仮出獄中のやくざが2億円相当の金塊を奪うが・・・「懲役十八年 仮出獄」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流 2024 より

 

製作:東映

監督:降旗康男

脚本:石松愛弘 降旗康男

撮影:仲沢半次郎

美術:中村修一郎

音楽:渡辺岳夫

出演:安藤昇 若山富三郎 伊丹十三 松尾嘉代 城野ゆき 伴淳三郎 山本麟一 二本柳寛

1967年10月21日公開

 

2年の刑期を残して仮出獄を許された郡司(安藤昇)は、昔の仲間で口の聞けない金庫破りの木島(伊丹十三)に迎えられます。木島は早速、日東化工が密輸入した金塊を奪取する計画を郡司にもちかけます。郡司は二人だけでは無理と判断し、昔の仲間の大宮(若山富三郎)を誘います。しかし、現在熔接工をしている大宮は武という子供があり、乗り気ではありませんでした。それでも、医師から胃癌を宣告され、余命いくばくもないと知ると、武に少しでも金を残すため仲間に加わります。

 

日東化工の社長岩井(二本柳寛)の背後には、国際ギャング団のケネス・ジャクソン(エリック・ニールセン)一味が居て、武器を供給してベトナム戦争で儲けていました。郡司たちは日東化工の金庫から2億円近い金塊を奪うことに成功します。一方、前田刑事(伴淳三郎)が郡司の動きを追って日東化工を訪れましたが、岩井は書類が奪われたと報告するのに留めました。

 

やがて、金塊が盗まれたことを知ったジャクソンが来日し、不始末を仕出かした岩井を事故死に見せかけ殺します。その頃、郡司たちは奪った金塊を捌こうにも、ジャクソン一味を怖れて誰も買手がつかず苦慮していました。そんな折、木島がジャクソン一味に捕まり拷問を受けます。木島は拷問に耐えましたが、恋人の圭子(城野ゆき)が拷問に遭うのに耐えられず、郡司の居場所を吐いてしまいます。

 

郡司は日東化工の手下に連れ去られようとしますが、返り討ちにし木島を救出します。郡司はその後、不敵にも金塊をジャクソンに売りつけようとし決裂。ジャクソン一味は大宮の子供、武を誘拐するという手段に訴え、郡司を脅迫して金塊と武とを交換させようとするのですが・・・。

 

加藤泰が「懲役十八年」を撮っていますが、繋がりは全くありません。話自体も使い古しのパターンで新鮮味はありません。ただ、その中から楽しみを見出していくのも、プログラムピクチャーを観る上での心得のひとつでしょう。

 

この映画では、若山富三郎がやたらと腕っぷしの強いキャラクター。しかも大宮という名前。否でも実弟の勝新太郎の当たり役のひとつである『兵隊やくざ』のキャラクターを思い出さずにはいられません。只でさえ兄弟間ではライバル意識が強いため、兄がどこまで弟を意識しながら演じていたかを考えながら観るのも一興でしょう。伊丹十三は口の聞けない弟分を演じており、「すべて兄貴に任せる」と郡司に全幅の信頼をおくのが、子犬が飼い主に甘えるような感じがしてなかなか可愛く映ります。また、60年代から70年代にかけての松尾嘉代の良さが、この映画を観て改めて思いました。

 

この映画で一番感心したのが、郡司の危機管理能力。それは人質と金の交換時に表れています。郡司が自分とケネス・ジャクソンをその場に残したまま、大宮と子供を安全地帯に逃す駆け引きに唸らされます。それにも関わらず、大宮が仲間を見捨てることができず、再び戻ってきてしまうのもまたボンクラ好み。郡司の好意を無にするばかりか、子供まで危険に晒すのは愚かとも思えますが、自分さえ良ければ後はどうでも良いと考える人間が多くなっている現代では、大宮の義理堅さは奇特と言えます。そして、銃撃戦の末に誰もいなくなる結末は、仮出獄中の人物が実行した犯罪に相応しいと思えてきます。