理容室で淫らなサーヴィスをする映画と思っていたら・・「ピンクカット 太く愛して深く愛して」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

日活ロマンポルノ50周年 私たちの好きなロマンポルノ より

 

製作:にっかつ

監督:森田芳光

脚本:木村智美 森田芳光

撮影:鈴木耕一

美術:中澤克己

出演:寺島まゆみ 伊藤克信 井上麻衣 渡辺良子 山口千枝 山地美貴 麻生みちこ

1983年1月21日公開

 

女子大生のまみ(寺島まゆみ)は、大学へ通いながら亡くなった両親の家業の理容室を切り盛りしています。店は元風俗嬢のみどり(渡辺良子)、ホステス出身の純子(山地美貴)、ツッパリ娘の智枝(山口千枝)などがミニスカートで働き、男性客が集まり繁盛しています。

 

その店に、就職試験を控えた大学生の明(伊藤克信)がやってきます。明は店の雰囲気が気に入り、親友の巧(佐藤恒治)にも行くことを勧めます。明には由加(井上麻衣)という恋人がいましたが、就職試験にことこどく落ちるので彼女はあきれはてています。一方、まみは単位不足、出席日数不足を教授の田島(山田克朗)と関係することで切り抜けていました。明は由加の小言が鬱陶しくなり、まみの店に通うようになります。

 

ある晩、二人きりになった際、明はまみに強引に迫った挙句、店から叩き出されてしまいます。そんな折、智枝がスペシャルサービスをやってチップを請求する事件が起きます。まみは智枝を諌めますが、智枝から「刺激だけしといて、サッパリさせないのは中途半端だ」と反論され悩んでしまいます。

 

まみは明に電話をすると、先日のことは気にしていないことを告げ、家に呼んで体を重ね合わせます。また、まみと明が同じ大学に通っていることも分り、二人の仲は一層親密になりました。それとは対照的に、由加は何度も試験に落ちる明を見限り別れてしまいます。

 

数日後、由加が新しい彼氏を紹介しにやってきますが、男は明が由加の処女を奪ったことが許せず喧嘩になり、明は男を殴り飛ばします。そんな明も一流企業のET電機への入社が決まり卒業式を迎えます。まみは明の入社と大学卒業を喜び、自宅で二人だけのお祝いをします。そこで、明は・・・。

 

観る前は理容室でどんな過激なサーヴィスがあるのだろうとワクワクしましたが、実際に観ると智枝が手でしごくのを除けば、真っ当な営業をしています。お客が女性理容師にお触りするとか、髭を剃る際に顔に乳を押し付けることもありません。ただし、お客の妄想シーンで理容師たちがくんずほぐれつするサーヴィスの描写はあります。

 

よくよく考えれば、理容業は風俗業ではないので、淫らな行為をすれば警察から手入れを受けるのですから、普通に商売するのは当たり前。ただし、若い女性の理容師ばかりの上に、情欲をそそる振る舞いをされると、ボンクラ野郎どもが足を向けたくなるのは自然の理であり、まみは商才があると言えます。

 

まみを演じる寺島まゆみはポルノ界の中でもアイドル性があり、こうした艶笑喜劇でのコメディエンヌにはうってつけ。その彼女のお眼鏡に適うのが明。就職活動では悉く不採用が続き、恋人の由加にも見限られそうになっています。でも、ボンクラ野郎の癖に、可愛い女の子と二股かけるリア充で、その点は少しばかりムカつきますわ(笑)。

 

でも、由加は一流企業に就職するような男としか付き合いたくないようで、明にしきりとハッパをかけます。また、明と別れた後も新しい彼氏と引き合わせる嫌味な面があり、可愛くても正直お付き合いしたい女とは思えません。苦労知らずのいいとこのお嬢様に比べると、まみは亡き両親の跡を継いで理容室を経営しながら大学にも通う苦労人であり、こちらのほうは好感度が高いです。

 

ただし、仕事と学業の両立は難しく、出席日数の足りない分を、昵懇の教授と関係を持って埋め合わせするしたたかな面を持ち合わせています。二人の女性は美人の反面、どちらもマイナス面はありますが、商売柄人付き合いの良さと持って生まれた愛嬌でまみに軍配が上がります。したがって、由加に愛想を尽かされなくとも、明とまみが結ばれるのは自然の流れと言えます。

 

それでも物語上、明もまみに見合う男であることを証明せねばならず、終盤に精一杯の男気を見せます。二股リア充でムカついた件も、彼の下した決断で水に流せます。こちらが想像していたような映画と違っていましたが、女優陣の濡れ場も適度にあり、何より寺島まゆみの天真爛漫さが大いに気に入りました。