外国人収容所の囚人とギャングが手を組んで米軍基地に隠したダイヤを強奪する「遊民街の銃弾」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流 2024 より

 

製作:東映

監督:飯塚増一

脚本:佐治乾

撮影:星島一郎

美術:藤田博

音楽:河辺公一

出演:丹波哲郎 高倉健 佐久間良子 筑波久子 曽根晴美

        大村文武 春日俊二 神田隆 サイ・テーラー

1962年12月9日公開

 

不法入国のかどで黒人サム(サイ・テーラー)は外国人収容所に入れられます。サムの同房には趙(春日俊二)、パーカー(ダニー・ユマ)、13号(丹波哲郎)と言った、一癖も、二癖もある連中が居ました。その中でも、国籍不明の13号は腕っぷしが無類に強く、係官も手を焼いていました。

 

サムは強奪した200万ドルのダイヤモンドを米軍基地の武器庫に隠しており、13号に秘密を打ち明けて脱獄の協力を頼みます。更に、サムの恋人の春子(筑波久子)が面会に来たことで脱獄計画が進みます。彼女はキャバレーで働いており、ボスの高木(高倉健)が春子を介して力を貸すと申し入れてきました。

 

収容所の見取図が手に入ると、13号は仲間と共に自分たちの房室とその下の病室に繋ぐ穴を掘り、更に病室の床のタイルをはずしてそこから下水道に抜け、下水道の壁は高木たちが破壊するように手筈を整えます。ところが、決行する当日に趙が入っていた病室は、白人女性のアン(ゼボー・マリア・ウェスト)が入ることになります。

 

4人は仕方なくアンを連れて脱獄し、下水道で高木達と合流します。その頃、サムの隠したダイヤを狙う外国人一味が、高木の別荘を見張っていました。アンはその一味の密命を帯びて、13号たちと脱獄するよう仕向けたのでした。また、高木の情婦である安芸子(佐久間良子)と13号の意外な関係も明らかになります。

 

綿密な計算のもと、軍用トラックを奪って基地に入りこんだ13号たちは、宝石を隠した魚雷をそのまま基地から運び出すことに成功します。ところが、トラックで魚雷を運ぶ途中に、一行は外国人一味の襲撃に遭います・・・。

 

隠したダイヤモンドを手に入れるために集団脱獄する映画では、新東宝の「地平線がぎらぎらっ」がありました。ただし、こちらの映画は強力なリーダーシップを発揮する丹波がいる分、新東宝の作品とは趣きが異なります。

 

13号が密入国者の収容所でどれだけ権力を欲しいままにしているか、他の収容者の飯から一品ずつ勝手に取っても、誰からも文句が出ないことによって端的に示されます。収容所で暴動が起きた時は、看守が13号に鎮めるよう頼みに来るほど、絶大な権力を握っています。

 

13号は不法入国者の扱いなのですが、国籍が不明なため母国に強制送還することもできず、収容所に留め置かれています。この当時は強制送還できなくても、少なくとも収容所の外には出させなかったことが分かります。昨今の入管審査の甘さと政府による不法滞在者へのヌルい対応を目の当たりにすると、川口のクルド人問題に代表されるように、国民としては治安の面で益々不安になってきますよね。

 

それはともかく、この映画では丹波哲郎の圧倒的な存在感と、丹波と張り合う高倉健の生きの良い芝居が見ものです。健さんのとっぽいキャラクターは、特に初期作品に多く見られ、ここでも13号の要求に素直に呑もうとしない気の強さが表れています。

 

健さん演じる高木の情婦役が佐久間良子で、後に13号とは因縁浅からぬ関係であることが判明します。役としては結構重要なのにも関わらず、添え物のような扱いは、男中心の東映らしいと言えばそれまでですが・・・。尤も佐久間にしたら、この扱いでは他社に移籍したくもなりますわね。

 

本作は収容所からの脱獄と、米軍基地からダイヤを埋めた魚雷を盗み出す二つの見せ場があります。脱獄場面は当初の予定に狂いが生じ、病室に居た女性も一緒に連れ出す羽目になります。ただ、男だらけの収容所に何故女が?という疑問は残ります。後に女の正体が明らかになり、彼女が外国人ギャングの一味と分かっても、隔離された状態とは言え、収容所の管理側が女を一人だけ病室に入れるのを許可した理由が分からず、ご都合主義なのは否めません。

 

一方、魚雷にダイヤを隠したことによって、それを取り出す際の描写が時折ギャグにもなっていて、これはこれで面白かったです。この映画も犯罪は引き合わないという従来型のクライム・サスペンスを踏襲した結末になっています。ただ、絶体絶命の状況に追い込まれながらも、最後に13号が見せる男気と、敵を殲滅する遣り方に爽快感があり、スッキリした気持ちで映画館を出られました。