黒デ・ニーロが炸裂「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を観て | パンクフロイドのブログ

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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 公式サイト

 

公式サイトより

地元の有力者である叔父のウィリアム・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼ってオクラホマへと移り住んだアーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)。アーネストはそこで暮らす先住民族・オセージ族の女性、モリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋に落ち夫婦となるが、2人の周囲で不可解な連続殺人事件が起き始める。町が混乱と暴力に包まれる中、ワシントンD.C.から派遣された捜査官が調査に乗り出すが、この事件の裏には驚愕の真実が隠されていた---。

 

製作:アメリカ

監督:マーティン・スコセッシ

脚本:エリック・ロス マーティン・スコセッシ

原作:デヴィッド・グラン

撮影:ロドリゴ・プリエト

美術:ジャック・フィスク

音楽:ロビー・ロバートソン

出演:レオナルド・ディカプリオ ロバート・デ・ニーロ ジェシー・プレモンス

        リリー・グラッドストーン タントゥー・カーディナル カーラ・ジェイド・マイヤーズ

        ジャネー・コリンズ ジリアン・ディオン ウィリアム・ベルー ルイス・キャンセルミ

        タタンカ・ミーンズ マイケル・アボット・ジュニア パット・ヒーリー

        スコット・シェパート ジェイソン・イズベル スターギル・シンプソン

2023年10月20日公開

 

※記事の中では若干ネタバレしている箇所もあるのでご注意ください

 

マーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオ、スコセッシとロバート・デ・ニーロの組合せの映画は過去にもありましたが、ディカプリオとデ・ニーロががっぷり四つに組んだ作品は本作が初めてと思います。3時間40分の上映時間を含め、重厚感のある犯罪映画でした。

 

昔から住んでいる土地から先住民を追い出しただけでなく、保留地に住む彼らから、時には白人と先住民の結婚まで利用して搾取を行なうのですから、白人のやる事はかなりエゲつないですわ。表向きは先住民族と友好関係を結ぶウィリアム・ヘイルも、序盤のうちは裏で糸を引いている人物にも関わらず、なかなか本性を見せません。ウィリアムを演じるデ・ニーロは、ブライアン・デ・パルマ監督作の「アンタッチャブル」でアル・カポネを演じていた時より、更に狡猾さが増して底知れぬ怖さを感じさせます。

 

オセージ族の人々が次々と殺害されていくくだりは、あまりにも殺伐とした描写で、マフィアを題材にした映画を観ているかのような錯覚すら起きます。オクラホマの州警察はウィリアムとズブズブの関係にあり、白人たちの中には一定の資産を有する先住民族への反感もあって、まともな捜査が行われにくい状況になっています。業を煮やしたモリーは私立探偵を雇って、姉妹を含むオセージ族の殺害事件の調査を依頼します。ところが、その探偵も調査中に何者かによって殺害され、事件は暗礁に乗り上げます。

 

それでも、途中から連邦捜査官が派遣され、一連の殺人事件の捜査が開始されます。ウィリアムによる不正の数々を目の当たりにすると、島国の日本人から見ても広大なアメリカではFBIのような州を跨いだ捜査機関が必要だと思わせます。アーネストは叔父の絶大な権力を見せつけられているだけに、罪の意識を抱きながらも悪事に手を染めていかなければならなくなります。やがて、一連の殺人事件の関与の疑いでアーネストは逮捕されます。一度はウィリアムの関係者に説得され、裁判で証言を翻そうとしますが、喘息持ちの息子の死により良心に目覚めます。

 

映画を観ていて終始気にかかっていたのは、アーネストが叔父の言葉を鵜呑みにして、糖尿病を患っている妻に、果たして何の疑いもなくウィリアムの調達したインスリンを投与していたのか?という疑惑。アーネストは若干ボンクラなところがあるにせよ、叔父が信用ならぬ人物であることは身をもって体験してきた筈。その疑問に答えるヒントは、終盤に司法取引により釈放されたアーネストが、モリーと再会を果たす場面にあります。インスリンの中味を知っていたのか?と問うモリーに対し、アーネストの答えは如何に?アーネストの答えに、失望する彼女の表情が全てを物語っていたように思います。