血湧き肉躍るインドのアクション映画 「RRR」を観て | パンクフロイドのブログ

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地元のシネコンでは韓国映画が少しずつ上映されるようになってきましたが、今度はインド映画まで観られるようになりました。しかも初めて上映される「RRR」が頗る面白かったので、この調子でインド映画も韓国映画同様に地元で上映して欲しいものです。

 

RRR 公式サイト

 

チラシより

舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム。大義のため英国政府の警察となるラーマ。熱い思いを胸に秘めた男たちが運命に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに究極の選択を迫られることに。彼らが選ぶのは、友情か?使命か?

 

製作:インド

監督・脚本:S.S.ラージャウマリ

原案:V.ヴィジャエーンドラ・プラサード

撮影:センティル・クマール

美術:サブ・シリル

音楽:M.M.キーラヴァーニ

出演:N・T・ラーマ・ラオ・Jr ラーム・チャラン アジャイ・デーヴガン

         アーリアー・バッド シュリヤー・サラン

2022年10月21日公開

 

英国植民地時代のインドで、ゴーンド族のビームは英国領インド総督の夫人キャサリンの気まぐれにより、幼い妹のマッリを奪われてしまいます。彼は妹を取り戻すため、総督の官邸に忍び込む機会を窺います。しかし、官邸は警備が厳重で思うようにいきません。そこで、敵の敵は味方と言うことで、ビームの仲間がインド人民解放組織の集会に参加して、協力してくれそうな人物を探します。ところが運悪く、組織に潜入していた英国政府の警察官のラーマと接触してしまい、這う這うの体で逃げ出します。

 

一方、ラーマは暴動寸前の群衆の中を、たった一人で石を投げた男を捕まえに行く猛者。その反面、彼の行動はインド人でありながら大英帝国に仕える犬のように映り、最初のうちはあまり良い印象を持たれません。そんな折、鉄橋を渡ろうとした列車が事故を起こし、下を流れる河が一面火の海となり、漁をしていた少年が河に取り残されます。偶然その場にいたビームとラーマは、機転を利かせながら一致協力して少年を救い出します。

 

これがきっかけとなって、二人は互いの素性を知らないまま、義兄弟の契りを結びます。そんなある日、ビームは総督夫妻の姪であるジェニーに一目惚れします。ビームの様子を目にしたラーマは、彼の為に出会いの場を作ってあげます。その甲斐あって、ジェニーからビームはラーマと共に、英国人のパーティーに招待されます。

 

ところがそのパーティーで、ビームはジェニーに気のある尊大な英国人から侮辱を受けます。しかし、ラーマの助太刀により、ビームは若い英国人に一泡吹かせることに成功。更に、ラーマの粋な計らいによりビームの株が上がり、ビームとジェニーとの仲が急速に進展します。その一方で、ラーマがビームの仲間を捕らえたことで、義兄弟の関係に暗雲が立ち込めます。果たして、ビームとラーマの運命や如何に?と言うことで、後は映画を観てのお楽しみ。

 

タイトルの「RRR」は、Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)を意味しており、大英帝国に支配されるインド人の願いが反映されています。『バーフバリ』シリーズのS.Sラージャマウリが手掛けているだけに、胸の熱くなる場面がてんこ盛りです。

 

この映画は観客が神の視点から俯瞰しながら人間模様を見られる作りをしています。ビームとラーマは互いに素性を知らないのに、観客は既に二人の立場を把握していますし、いずれ対立せねばならぬ運命であることも薄々察知します。ただし、ビームに比べるとラーマに関しては謎の部分もあります。大英帝国のために働く犬のような行動を取るかと思えば、火に囲まれた河にいる少年を救う熱い気持ちも持ち合わせているからです。ラーマの真意がどこにあるかは、英国統治下にあるインドの状況を考えれば、察しの良い観客ならばある程度想像はつくかもしれません。

 

娯楽映画に憎々しい悪役は付きもので、本作もその例に漏れず、総督夫妻がその役を担っています。総督のスコットは銃を使って処刑しようとする部下に、経済学の理論を説いた上で、別の方法を指示します。また夫人のキャサリンも、子供の歌の褒美として母親にはした金を与えたと思ったら実は・・・と言う具合に、インド人の人権を徹底的に踏みにじります。こうした積み重ねにより悪役への反感が募り、彼らが成敗されることで、映画はより強いカタルシスをもたらします。特にスコットによる経済理論に基づいた制裁が、そのまま自分に撥ね返ってくる結末は、容易に予想できたとしても痛快。この辺りも観客目線の作りが十分感じられます。

 

そして、インド映画と言えば歌と踊り。でも、歌はともかく、踊りに関してはエンドロールを除けば、劇中ではパーティーの場面くらいに抑えられています。そのパーティーの場面でも、いきなり踊り出すのではなく、自然な感じに全員で踊るように設定されているため、従来のインド映画より入りやすくなっています。インドのアクション映画は、外連味たっぷりな演出と、因縁のある人間模様の展開で、映画ファンを魅了してきました。本作も血湧き肉躍るの形容通り、3時間の長さを全く感じさせず、観る者を存分に興奮させてくれまます。