「IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり」「遊星からの物体X」を観て | パンクフロイドのブログ

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IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり 公式サイト

 

チラシより

小さな田舎町で再び起きた連続児童失踪事件。幼少時代、“それ”の恐怖から生き延びたルーザークラブの仲間たちは、27年前に固く誓い合った<約束>を果たすために町に戻ることを決意する。だが“それ”は、より変幻自在に姿を変え、彼らを追い詰めていく――。果たして、すべてを終わらせることはできるのか!?

 

製作:アメリカ

監督:アンディ・ムスキエティ

脚本:ゲイリー・ドーベルマン

原作:スティーヴン・キング

撮影:チェコ・バレス

美術:ポール・D・オースタベリー

音楽:ベンジャミン・ウォールフィッシュ

出演:ジェームズ・マカヴォイ ジェスカ・チャステイン ビル・スカルスガルド

2019年11月1日公開

 

前作から27年後の物語。大人になったルーザークラブの面々が、思い出したくない記憶と向き合いながら、そのトラウマを克服しつつ、原因となっている“それ”と対決していくのが見どころとなっています。27年も経っていると人生色々。大人になった彼らも順風満帆とは言えず、何がしかの苦悩を抱え、過去の出来事が影を落としています。

 

作家になったビルは自作の結末が不評であることに鬱屈を抱え、ベバリーはアパレルブランドを経営し裕福であるにも関わらず父親同様DVの夫を選んだため暴力に怯え、唯一デリーの外に出なかったマイクは街の歴史を調べ事件の捜査を続けているなど、過去の呪縛に囚われています。人間誰しも嫌な記憶は頭から排除したがり、彼らも例外でなく、子供の頃に“それ”と対峙した詳細がスッポリ抜け落ちています。

 

当初は気持ちがバラバラだった仲間たちも、行動を共にすることによって、結束が固くなっていきます。そして、徐々に失われた記憶を取り戻していき、“それ”との対決姿勢を強めていきます。私も前作の記憶が朧気だったために、子供時代の回想シーンを挿入したことで、段々と思い出していき、登場人物と同化できる効用がありました。

 

この効用は配役にも一役買っています。子供時代の彼らが、大人になったらこういう顔立ちになるだろうなと思わせる説得力があるからです。太っちょだったベンが減量してイケメンになっていたのには違和感を覚えるものの、ベバリーとの絡みを考えたら致し方ない面はあります。でも、太り気味の俳優をキャスティングしていたら、ボンクラ野郎には夢を与えられたのにと、ちょっと残念に思います。

 

一応、ホラー映画の範疇に入る本作ですが、恐怖演出には既視感があり、格別の怖さや驚きは感じられませんでした。その中では、遊園地の鏡部屋の場面は、印象に残る描写でした。尤も、オーソン・ウェルズの「上海から来た女」や、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」を見ても分かるように、四方を鏡に囲まれる場面は自然と気分が上がり、ホラーやサスペンスとは相性が頗る良いのですが・・・。

 

映画という媒体では時間の制約もあり、原作通りに子供時代と現在を描くのは難しく、はっきり分けてしまうのはやむを得ないと思います。それでも、後篇にあたる本作は、子供時代の場面を挿入することで、多少不満は解消されています。忠実に映像で再現したいのならば、ある程度尺をとって、テレビの連続ドラマの形式にするほかないでしょう。個人的には2作の合わせ技で健闘したと思います。

 

 

遊星からの物体X 公式サイト

 

製作:アメリカ

監督:ジョン・カーペンター

脚本:ビル・ランカスター

原作:ジョン・W・キャンベル

撮影:ディーン・カンディ

美術:ジョン・J・ロイド

音楽:エンニオ・モリコーネ

出演:カート・ラッセル ウィルフォード・ブリムリー T・K・カーター デヴィッド・クレノン キース・デヴィッド

1982年11月20日公開

 

1982年冬の南極。アメリカ南極観測隊第4基地に、軍用ヘリコプターに追われている1匹の犬が逃げこんできます。ヘリコプターにいた射撃手は執拗にその犬をライフル銃で狙い撃ちします。ゲーリー(ドナルド・モファット)は、アメリカ基地の隊員が撃たれたため、身の危険を感じ射撃手を射殺します。

 

ヘリコプターの国籍はノルウェイであることが判明し、謎を究明すべく、パイロットのマクレディ(カート・ラッセル)はコッパー医師(リチャード・ダイサート)、ブレア(ウィルフォード・ブリムリー)を乗せて、ノルウェイ基地へ向かいます。そこは廃墟と化しており、そこかしこに隊員の死体が奇妙な形で横たわっていました。地下室では長方形の氷の魂が見つかり、中から物体を取り出した形跡がありました。さらに外の雪上には円盤状の物体がありました。

 

その頃、ヘリコプターに追われて来た犬が犬舎で変身を始め、周りの犬を襲い出します。更に、駆けつけたチャイルズ(キース・デヴィッド)の足に触手が巻きついたため、マクレディが火炎放射でその物体を焼き殺します。ノルウェイ基地で発見したビデオから、ノルウェイ隊がUFOの落下地点で氷の魂を切り出したことが判明。ブレアは研究を進め、宇宙生物が犬に寄生してノルウェイ隊を全滅させたと判断を下します。

 

ところが、犬舎で抹殺したはずの物体がベニングスを襲い、ブレアは常軌を逸した行動を始め、ヘリコプターや無線が使えない状況に陥ります。12人いた隊員は次々に得体の知れぬ物体に襲われて行き、残された隊員たちは宇宙生物に寄生されたのではないかと、互いに不信の目で見るようになります・・・。

 

ハワード・ホークスが製作指揮を執った(監督はクリスチャン・ネイビー)「遊星よりの物体X」のリメイクなのですが、閉鎖された空間で得体の知れぬクリーチャーに襲われ疑心暗鬼に陥る点においては、リドリー・スコットの「エイリアン」の感覚に近いです。今観てもクリーチャーの造形は秀逸ですし、特殊効果による気持ちの悪い描写も最高。

 

それにしても、危機に陥った際の西洋的な合理主義には、良くも悪くも感心させられます。人を疑ってかかることから始め、疑いのかかった者には有無を言わさず、監禁もしくは拘束。自分たちが助かる見込みが低いと見るや、被害を最小限に食い止めるために、寄生した宇宙生物を自分たちと同じ運命に引きずり込もうとします。日本人は情が絡んで、ここまでドライには割り切れないと思います。

 

最後に二人だけ生き残ったものの、寄生された可能性に含みを持たせて幕が閉じられます。でも、例え寄生された者が襲ってきても、どうでもいいやという諦めの境地に二人はなっていて、観ているこちらもバッドエンディングなのか、そうでないのかも曖昧になってきます。