馬借隊を利用して火縄銃を運搬しようとする「戦国野郎」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

Laputa Asagaya 25th anniversary ニュープリント大作戦 より

 

製作:東宝

監督:岡本喜八

脚本:佐野健 関沢新一 岡本喜八

撮影:逢沢譲

美術:植田寛

音楽:佐藤勝

出演:加山雄三 佐藤允 星由里子 水野久美

        中谷一郎 中丸忠雄 田崎潤 滝恵一 江原達治

1963年3月24日公開

 

 

若き忍者越智吉丹(加山雄三)は、武田軍の冷酷な仕打ちに嫌気がさし出奔、一国一城の主の夢を抱き諸国を放浪していました。同じ忍者の雀の三郎左(中丸忠雄)は、抜け忍となった吉丹の命を狙って彼を追います。 その三郎佐とは別に吉丹を追っていた土光播磨(中谷一郎)は、吉丹の実力を目の当たりにして付け狙うのを辞め、偶然出会った田舎武士の勧めで吉丹と共に馬借隊に身を隠します。

 

馬借隊は有吉宗介(田崎潤)が頭目で、早霧(星由里子)が指揮し、米と塩を運ぶのを生業にしていました。この馬借隊に目を付けたのが織田家家臣・木下藤吉郎(佐藤允)で、吉丹と播磨に馬借隊に入るのを勧めた田舎武士でした。藤吉郎は馬借隊を隠れ蓑にして、「種子島」と呼ばれる火縄銃を輸送しようとしていたのです。

 

藤吉郎の巧みな弁舌により、有吉一行が火縄銃の輸送を請け負います。さらに藤吉郎は、村上水軍参謀の百蔵(滝恵一)と滝姫(水野久美)に声をかけ、彼らにも種子島の輸送を承諾させます。種子島が運び込まれた日、武田の忍者が村上水軍の船を襲撃します。ところが、積荷の中身は石でした。その頃、馬借隊は荷物をまとめて出発。武田の忍者と騙されたと知った村上水軍が馬借隊を追うのですが・・・。

 

『独立愚連隊』シリーズの戦国時代劇と言いたくなるほど痛快な映画でした。陰謀を描いても陰湿な感じは全くなく、岡本喜八らしいカラッとした明るい雰囲気があります。味方さえも欺く木下藤吉郎は、本来嫌悪感をもよおしてもおかしくはないのに、佐藤允が演じることによってだいぶイメージが良くなっています。

 

吉丹、播磨、藤吉郎の主要人物3名は、然程互いを信用していないにも関わらず、何故か相棒感を醸し出しています。吉丹の青臭い感じに播磨と藤吉郎のとぼけた味が巧く溶け合っている上に、3人とも陽キャラなのが大きいように思います。

 

また、馬借に焦点を当てた点も目の付け所が良いです。時代劇でその仕事を大きく扱った作品は記憶にありません。しかも、頭目の有吉宗助が食料品の運搬に固執して、火縄銃を運ぶのを嫌がるのを見ると、ウクライナに武器支援するのを拒み、ヘルメットや防弾チョッキの装備品でお茶を濁そうとする現在の日本の姿勢との既視感があり、思わず苦笑してしまいました。

 

本作では早霧役の星由里子のツンデレ具合も良くて、加山雄三との絡みはちょっとしたラブコメ風味がありました。二人は既に『若大将』シリーズでコンビを組んでいるだけに息もぴったり。この映画での青大将役は夏を演じる江原達治で、田中邦衛ほどのユーモア感はないにしろ、汚い手を使って恋敵を蹴落とそうとする小賢しさは同じです。

 

物語は武田の忍者の目を欺きながら、目的地まで火縄銃を運べるかに焦点が当てられます。火縄銃は当時の最新兵器であり、武田軍も村上水軍も藤吉郎を出し抜いてでも手に入れたいと思っています。二つの組織の思惑を十分知りながら、馬借隊を利用して目的を達しようとする藤吉郎の狡猾さと非情さに舌を巻きます。岡本喜八のフィルモグラフィからは埋もれがちの作品ですが、私は結構気に入りましたよ。

 

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