月に取り残された宇宙飛行士を如何に救出するか?「THE MOON」を観て | パンクフロイドのブログ

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THE MOON 公式サイト

 

チラシより

月面の有人探査を叶えるべく、3人のクルーを乗せた韓国の有人ロケット ウリ号は宇宙へ旅立った。しかし月周回軌道への進入を目前にしながら太陽風の影響で通信トラブルが発生し、修理中の事故によりクルーの命が失われる。唯一残された新人宇宙飛行士ソヌを生還させるため、5年前の有人ロケット爆発事故の責任を取り組織を去った当時の責任者ジェグクが宇宙センターへ呼び戻される。一方、仲間の遺志を継ぐ決断をしたソヌは、重大な危機に直面しながらも月面への着陸を成功させる。僅かな救出の可能性に懸けて地上スタッフが奔走するなか、果たしてソヌは再び地球の大地を踏むことができるのか----。

 

製作:韓国

監督:キム・ヨンファ

脚本:パク・ヒガン キム・ヨンファ

撮影:キム・ヨンホ

美術:ホン・ジュヒ

音楽:イ・ジェハク

出演:ソル・ギョング ド・ギョンス キム・ヒエ

2024年7月5日公開

 

宇宙を舞台にした韓国映画は珍しく、果たしてどんな映画になっているのか、その一点の興味のみで観ました。昨年、観測衛星を搭載したロケットの打ち上げに成功したとは言え、ヌケヌケと月の有人探査を行なおうとする物語に、彼の国の自惚れ具合が推し量れます。まぁ、そんな訳でこちらも少々意地悪な見方をしながらの鑑賞でした。

 

宇宙開発をする目的は主に軍事利用のためで、人類の発展に貢献すると思っているのは、おめでたい日本人くらいなのでは?この映画の韓国の場合は、月に眠る資源の採取と国の威信を賭ける面が強いです。特に宇宙センターに携わる人々は、5年前のロケット打ち上げの失敗で予算が削られたこともあって、何としても成功させねばならぬ使命に駆られています。

 

太陽風の影響で通信が困難な状況や、NASAからの強い反対意見があっても、強行に有人ロケットを打ち上げた背景には、メンツにこだわる国民性が少なからず表れています。案の定、予測されたトラブルが発生し、船外に出て故障個所を調べていたクルー2人が作業中に命を奪われ、新人のゾヌが船内に取り残されます。

 

宇宙センターの長官はソヌ一人だけでも地球に生還させようと、NASAに協力を要請しますが断られます。NASAも太陽風による通信トラブルへの対応に追われている事情があるにせよ、拒否したのはそればかりではないと思いますよ(笑)。

 

こうした状況の中、ソヌは月面への着陸を試みます。それは生き残った者の死んだ仲間に対する贖罪意識の表れであると同時に、彼の父親の汚名をそそぐ気持ちもあったでしょう。ソヌの父親は5年前の有人ロケットの打ち上げに関わっていて、事故により飛行士を3人死なせた責任から自死した経緯がありました。ソヌは命の危険に晒されながら、父親の名誉を回復する必要に迫られていたとも言えます。

 

ただ、ウリ号は宇宙センターからの外部操作も可能だった筈で、ソヌが勝手に着陸するのを防げた気がしないでもないのですが・・・。裏を返せば、NASAからの協力を得られず、月面への有人探査の偉業に抗いきれず、ソヌも宇宙センターのスタッフも一か八かの賭けに出たという穿った見方もできますね。私のようなひねくれ者からすると、見栄っ張りな国民性が窺えて、これはこれで面白かったです。

 

その反面、少し醒めた見方をしながらも、生きる気力を失ったソヌに対して、ジェシクが彼を奮起させるべく敢えて自分の黒歴史を暴露するところは胸を熱くさせますし、自分の地位を犠牲にしてでもソヌを生還させようとする人物が現れるなど、韓国映画は観客の情に訴えるのが非常に巧みでもあります。時折、それが鬱陶しく感じられることもありますが(笑)。

 

一方、月面から採取したデータを韓国で独占しようとせず、世界で共有して行こうとする姿勢や、合衆国をある意味裏切った人物を、あの地位に就かせるなど、綺麗ごとの好きなあっち系の人々にはウケるかもしれませんが、私はご都合主義に逆に興醒めしましたよ。

 

ソヌが地球に生還できるかどうかは、ある程度娯楽映画を観て来たならば容易に想像でき、そちらには関心が向きませんでした。寧ろ、ソヌが父親と関わりのあったジェシクに対し、彼の“秘密”にしていたことを知った上で、どのように対処するかに興味がありました。その意味では、エピローグの場面において、宇宙飛行士のぬいぐるみを着た人物の意外性で、即座に観客に分からせる演出が洒落ていました。