姉を凌辱し自殺にまで追い込んだ不良たちに、被害者の弟は・・・「太陽と血と砂」を観て | パンクフロイドのブログ

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池袋 新文芸坐

新東宝千夜一夜 銀幕の名花 より

 

 

製作:新東宝

監督:小野田嘉幹

脚本:佐々木正彦 西沢裕子

原案:室町加納

撮影:吉田重業

美術:小汲明

音楽:渡辺宙明

出演:三ツ矢歌子 松原緑郎 池内淳子 徳大寺君枝 鳴門洋二

1960年7月22日公開

 

 

川崎史郎(松原緑郎)は姉の光子(池内淳子)と母(徳大寺君枝)の三人暮しをしていました。夏のある日、光子は恋人の吉川(寺島達夫)を連れて、弟と母親(徳大寺君枝)に結婚の報告をしに来ます。ところが、光子と吉川がヨットで沖まで出ていたところ、モーターボートに乗った三人組の男達に襲われ、光子はいずこともなく連れ去られます。

 

やがて、吉川は岸に上がった光子を発見しますが、暴行された恋人を目にして、彼女の元から去っていきます。間もなくして、光子は母と史郎に遺書を残して命を断ちました。史郎は吉川から姉の死の原因を確かめると、アルバイトを兼ねて毎日三人組の姿を求めました。また、彼は光子の友人・房代(宮田文子)の協力を得て、警察に捜査を依頼するものの、刑事は本人死亡のため起訴は難しいと言って、依頼を受けつけようとしませんでした。

 

史郎は自分の手で姉の仇を討とうと決意し、聞き込みを始めます。すると、姉を犯した一夫(鳴門洋二)、渡(黒丸良)、健一(津川豊)の三人組を見つけます。史郎は彼らを刺し殺そうとしますが、警察に掴まり10ヶ月の少年院生活を余儀なくされます。史郎は少年院を出た後は家に帰らず、パチンコ屋の二階に住み込み、三人組に出会う機会を窺っていました。

 

そんな折、史郎は姉が自殺する前に知り合った順子(三ツ矢歌子)と再会します。史郎は順子の別荘に招かれ、姉の光子を暴行した三人組のうちの一人が順子の兄の一夫であることを知ります。史郎は姉を凌辱された怒りと憎しみから、順子を・・・。

 

本作は弟が自殺した姉の仇を討とうとする復讐劇で、復讐を開始するまでは紆余曲折がありつつも、基本シンプルな物語となっています。姉を犯した三人組のクズ共は勿論元凶なのですが、暴行された後に彼女への配慮を怠った婚約者の吉川にもかなり問題があります。殊に動転した状態の光子を見捨てて、彼女のもとを去って行った行動や、葬儀にお悔みの電報で済ませる薄情さも然ることながら、犯人の一人が自分の勤めている会社の社長の息子と分かっていながら、保身のために口を噤んだ点は罪が重いです。

 

そんな吉川と対照的に、光子の友人房代(宮田文子)の史郎と母親への献身ぶりが際立ちます。彼女は史郎と一緒に三人組に罪が問えないか警察に掛け合いに行きますし、史郎が服役中に母親が死亡した際には、おそらく葬儀の手配をしたと思われます。更に史郎が出所した際には、彼が姉の復讐を遂げようとしているのを悟り思い留まらせようとしています。かなり小さい役柄ながら、意外なほど印象に残りました。

 

また、この映画では好意を抱く女性が復讐相手の身内である点も劇的効果を与えています。史郎が順子の家族のことを知った上で、彼女とどのように向き合うかも興味が湧いてきます。結局、史郎も三人組と同じ罪を犯す訳ですが、同罪となった彼が3人にどのような制裁を科すかも終盤に向けての焦点となります。

 

同じ条件で生き残りを賭ける方法は、ある意味理に適っていると言えます。ただ、一人目は走行中の車から勝手に飛び降りて死亡しているので、史郎も参加する二人目の崖から海に飛び込む方法や、最後の手足をロープで縛った条件で水上スキーを続ける方法との一貫性がなく、そこは統一して欲しかったです。とりわけ、後の二つの方法は湘南を舞台にしただけあって、海に関連した審判とも言えるので。

 

最後にモーターボートを無人運転にしたことから、史郎は結果の如何に関わらず、最初から自分も死ぬ気でいたと思われます。姉の死が如何に彼を苦しめ、死でもって自分の罪を償わねばならないほど、順子にした罪深いことを重く受け止めていたかと思うと、より切なさが増してきます。ちなみに、池内淳子も三ツ矢歌子も、私が子供の頃に見ていたテレビドラマでは、お母さん役を多く演じており、彼女たちの若い頃の美しい姿を拝めただけでも元を取った気分になりました。