ゲームデザイナーが抱えていた闇とは?「マンティコア 怪物」を観て | パンクフロイドのブログ

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マンティコア 怪物 公式サイト

 

チラシより

空想のモンスターを生み出すゲームデザイナーのフリアン。同僚の誕生日パーティーで美術史を学ぶディアナに出会う。内気で繊細な性格のフリアンだが、次第に聡明でどこかミステリアスなディアナに魅かれていく。しかし、フリアンは隣人の少年を火事から救った出来事をきっかけに原因不明のパニック発作に悩んでいた。やがて彼が抱えるある秘密が、思いもよらぬマンティコア「怪物」を作り出してしまう・・・。フリアンが自分自身のなかに見たマンティコア「怪物」とは何なのか。もしそれが倫理的に許されない[欲望]ならば----その感情を抱くことは罪なのだろうか?ともすれば目を背けたくなるタブーなテーマを炙り出し、物語はやがて誰も想像し得ない衝撃の境地にたどり着く----。

 

製作:スペイン エストニア

監督・脚本:カルロス・ベルムト

撮影:アラナ・メヒア・ゴンサレス

美術:ライア・アテカ

出演:ナチョ・サンチェス ゾーイ・ステイン アルバロ・サンス・ロドリゲス

         アイツィベル・ガルメンディア

2024年4月19日公開

 

本作はこちらの想像していた物語とは違っていたため、少々戸惑いを覚えました。それは物語の核心に当たる主人公の“闇”の部分がなかなか現れないことに起因しています。特にフリアンとディアナが惹かれ合いつつも、なかなか恋愛行為にまで発展しない点が間怠く感じられ、中弛みのような印象さえ残します。

 

それでも、フリアンが契約違反(だけではないのですが・・・)により、会社から処分を受けてから急速に話が動き出します。更に、一人で留守番をしている少年クリスチャンを訪ねていく辺りから、徐々に不穏な空気が漂い出します。そして、フリアンが少年の自宅に入ってからは、それまでの話は最後に観客に一撃を喰らわせるための壮大な前振りに過ぎなかったことを思い知らされます。

 

フリアンが処分を受けるのは、身から出た錆で仕方ないにせよ、契約違反のせいで女性社員から嫌悪を露わにされ、ディアナからも別れ話を切り出されるのは、些か罪が重過ぎるのでは?とも感じます。でも、フリアンが〇〇であったことが明らかにされると、一気に腑に落ちてきます。

 

当初は火災がフリアンのパニック障碍を引き起こしたと考えられましたが、きっかけは火災ではなく、助けたクリスチャンにあったとなれば説明もつきます。加えて終盤にクリスチャンがフリアンを描いた絵を見せられると、少年は無意識のうちにフリアンの本性を見抜いていたのではないかとも思えてきます。そして、フリアンが女性と体の関係を持っても、長続きしない理由も合点がいきます。

 

カルロス・ベルムト監督の映画は、デビュー作の「マジカル・ガール」を観ていますが、本作も監督の日本好きがそこかしこに散りばめられています。日本旅行で温泉に入ったという女性同士の会話、ブリアンのテイクアウトに日本料理が多い点はまだしも、劇中では伊藤潤二の名前まで飛び出してきます。ディアナを演じたゾーイ・ステインの顔立ちも、心なしか東洋系を思わせますね。

 

フリアンの“闇”は何だったのか?彼とディアナの結末はどうなるのか?それは映画を観てのお楽しみですが、ラストを見るとディアナによる父親の介護も意外と重要でしたね。