1976年から1978年にかけてのボブ・マーリーを中心に描く「ボブ・マーリー:ONE LOVE」 | パンクフロイドのブログ

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ボブ・マーリー:ONE LOVE 公式サイト

 

チラシより

1976年、対立する二大政党により国が分断されていたジャマイカ。国民的アーティストとなっていたボブ・マーリーは国内の政治闘争に巻き込まれ、銃撃されてしまう。だがその僅か2日後、ボブは怪我をおして[スマイル・ジャマイカ・コンサート]のステージに立ち、8万人の聴衆の前でライヴを披露。その後身の危険を感じロンドンへ逃れたボブは[20世紀最高のアルバム](タイム誌)と呼ばれる名盤「エクソダス」の制作に勤しむ。さらにヨーロッパ主要都市を周るライブツアーを敢行し、世界的スターの階段を駆け上がっていく。一方母国ジャマイカの政治情勢はさらに不安定化し、内戦の危機がすぐそこに迫っていた。深く傷ついたジャマイカを癒し内戦を止められるのはもはや政治家ではなく、アーティストであり国民的英雄であるこの男だけだった---。

 

製作:アメリカ

監督:レイナルド・マーカス・グリーン

脚本:テレンス・ウィンター フランク・E・フラワーズ

        ザック・ベイリン レイナルド・マーカス・グリーン

原案:テレンス・ウィンター フランク・E・フラワーズ

撮影:ロバート・エルスウィット

美術:クリス・ロウ

音楽:クリス・パワーズ

出演:キングズリー・ベン=アディル ラシャーナ・リンチ

         ジェームズ・ノートン トシン・コール アンソニー・ウェルシュ

2024年5月17日公開

 

映画の冒頭にボブ・マーリーの長男ジギーの簡単な挨拶があり、続いて本編が始まります。この映画はボブ・マーリーの伝記映画と言うより、彼が1976年から1978年までの時期にどのような状況に置かれていたのかを描いており、生い立ちや音楽キャリアに関しては、時折挿み込まれる回想シーンで説明する構成になっています。

 

1976年、ボブ・マーリーはジャマイカで無料コンサートを開催することを計画していましたが、コンサートが近づくにつれ彼の意思とは裏腹に政治性を帯びてきて、警告や脅迫を受けるようになります。その結果、リハーサル中に武装した男達に襲撃を受け、ボブ以外にも負傷者が出ます。ジャマイカの政治情勢に疎いので、彼が襲撃を受けた理由はイマイチ解りませんでしたが、やがて彼はロンドンに音楽活動の場を移します。

 

このロンドンにおける暮しは興味深かったです。クラッシュのライヴにボブ・マーリーとウェイラーズのメンバーが実際に行ったのかは定かでありませんが、イギリスのパンクムーヴメントとジャマイカンレゲエの邂逅を象徴していました。その後、イギリスのニューウェイヴ、ブリティッシュレゲエが互いに影響し合いながら台頭することを思うと、双方のジャンルに影響を与え、文化背景は違っても精神的な繋がりを感じさせる一幕でした。

 

また、アイランドレコードのクリス・ブラックウェルを含めたアルバム「エクソダス」の制作過程も、アルバムジャケットひとつ決めるのでも、アルバムが売れる事と聴く側へのメッセージの議論があって面白かったです。

 

劇中では勿論ボブ・マーリー&ウェイラーズの代表曲が流れ、コンサートシーンでもそれらの楽曲が歌われます。ただし、最後はキングストンの「ワン・ラヴ・ピース・コンサート」で「ONE LOVE」を歌って締めるのかと思いきや、敢えてそうならないのがこの映画の一筋縄では行かぬところ。

 

実際のコンサートでは対立する政党の党首をステージに上げて、二人に握手させた事実があるにも関わらず、そこはエピローグとして実際の映像を流す演出が実にクール。コンサートで盛り上がって終わるより、その手前で寸止めして終わる遣り方は、個人的には好ましく感じられました。でも、肩透かしを食らったと思う人はいるかもしれません。

 

私はボブ・マーリーの音楽が好きですが、熱烈なファンと言う訳ではありません。せいぜい彼らのアルバムを数枚持ち、ウェイラーズのバックコーラス隊アイスリーズにいたリタ・マーリーとジュディ・モアットのアルバムをそれぞれ1枚ずつ持っている程度。

 

それでも、劇中でいみじくもリタ・マーリーが、ラヴソングが好きと言ったように、私もメッセージ性のある楽曲と同じくらい恋歌は好きですし、レゲエ独特のリズムのない楽曲も好みます。回想シーンではプロとして認められていない頃にスタジオで演奏する場面があり、アメリカナイズされた曲にダメだしを食らっています。バンドはその後に演奏したスカで認めてもらうのですが、ダメだしされた楽曲も私はリズム&ブルースの影響が感じられ、結構気に入りましたよ。

 

ボブ・マーリーは1979年に一度だけ来日公演を行なったことがあり、その時は残念ながらコンサートには行けませんでした。ただし、FM東京がボブ・マーリーのインタビューと、公演の一部を流した特別番組を放送したのを聴いたことがあります。その番組では、エリック・クラプトンが「I Shot The Sheriff」をカバーしたことについて質問され、彼が口を濁したので気に入っていないのだなと推察しました。映画を観ながら、ついついそんなどうでもいい事まで思い出しました。

 

やっぱりこの曲はライヴヴァージョンがいいなぁ