完全新作として描かれた「猿の惑星 キングダム」を観て | パンクフロイドのブログ

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猿の惑星 キングダム 公式サイト

 

映画comより

300年後の地球。荒廃した世界で人類は退化し、高い知能と言語を得た猿たちが地球の新たな支配者として巨大な帝国「キングダム」を築こうとしていた。若き猿ノアは年老いたオランウータンから、猿と人間の共存についての昔話を聞かされる。ある日、ノアは人間の女性と出会う。その女性は野生動物のような人間たちの中で誰よりも賢いとされ、猿たちから狙われていた。彼女と一緒に行動することになったノアは、本当の人間を知るうちに、キングダムに違和感を抱き始める。

 

製作:アメリカ

監督:ウェス・ポール

脚本:ジョシュ・フリードマン リック・ジャファ

         アマンダ・シルヴァー パトリック・アイソン

撮影:ギュラ・パドス

美術:ダニエル・T・ドランス

音楽:ジョン・パエザーノ

出演:オーウェン・ティーグ フレイヤ・アーラン ケヴィン・デュランド

         ピーター・メイコン ウィリアム・H・メイシー

2024年5月10日公開

 

『猿の惑星』シリーズは、1960年代から70年代にかけて制作された5作を観ていますが、ティム・バートン版の「PLANET OF THE APES 猿の惑星」や、2010年代のリブート版は未見です。チラシには新章開幕という触れ込みでしたが、果たして・・・。

 

1作目の「猿の惑星」を初めて知ったのは小学2年生の頃で、確か『少年マガジン』の映画の封切りに向けての特集記事を読んで、人間が猿に支配される世界に食いついたと思います。ただし、実際に観たのは5年後のテレビ放映の時でした。放映の翌日、クラスでは「猿の惑星」の話題で持ちきりでしたね。特殊メイクも然ることながら、サプライズ・エンディングは、中坊にとって少なからぬ衝撃を受けましたよ。そう言えば、70年代半ばには日本でも、円谷プロ製作の「猿の軍団」という特撮テレビ番組が放映されていましたっけ。

 

それはともかく、新作の「猿の惑星 キングダム」は、その1作目を意識した作りになっています。ただし、微妙な違いも見られます。1作目が概ね人間側のチャールトン・ヘストンの視点で描かれるのに対し、新作は終始猿の視点に立っています。また、1作目が黄禍論の暗喩に満ちているのに対し、本作は為政者が故人(シーザー)を神格化しながら本来の教えを捻じ曲げて、目的のために手段を択ばぬ“聖戦”の思想が色濃くあります。他にもラストを観ると、1作目とは反転する構図すらあります。

 

新たな門出を応援したい気持ちはあるのですが、全体的に話のテンポが鈍く感じられるのは困りもの。導入部となる、ノアたちが鷲の卵を捕獲する場面にしても、後々伏線となるのに必要な要素が多く含まれているのは分かるにせよ、もう少し手際よく進めてもらえないかとグチのひとつもこぼしたくなります。またラストに関しても、1作目がアレを見せることによって、中学生の頭でも一発でどのような意味を持つのかが理解できたのに対し、本作はメイの目的を観客に分からせるために、いくつかのショットを挿み込まねばならないのが痛し痒しでした。

 

この映画では完全な新作と銘打っており、果たしてこの作品以降も続いて行くのかは分かりませんが、例えばオリジナル版『猿の惑星』の3作目のように、思い切った方向転換をしていかないと苦しいような気がします。