片岡千恵蔵がマジックで周囲を煙に巻く?「俺が地獄の手品師だ」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流2024 より

 

製作:東映

監督:小沢茂弘

脚本:松浦健郎

撮影:西川庄衛

美術:藤田博

音楽:渡辺宙明

出演:片岡千恵蔵 鶴田浩二 高倉健 江原真二郎

        佐久間良子 伊藤雄之助 山村聰 進藤英太郎

1961年1月15日公開

 

アメリカから北海刑務所にバッファロー・ゲン(片岡千恵蔵)と名乗る手品師が収監されてきます。彼はアメリカの監獄から何度も脱獄した強者でした。刑務官をおちょくるようなゲンの鮮やかな手際を目にした馬吉(進藤英太郎)とファンキー小僧(中村賀津雄)も、同房になった彼には一目置きます。

 

3年前、馬吉は親分の毒川(柳永二郎)が立花組の組長立花(堀正夫)を射殺した罪をかぶって、服役していました。彼は息子の一郎(水木襄)を毒川に託したのですが、一郎は刑事殺しの犯人として捕えられていると新聞で知り、同房のファンキー小僧と脱獄を企てていました。これを知ったゲンは馬吉たちに力を貸し、3人揃って脱獄に成功します。

 

3人は、北海道から捜査網を次々と突破し、日本アルプスの山小屋に身を隠しながら、毒川のサンライト工業がある横浜潜入の機会を窺っていました。やがて、ファンキー小僧は山小屋の管理人の孫娘である道子(佐久間良子)と恋仲になります。

 

そんなある日、山小屋に早射ちサブ(鶴田浩二)と名乗るやくざ者が姿を現します。しかし、実は脱獄囚の行方を追ってきた橋本刑事で、ゲンはサブの警察手帳を抜き取り、正体を見抜くや、仲間と共に姿をくらまします。

 

一方、横浜のクラブ“赤い城”では世界的な手品師王竜(伊藤雄之助)とその助手秀玉(久保菜穂子)のショーが行われていました。毒川や彼と組んで麻薬取引をしている李大業(山村聰)もそのショーを見ていました。そこに、いきなりゲンが飛び入り参加し、鮮やかな手品を見せて、王竜を慌てさせます。

 

その頃、立花組は息子の丈次(高倉健)が後を継ぎ、石松(江原真二郎)ら子分と共に組の再建に力を合わせていました。橋本刑事も早射ちサブと名乗り、立花組に身を寄せていました。馬吉の出現によって、刑事殺しの真相がばれるのを恐れた李大業は、毒川を裏切って立花組長殺害の黒幕が毒川であるかのように丈次に伝えて、毒川を亡き者にしようとします。折も折、李大業の麻薬組織を視察すべく、香港から派遣された全権一行の送別会が、李邸の大広間で開かれようとしていました・・・。

 

プログラムピクチャーの割には、オールスター映画の様相を呈する作品でした。片岡千恵蔵を主役にして、鶴田浩二を引き立て役に回すばかりか、高倉健ですら端役に近い形。山村聰、進藤英太郎、柳永二郎、伊藤雄之助らのベテランが脇を固め、女優陣も佐久間良子、久保菜穂子、山東昭子、小宮光江はあまり目立たない役と言った具合に、かなり贅沢な役者の使い方をしています。また、冒頭に出てくる神田隆、山本麟一が刑務所の幹部役なのには笑ってしまいました。あなたたち、監視役ではなく囚人側だろうと。

 

タイトルに手品師とあっても、どうせ余興程度だろうと高をくくっていたら、手品の場面が結構あったのには意外でした。千恵蔵御大と伊藤雄之助が手品で張り合う場面などはなかなか楽しい描写です。ただ、映画における手品は、編集次第でいくらでも魔法を見せることができるので驚きは少ないです。

 

どうせならば、最後も銃撃戦で片をつけるのではなく、千恵蔵御大による大掛かりな仕掛けのイリュージョンで敵を一網打尽にすれば、拍手喝采と言ったところでした。尤も、千恵蔵御大の演じるバッファロー・ゲンの正体が、観客の目を欺く最大のマジックだったとも言えるのですが・・・。その意味では、本作は千恵蔵御大の当たり役だった『多羅尾伴内』シリーズの流れを汲む作品だったとも言えるかもしれません。