あずき相場に賭けた男たちのドラマ 「赤いダイヤ」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流 2024 より

 

製作:東映

監督:小西通雄

脚本:柳沢類寿 池田雄一

原作:梶山季之

撮影:坪井誠

美術:近藤照男

音楽:菊池俊輔

出演:藤田まこと 三田佳子 曽我廼家明蝶 ハナ肇 ミヤコ蝶々 田中邦衛

1964年10月14日公開

 

表題の赤いダイヤとはあずきのことを指しています。本作はあずき相場で一攫千金を狙う人々が、仕手戦を繰り広げるドラマが核となっています。

 

故郷に母を置いて単身上京した木塚慶太(藤田まこと)は、商売に失敗し600万円の穴を開けた挙句、千葉の海岸で入水自殺を計ろうとしていました。しかし、相場師の森玄(曽我廼家明蝶)に諭され、一念発起して再び金儲けに邁進します。慶太は商売女の百合(千代郁子)から輸入取引に有利なリンテンションカードの存在を知らされ、早速友人の新聞記者の小野(亀石征一郎)からその仕組みの説明を受けます。そして、森玄から貰った5000円を元手に185万円を儲けました。

 

彼はその金を手にして、バーのマダムの井戸美子(三田佳子)に会いに行きます。彼女は知り合いのジョージ・高瀬(田中邦衛)の借金を踏み倒して行方をくらました慶太に怒り心頭でしたが、リンテンションカードで一儲けを目論む慶太の話に乗り、二人で新たに会社を設立します。そして、美子が社長、慶太が専務におさまります。

 

慶太は美子にぞっこんで、あの手この手で口説こうとするのに、彼女は一向に靡きません。美子は水商売をしているにも関わらず、貴族出という事もあって、高慢な女であり、男に対してはしばしば高飛車な態度で接します。その一方で、時と場合によっては、お色気で男をあしらうしたたかさも見せます。

 

慶太には彼に惚れてくれる百合が居るのに、彼女に顔を隠させたまま交尾して、如何にも美子としているかのような気分に浸るなど酷い扱い(笑)。観ているこちらは、いい加減美子の本性に気づけよともどかしくもなりますが、その一方で何度も美子に裏切られる慶太を見ていると、懲りないバカが大好物な者にとっては、とことん失敗を繰り返してくれと願ってもしまいます。

 

美子を巡って恋の鞘当てをするライバルのジョージ・高瀬を演じるのが田中邦衛。田中は東宝の『若大将シリーズ』における青大将がそのまま抜け出してきたようなキャラクターで、気障で厭味ったらしい憎まれ役が似合っています。

 

その頃、あずき相場では森玄と松崎(松本染升)との間で、激しい攻防戦が繰り広げられて、あずきの株価がどんどん上がっている状態でした。ところが、森玄の強気の買いで高値をつけたあずきの株価も、松崎と丸田(沢彰謙)の策略と、彼らの下で働くジョージの暗躍によって大幅に下落します。

 

森玄が窮地に立たされたことで、慶太は恩人のために、松崎と丸田が仕掛けた株の下落のカラクリを暴いたものの、シラを切られてしまいます。しかし、新聞記者の小野が新聞で真相をすっぱ抜いたことで、再び買い注文が殺到し、再びあずきの株価が上がります。慶太は美子が結婚をちらつかせたことによって、更に大勝負に挑もうとします。森玄が託した金と自身の全財産、更に慶太の母親お虎(ミヤコ蝶々)が工面した金、併せて1億円を携えて、慶太はあずきを確保すべく北海道に乗り込みます。

 

慶太の母親を演じるミヤコ蝶々は、いつものように関西弁で歯に衣着せぬ発言をするおばはん役。息子への愛情を十分示す一方で、貸した金の金利を10%取ろうとする辺りがシビアでがめつく、彼女には正にうってつけの役。慶太は1億円を元手にあずきを栽培する農家を抱き込もうとしますが、既に松崎と丸田一派が先手を打っていて、農家は慶太にあずきを売ろうとしません。そこで、慶太は一世一代の大博奕を打って・・・と言う具合に、波乱万丈のドラマが繰り広げられます。

 

その大博奕にしても、即座に一発逆転という風にはならないところがミソであり、この映画の一筋縄では行かない点。慶太が漸く買い付けに成功しても、その裏では着々と美子と松崎&丸田一派が手を組んでいて、更にもう一波乱ある展開が用意されています。しかも、十中八九美子が自分の思い通りになった思いきや、不測の事態によって思いもよらなかった結末が待っている辺りもニヤリとさせられます。

 

慶太は最後まで美子には拒否されるのですが、好いた女にいくら馬鹿にされ、裏切られたとしても、猪突猛進にアタックする姿は清々しく映ります。これくらいバカに徹することができれば、寧ろ幸福なのではないかとさえ思えてきます。因みに原作者の梶山季之がクラブの客の一人としてカメオ出演していました。