我が人よりも感傷的になりうちすぐる所為ならむや。


かくのごとき姿誰やに見られたくはなかれば、
今暫くはおのが部屋に閉ぢ籠り、
亡き愛用ぱそこんの供養に懇ろに勤しむとせむ。
 
といふか、あたふことなら蘇りてほしきものなれど、
させどに其れは無理なるならむかし・・・。

さうこうにしたるうちに盆もうち過ぎたりけるかし。


我が平家でも、盆にはいろいろと催しす慣わしだ。
我も笛持ち管弦の列に加わらざればならぬにて、中々に紛らはし。


彼方此方よりちぢの来客が見舞ひてくるは、
屋敷が賑やかになひて良きことなり。


せられど我はあまり騒がしきは苦手なれば、
こころあてに皆の前に顔を出だしせば、
早々におのが部屋へ引き上ぐることにしたり。


頃合ひ上手く見はからひて座立たぬと、
いみじき目に遭ふは必至ゆえに。


先つごろも、食事済ませ戻らむにしせば、

運悪しく何処やの小父に捕まひたりき。


小父は丁度いひ具合に酒にゑひたりて機嫌よげなり。

案の定、がっつりと肩など組まれて、延々と話を聞かせられき。


斯様にいりし人が我に向かれてくる話題は決みて色恋の話なり。
女人の心掴む為の手練手管をとつとつと聞かせてくる。


適度に愛想笑ひ返し、其の場を離れむにしせば、
何と経俊兄上が我の背中を抑ゑ付けたり。


此にてはおひそれと立ち上がられずはなゆか。


「経・・・」と我が言ひかかれけるを阻んにて、この兄上は
「小父さん、此の朴念仁の我が弟に、色恋のいろはを
とくに仕込みてやりたまへかし」などとのたまふ。


わはは、と大笑ひしつつ小父と兄上は酒酌み交はし盛り上がり始めき。


此は思ひのほか長丁場になりさもあるかしと半ば諦め、
甘き唐菓子口にしつつ、人生の先達らが語る、よく分からぬ色恋話を
右より左へと聞き流す我の今年の盆なりき。