高島礼子演じる姐さんの極妻シリーズ第一弾 「極道の妻たち 赤い殺意」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

関本郁夫 映画人生タイマン勝負 より

 

製作:高田事務所 東映ビデオ TBS

監督:関本郁夫

脚本:中島貞夫

原作:家田荘子

撮影:水巻祐介

美術:野尻均

音楽:大島ミチル

出演:高島礼子 かたせ梨乃 野村宏伸 諸星和己 永島敏行

         中尾彬 名古屋章 古田新太 二宮さよ子 野川由美子

1999年3月6日公開

 

地域住民を交えた高須組主催の盆踊り大会が地元で開かれ、その最中に何者かにより高須組長(名古屋章)が刺殺されます。堅気として暮らす組長の息子・俊之(野村宏伸)は新妻の由紀(高島礼子)との新婚旅行中に父の死を報らされ、2人は急遽帰国します。高須組の本宅に初めて訪れた由紀は、義母・綾(野川由美子)から若頭・田所(永島敏行)の妻・寿美(かたせ梨乃)たち組員の妻に紹介されます。

 

葬儀後、綾は高須組の今後を考え、近日中に二代目を決めるよう幹部たちに指示します。急遽開かれた幹部会では若頭の田所を推す声が高まります。ところが、田所が「俊之に跡目を継がせたい」と言い出したことから、戸田(六平直政)や根元紘一(中尾彬)たちから反感を買ってしまいます。

 

一方、俊之は一週間悩んだ末に、綾と由紀の前で背中に入れたばかりの刺青を見せて跡目を継ぐ覚悟を示します。田所は俊之が二代目襲名を決意したことを幹部会で伝えます。ところが、翌日、俊之と由紀が外出先で何者かに襲撃され、俊之が亡くなります。一命を取り留めた由紀は寿美に見守られながらしばらく入院生活を送りますが、田所は俊之を葬った黒幕を見つけようとします。

 

その頃、根元は人を使って俊之と前組長を襲撃したことを戸田に打ち明けて仲間に引き込みます。その結果、高須組は田所派と根元派に分裂。由紀は退院後、俊之の死に責任を感じて綾に別れを告げ、根元の妻まり子(二宮さよ子)の経営するクラブで働き始めます。由紀はクラブに潜入して、俊之を殺した黒幕を突き止めようとしていたのです。

 

寿美は由紀が仇討ちしようとしているのに気づき止めようとしますが、由紀は背中に入れた刺青を見せて極道の妻としてもう後戻りできないことを伝えます。その頃、高須組幹部全員が根元派に回り、組の利権は根元と戸田に独占されてしまいます。田所は話をつけに根元の事務所を訪れますが、翌日田所の遺体が発見されます。

 

根元たちに夫を殺されたことを知った寿美は、由紀の復讐に手を貸すことにします。由紀はクラブに来店した戸田を色仕掛けでホテルに誘うと、室内に隠れていた寿美と銃で脅して戸田に電話で根元を呼び出させるのですが・・・。

 

本作は高島礼子を主役にした第一弾です。かたせ梨乃のサポートによって、次第に極道の妻らしくなっていく過程が、新シリーズに向けて高島が役に挑戦していく姿と、劇中のヒロインの人生が重なり合い相乗効果を生んでいます。

 

映画の序盤は高須の姐さんを演じる野川由美子が主役かと思うほど、極道の妻に相応しい貫禄と存在感を示し、彼女の独壇場となっています。組長が何者かによって殺されたため、高須組組長の跡目相続が俄かに問題になってきます。本来ならば、若頭の田所が継ぐのが筋ですが、田所が先代の堅気の息子・俊之を推したため幹部会は紛糾します。

 

地道にやくざの仕事を継続してきた幹部からすれば、堅気のボンボンがいきなり組長になるのは抵抗があります。田所の強硬な先代の息子推しが、組の内部分裂を引き起こした訳で、自業自得の感が無きにしもあらず。息子を演じる野村宏伸は、良い意味で存在感の無さを発揮するので、役にはピタリと嵌っています。

 

内部抗争には根元が裏で画策しており、女房のまり子がマクベスの妻よろしく夫を唆した形になっています。ただ、先代の組長の高須の暗殺の黒幕が根元だったことを考えると、高須の死後に根元にも組長の目があると睨み、まり子が夫を焚きつける描写には矛盾が生じるのですが・・・。それとも、跡目に関係なく単に組長に不満を抱いての犯行だったのか?

 

それはともかく、根元の尻馬に乗って簡単に寝返る戸田も、お目付け役の叔父貴としては些か軽すぎますね。尤も、金と女にしか興味がないのは、その後の言動で明らかになります。この映画では姐御としての成長段階を描いているため、極道の妻の凄み、覚悟、度量は十分に示されていません。本領を発揮するのは2作目からになるでしょうが、ヒロインの通過儀礼を経ての成長物語と捉えれば、なかなか味わいがありました。