ポンコツな強奪チームが競馬場の売上金を狙う 「七人の野獣 血の宣言」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

Age Of Go!Eiji!! 郷鍈治の祭り より

 

製作:日活

監督:江崎実生

脚本・原作:山崎巌 江崎実生

撮影:安藤庄平

美術:千葉和彦

音楽:山本直純 坂田晃一

出演:丹波哲郎 宍戸錠 岡田真澄 小池朝雄 郷鍈治 山本陽子 弓恵子 青木義朗 高品格

1967年10月21日公開

 

いずれも現金に目のない六人の男が、現金強奪を企てます。その六人は、元刑事でリーダー格の木戸(丹波哲郎)、木戸と因縁の深い片山(青木義朗)、外国人に化けるのが得意な辺見(岡田真澄)、競馬の予想屋の芹沢(高品格)、その弟の鉄(郷鍈治)、自称インテリやくざの直次郎(小池朝雄)でした。

 

彼らは破産寸前の芸能プロモーター大黒(富田仲次郎)が、競馬場を襲って三億円を強奪しようとしているのを知り、その三億円を横取りしようという計画を立てます。六人は大黒の動きを監視する一方、綿密な計画を練りました。しかし、彼らはあわよくば三億円を一人占めにしようと狙っているのです。

 

大黒の競馬場の売上金の襲撃は成功しますが、木戸たちは大黒に裏をかかれ横取りに失敗します。木戸はめげることなく、大黒から三億円を奪おうとします。まず、外国人に化けた辺見が贋の契約を交わすために大黒邸を訪れ、そこで急病になります。そこに、医者に変装した鉄、直次郎、看護師に化けた鉄の恋人(浜かおる)が治療に現われ、隙を見て大黒の金庫を破って現金を奪う筈でした。

 

ところが、大黒の“娘”のユリ(弓恵子)と秘書の伊達(深江章喜)が、三億円を持って駆け落ちを図ったために計画が狂います。木戸はユリを人質にして、大黒に三億円との交換を申出ますが、交換現場でニセ札を掴まされて失敗に終わります。その際に、木戸は海に叩き込まれ行方不明になります。木戸を失った面々は途方に暮れますが、大黒邸を見張っていた5人の前に、頑丈な板で防護した車を運転する木戸が現れます・・・。

 

何と言っても強奪チームの面々が魅力的。丹波哲郎を筆頭に、小池朝雄、青木義朗、高品格と癖のあるベテランがいる一方、直情型の郷鍈治やナヨッとした岡田真澄がいるなど、これだけで期待感を抱かせます。このメンツであれば、「アスファルト・ジャングル」や「現金に体を張れ」のようなケイパー映画を撮っても、面白い作品ができたでしょう。でも、タイトルの勇ましさとは裏腹に、敢えて欲の突っ張ったポンコツチームにしてドタバタ喜劇に仕立てています。珍品を観る面白さがありますが、ちょっと勿体ない気がしないでもありません。

 

強奪チームの面々は隙あらば仲間を出し抜いて金を独り占めしようとする者ばかり。その中で、リーダーの木戸は計画を成功させるため、均等に分け前を与えることに腐心します。芹沢と鉄は兄弟の間柄にあるため、少なくとも二人の間で裏切ることはありません。一方、片山は木戸がまだ刑事だった頃に親分を殺されたことがあり、その落とし前をつけるため、仕事が終わってから木戸を始末する腹づもりでいます。

 

また、直次郎は大黒の下で働いていたことがあり、その時に受けた屈辱のせいで恨みを抱いています。この直次郎の屈辱は、終盤に伊達と辺見を介して明らかにされます。直次郎を演じる小池朝雄が、大黒に嬲られる姿を想像するとかなり笑えます。その一方で、直次郎は大黒の“娘”であるユリには恋心があります。このユリがとんだ食わせ者だったことが、彼女が木戸のチームに誘拐されて以降明らかになります。色仕掛けで男を誑し込み、自分の目的を果たそうとするのがなかなか逞しいです。

 

前半から中盤にかけては、互いに仲間を出し抜こうとしては失敗に終わるパターンで笑いを取り、後半は話が進むにつれ、最後に笑うのは誰か?に興味が移っていきます。ケイパー映画の定石に倣って、犯罪は割に会わない結末を用意してはいるものの、オチにはヒネリが加えてあります。木戸は落とし物の謝礼の10%を落し主から貰えることに目をつけて、強奪した金を全部頂くのではなく、落とし物を見つけたという口実で強奪金のカスリを手に入れようとします。この10%の謝礼金が伏線となって、最も欲のない者が最後に得をする流れも、皮肉が効いていて痛快と言えます。

 

本作では宍戸錠と山本陽子がクレジットされていますが、両人とも出番は極めて少ないです。ただし、どちらも美味しいところを攫っていきます。個人的にはユリ役を山本陽子で見たかったですね。清純と思われた“娘”があばずれに豹変する姿は、山本だったらより効果的だったように思いました。