遅ればせながら、明けましておめでとうございます。と言いたいところですが、新年早々に大きな地震が発生し、被災された方のことを思うとあまりお祝いする気分にもなれません。しかも海上保安庁の航空機が羽田空港の滑走路で日航機と衝突事故を起こし、日航機の乗客乗員は無事だったものの、被災地の支援活動に向かう海保の方が5人亡くなられたことに心が痛みます。地震の被害に遭われた方の無事を祈りつつ、航空機事故の原因究明と再発防止が進むことを願っています。そして、地震で亡くなられた方、事故で亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
当初は「カサンドラ・クロス」の記事を更新する予定にしていましたが、このタイミングで取り上げるのは不謹慎と思い、こちらの映画に差し替えました。
ラピュタ阿佐ヶ谷
製作:大映
監督:村野鐵太郎
脚本:藤本義一
撮影:小林節雄
美術:渡辺竹三郎
音楽:山内正
出演:田宮二郎 水谷良重 天知茂 江波杏子 根上淳 山下洵一郎 成田三樹夫 宮口精二
1965年1月13日公開
鴨井大介(田宮二郎)は、オートバイが故障して立ち往生していたところを、高級車を運転していた三沢葉子(水谷良重)に拾われ懇ろな関係を持ちます。白浜温泉宿の女中玉子(坂本スミ子)を適当にあしらいながら、鴨井は湯に浸かっていた際に拳銃使いの男(根上淳)と出くわします。やがて、大阪のドヤ街に戻った鴨井は、顔見知りの木村刑事(天知茂)から、同僚の宮本を殺した一六組を探って欲しいと依頼されます。鴨井は稲取の根城であるバー“スミレ”を訪れますが、警察の回し者と見られた挙句軟禁されてしまいます・・・。
田宮二郎主演の『犬』シリーズを観るのは、実は今回が初めて。本作はシリーズの3作目にあたります。田宮が関西弁を喋るキャラクターの映画は割と面白い作品が多く、この映画も大いに楽しめる作品になっていました。二枚目の顔立ちと関西弁の落差からくる面白さがある上に、拳銃の名手にも関わらずハジキで人を殺さない信念を持っているため、観ているほうも親しみが湧きやすいです。
彼に絡んでくる女たちも、謎めいた水谷良重、クールビューティーの江波杏子、不細工なファニーフェイスのコメディリリーフの坂本スミ子と言った個性の違う女優陣を起用しており、主人公の女好きは変わらないまでも、彼女たちへの対応の違いなども見どころのひとつになっています。
この女たちに加え、しょぼくれ刑事を演じる天知茂の曲者ぶりも見もの。天知は苦み走った正義漢、冷徹な悪役に定評があり、こうした見すぼらしく風采の上がらない役柄は珍しいです。特に田宮との絡みは漫才を見ているかのような独特の雰囲気もあって、両者の掛け合いが楽しくなってきます。また、敵の一味には成田三樹夫がいて、彼一人だけでも凄みがあり、如何にも手強そうと思わせるのも美点。
いくらでもフィルムノワールになる要素がありながら、喜劇仕立ての痛快アクションで押し通したことが、田宮のみならずシリーズ全体の魅力になったと思います。未見の作品をこれからも観られる楽しみができたシリーズです。