モンタナの雄大な自然と釣りの美しい描写に魅せられる「リバー・ランズ・スルー・イット」を観て | パンクフロイドのブログ

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こうのすシネマ

午前十時の映画祭 より

 

製作:アメリカ

監督:ロバート・レッドフォード

脚本:リチャード・フリーデングバーグ

原案:ノーマン・マクリーン

撮影:フィリップ・ルスロ

美術:ジョン・ハットマン

音楽:マーク・アイシャム

出演:ブラッド・ピット クレイグ・シェイファー トム・スケリット ブレンダ・ブレッシン

1993年9月4日公開

 

年老いたノーマン・マクリーン(アーノルド・リチャードソン)は、故郷の川でフライ・フィッシングをしながら、若き日を回想していました。1912年、アメリカ、モンタナ州ミズーラ。ノーマンとポールは、父親のマクリーン牧師(トム・スケリット)に勉強の傍ら、フライ・フィッシングを教わっていました。1919年、ノーマン(クレイグ・シェーファー)は東部のダートマス大学に進学します。

 

それから7年後、ノーマンが漸くミズーラに戻った時、父は歓迎しながらも、息子が将来の進路を決めかねていることを憂います。一方ポール(ブラッド・ピット)は地元の大学を卒業し、地方新聞の記者をしていました。彼は酒と賭け事にのめり込んでおり、借金も嵩んでいました。やがて、ノーマンはダンス・パーティでジェシー(エミリー・ロイド)と出逢い、一目で恋に落ちます。

 

ある日、ノーマンが家に帰ると警察から電話が入ります。ノーマンが警察に出向くと、ポールが留置所に入れられていました。弟の哀れな姿を見たノーマンは、彼がトラブルに巻き込まれていることに気づきます。そんな中、ジェシーの兄ニール(スティーブン・シェレン)が故郷に帰ってきます。ノーマンは気障で鼻持ちならぬニールをひと目で嫌いになりますが、ジェシーからの勧めもあって釣りに誘う破目になります。

 

ノーマンはニールと二人きりになるのが耐えられず、ポールを誘います。ところが、ニールは遅れてきた上に一緒に連れて来たあばずれ女と野外S〇Xまでして、同行したポールを呆れさせます。そんな折、ノーマンにシカゴ大学から教授職のオファーが届くのですが・・・。

 

1時間幸せになりたかったら酒を飲みなさい

3日間幸せになりたかったら結婚しなさい

1週間幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい

永遠に幸せになりたかったら釣りを覚えなさい

 

これはチャイナの格言で、事程左様に釣りには長期間人を幸福にする効用があるらしいです。本作を観ていると、あながち間違いと思えなくなります。人生にどんな問題があろうとも、釣りが全てを水に流してくれるような気がしてくるからです。

 

雄大な自然を背景にしたモンタナのロケーションが素晴らしく、牧師である父親やその息子たちが渓流釣りに勤しむのが十分理解できます。釣り糸が遠くに放られる様子を、スローモーションで捉えた映像は、絵画のような美しさがあり、釣り人が糸を垂らして魚が毛針に食いつくのを待つ姿は詩情溢れる絵になっています。

 

優等生の兄に対し奔放な弟という図式は、ありきたりながらも、二人の兄弟愛が伝わってきます。いくつかの衝突はあっても、双方とも相手を思い遣る気持ちがあるため、決して対立関係にはなりません。人種偏見が強い時代の中、ノーマンはポールが先住民のガールフレンドと同伴しても嫌な顔ひとつせずに対応しますし、ポールもノーマンの恋人の兄貴を気に入らなくても、兄の恋愛にひと肌脱ごうとするなど、二人の間には絆の強さがあります。

 

また、ノーマンがジェシーと結ばれて、シカゴの大学で教鞭をとる前に、父とポールの3人で釣りに出かける場面では、ポールが大物を釣り上げる描写が圧巻で多幸感に溢れています。だからこそ、終盤に訪れる急転直下の展開が、より悲劇性を帯びてきます。

 

ロバート・レッドフォードは、俳優のみならず監督としての手腕にも定評があり、この映画も地方色を活かして、1920年代当時の風俗を巧く取り入れながら、懐かしさを呼び起こす物語に仕上げています。良質なアメリカ映画を堪能できた一方で、原題をそのまま表記したタイトルは意味が分かりにくく(「川は流れている」の邦題でいいじゃない)、その点だけがいただけませんでした。