非正規の音楽教師が、運が向いてきた途端・・・「ソウルフル・ワールド」吹替版を観て | パンクフロイドのブログ

パンクフロイドのブログ

私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

 

映画.comより

ニューヨークでジャズミュージシャンを夢見ながら音楽教師をしているジョー・ガードナーは、ついに憧れのジャズクラブで演奏するチャンスを手にする。しかし、その直後に運悪くマンホールに落下してしまい、そこから「ソウル(魂)」たちの世界に迷い込んでしまう。そこはソウルたちが人間として現世に生まれる前にどんな性格や興味を持つかを決める場所だった。ソウルの姿になってしまったジョーは、22番と呼ばれるソウルと出会うが、22番は人間の世界が大嫌いで、何の興味も見つけられず、何百年もソウルの姿のままだった。生きる目的を見つけられない22番と、夢をかなえるために元の世界に戻りたいジョー。正反対の2人の出会いが冒険の始まりとなるが……。

 

製作:アメリカ

監督:ピート・ドクター

脚本:マイク・ジョーンズ ケンプ・パワーズ ピート・ドクター

撮影:マット・アスプリー イアン・メギベン

美術:スティーヴ・ピルチャー

音楽:トレント・レズナー アッティカス・ロス

出演:(日本語吹替)浜野謙太 川栄李奈 福田転球 梅田貴公美

2024年4月12日公開

 

この映画は本来4年前に劇場公開される予定でした。ところが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、上映の目途が立たなくなり、このままお蔵入りするかと思われました。それが今夏に公開予定の「インサイド・ヘッド2」に先駆けて、「私ときどきレッサーパンダ」「あの夏のルカ」と共に公開の運びとなったことは実に喜ばしいです。尚、本作もいつものピクサー作品と同じく、本編の始まる前に「夢追いウサギ」という短編アニメが上映され、露払いの役割を果たしています。

 

※ここから先は少々ネタバレを含んでいますので未見の方はご注意ください

 

ジョーはプロのジャズ・ピアニストになることを夢見ながら、臨時の音楽教師の職に従事しています。そんな定職に就かない(就けない?)息子に、母親は不満を抱いています。そんな折、ジョーに正規教師としての採用が告げられます。その直後、昔の教え子からも有名ジャズミュージシャンのバンドの一員として、ライヴへの参加を打診されます。ジョーはライヴ演奏が母親にばれるのを心配しつつも気分は浮き浮き。

 

しかし、好事魔多し。彼はマンホールに落下し、意識不明の状態に陥ります。ジョーはそのまま死ぬ運命にあるかと思われましたが、必死の抵抗を見せ、生まれる前の魂たちが集う世界に迷い込みます。その世界には人間世界に行くことを拒否する22番が居て、何とか彼女を説得して再び地上に舞い戻ります。ところが、ちょっとした手違いから不測の事態が生じて・・・と言った具合に、果たしてジョーがライヴの開演時間までに演奏できるかに、話の焦点が絞られていきます。

 

この“不測の事態”を起こした点がミソで、時間に間に合うかというタイム・サスペンスも然ることながら、最終的に夢を追う事が果たして幸福に繋がるのかという問いかけにもなっています。その一方で、22番が人間世界の体験を経たことで、徐々に心境の変化が起きることも描かれていて、定石通りの展開とは言え、両者の話のバランスが巧く作用しています。特にジョーの友達の理髪師と交わす会話は、22番の人間への見方が変わり、ジョー自身も夢を追う事ばかりが果たして価値のあることかと疑問を抱く上で、今後を占う重要な試金石となっています。

 

とは言え、ジョーはプロのミュージシャンになる夢を捨て切れず、22番も人間世界で暮らすことに固執したため、二人の間に齟齬が生じた末に二人とも魂の世界に連れ戻されてしまいます。ここから二人の関係が修復され、どのような落としどころになっていくかが注目ポイントとなります。些かご都合主義な話の持って行き方はあるにせよ、ジョーが人間世界を拒否していた22番を改心させたご褒美と捉えれば、まぁまぁ納得はできます。また、ジョーの晴れ晴れした表情で終わる締め方も、果たして本人なのか、それとも・・・?と観客の想像に委ねるのが、それまでの話の流れを考えると味わい深い終わり方をしていました。