500万ドルを持ち逃げしたと疑われた男の行く末は?「ミリオネア・オン・ザ・ラン」を観て | パンクフロイドのブログ

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ヒューマントラストシネマ渋谷

韓国映画 CJゾーンの映画たち2020 より

 

チラシより

大企業に勤めるエリート会社員ヨンインは、上司の命令で取引先に500万ドルを届ける途中、何者かの襲撃を受ける。信頼していた上司がヨンイン殺害を依頼し金を奪おうとしたと知った彼は、現金入りのバッグを持って逃走。上司が差し向けたヤクザや警察から追われる中、道中で出会った不良少女ミリも一緒になり、騒動を巻き起こす。

 

製作:韓国

監督:キム・イクロ

脚本:チョン・ソンイル

撮影:イ・イヌォン

音楽:チェ・ミニョン

出演:パク・ジニョン チョ・ソンハ ミン・ヒョリン

2013年10月12日公開

 

7年前に公開された映画だが、全く存じ上げませんでした。主人公が不正を働いている上司の罠に嵌る話とは別に、大学生の女の子がやくざを誑かした末に追われる話が並行して描かれ、チェ・ヨンイン(パク・ジニョン)とナム・ミリ(ミン・ヒョリン)が出会った途端、物語も俄然面白さが増してきます。

 

ヨンインの上司のハン常務(チョ・ソンハ)は会社の金を使い込み、後輩のインテリやくざのチョ(チョ・ヒボン)から借りている金の返済に充てています。ヨンインの同僚のキム・スンデ部長(チョ・ジヌン)はその事に気づくものの、自殺に見せかけ殺されてしまいます。

 

ハン常務はチョからの借金の取り立てが厳しいため、これを一気に解消する為、会社からパク議員(イ・ギョンヨン)に贈るロビー資金(またの名を賄賂)の500万ドルを、部下のヨンインが横領したように見せかけ奪おうとします。ヨンインはチョに始末させ、会社も賄賂の金を公にできないことから、ハン常務には勝算がある筈でした。

 

ところが、ヨンインがパク議員の許に500万ドルを運ぶ途中、予期せぬ出来事が起こり、ハン常務の目算が狂います。ハン常務は江南署から事故で炎上した車から遺体が発見され、その遺体が部下のヨンインらしきことを知らされ警察署に赴きます。

 

彼は暴力班の班長オ・ギョンファン(キム・ジュンベ)とファン刑事(イ・サンホン)の取り調べ中に、彼らからヨンインが乗っていた筈の車が盗難車だったことを聞かされ怪訝に思います。また、遺体が身に付けていた高価な時計が、ハン常務の贈ったものと判明すると、刑事たちの彼に対する疑いも濃くなります。

 

その頃、大学生のミリはパパ活を装い、やくざのピルスとラブホテルに行き、彼が風呂に入っている隙に金目の物を奪ってトンヅラします。ところが、その中には高価な宝石類も含まれていて、そうとは知らないミリは無防備のままやくざに追われる羽目になります。

 

一方、ヨンインは幸か不幸か、講師として招かれた大学の彼の授業を受講したミリの同級生たちに襲われた結果、辛うじてハン常務の仕掛けた罠を免れます。二人は別々の件でやくざたちから逃げ回るうちに、前述したように思いがけぬ形で出会うのです。

 

厳しい状況にあるのは二人だけでなく、実はハン常務や後輩のチョも追い込まれている点では一緒。ハン常務は金を取り戻せねばチョへの借金が返せないし、チョにしても借金が回収できなければ身の破滅に繋がります。また、ミリに大事なブツを奪われたピルスも同じで、彼女を見つけなければ組から命を取られかねません。こうして見ると、本作は追い込みをかけられた者同士のサバイバルゲームの様相を呈しています。

 

やがて、ヨンインはハン常務の企みに気づくものの、会社の金を横領した疑いをかけられたために、警察に出頭することは難しい立場にいます。ヨンインが外国人であることも不利に働いています(ピルスは彼のことを南米野郎と呼んでいましたね)。その上、炎上していた車に乗っていた人物への殺人容疑もかけられ、余計に警察には頼れなくなります。

 

この映画でも相変わらず警察官を無能に描いていて、韓国映画では警察がおバカの設定になっていることはお約束事と化しています。特にヨンインの行方を追うオ・ギョンファン班長とファン刑事は完全にコメディリリーフで、映画のちょっとした息抜きの役割を果たしています。

 

本来ならば大手柄になる筈のところを、釜山管内だったために鳶に油揚げをさらわれたのは何ともお気の毒。犯罪映画でありながら、喜劇色の濃いのは二人の刑事の他に、やくざのチョやピルスが間の抜けたキャラクターになっている点も大きいです。

 

圧巻は野球場でハン常務、チョ、ピルスたちが躍起になって逃走中の二人を見つけようとする場面。大観衆のスタジアムで繰り広げられるドラマは、観衆の熱気と相まって、それだけで気分が上がります。そのスタジアムのVIPルームで、ヨンインはイチかバチかの賭けをします。一度は敗北したと思わせ、逆襲に転じる話の流れは勧善懲悪の娯楽作の王道と呼ぶべきもので、気持ちよく劇場を後にできました。