一難去ってまた一難 「盲目のメロディ ~インド式殺人狂騒曲~」を観て | パンクフロイドのブログ

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盲目のメロディ ~インド式殺人狂騒曲~ 公式サイト

 

チラシより

盲目のピアニスト、アーカーシュ(アーユシュマーン・クラーナー)の誰にも言えない秘密。それは、本当はバッチリ目が見えること!芸術のため盲目を装う彼は、ある日、大スター、プラモード(アニル・ダワン)からの演奏依頼を受けて訪ねた豪邸で、妻のシミー(タブー)と、その不倫相手のプラモード殺害現場を“目撃”してしまう!死体も犯人も見えないフリで切り抜けたアーカーシュだったが、駆け込んだ警察の署長(マナフ・ヴィジ)こそ現場にいた犯人だった!さらに災難は続き、盲目を疑ったシミーの毒薬で本当に目が見えなくなり、署長からは命を狙われて、遂には病院送りに・・・。追い込まれたアーカーシュは、病院で知り合った怪しい医者たちと組んでシミーを誘拐するが、そこには裏切りと騙しあいの大騒動が待っていた!

 

製作:インド

監督:シュリラーム・ラガヴァン

脚本:アリジット・ビシュワース プージャ・ラダ・スルティ

        ヨゲーシュ・チャンデカール シュリラーム・ラガヴァン

撮影:K・U・モナハン

音楽:アミト・トリベーディー

出演:アーユシュマーン・クラーナー タブー ラーディカー・アープテー

2019年11月15日公開

 

プロットだけでも面白くなる要素がてんこもりです。アーカーシュが死体を目にしたにも関わらず、自制を利かせて盲目のフリをして乗り切るのが序盤の山場。しかし、必死なのはアーカーシュばかりでなく、シミーや警察署長も同じこと。盲目の(フリをした)アーカーシュに対して、殺害現場で夫がさも生きているように取り繕うシミーは、観客から見れば滑稽の極みですが、当事者からしたら危機を乗り切るために死に物狂いとなっています。

 

その結果、シミーは有力な証言者である隣人の女性校長を事故に見せかけて殺した上に、アーカーシュの見える目まで奪ってしまいます。恋人のソフィ(ラーディカー・アープテー)に助けを求めても、悪ガキに目が見えることを彼女にバラされた上、シミーがアーカーシュと一夜を共にしたかに見せる小細工をしたため、ソフィと連絡が取れなくなります。

 

更に、アーカーシュを殺しに来た署長から命からがら逃げてきたものの、匿われた相手が悪かった。医師のスワミ(ザキール・フセイン)、くじ売りの中年女、その弟のタクシー運転手は、いずれも腹黒く欲の皮が突っ張った連中。アーカーシュを殺し、彼の臓器を売って、一儲けしようとします。一難去ってまた一難という展開が続く為、益々スクリーンから目が離せなくなります。

 

この映画の美点は、悪事を働いた連中が悉く落とし前をつけさせられている事にあります。アーカーシュの秘密を暴露した悪ガキさえも、結局お金は取れず動画まで削除される徹底ぶり。また、映画の冒頭では、ハンターがウサギを狩ろうとするシーンが出てきて、一連の出来事とどのような繋がりがあるかと思っていると、終盤になって見事に伏線が回収されます。

 

更に、主人公がこれからどうなる?というところで、いきなり2年後のヨーロッパに飛ぶ話の流れも洒落ています。アーカーシュは、その地でソフィと再会し、彼女の誤解を解いた上で、その後の顛末が語られます。でも、最後のショットを見る限りでは、果たしてアーカーシュの話をまともに受け取っていいのかと、些か眉に唾をつけたくもなります。

 

監督が音楽にこだわりのあることは、映画が終わった後のメッセージや、エンドロールに流れる70年代のインド映画?の数々の音楽場面を編集した映像を見るだけで伝わってきます。ただし、劇中でもアーカーシュの歌や演奏にかなりの時間が割かれるため、サスペンス映画としては、やや間延びした印象も与えます。もう少しタイトに刈り込んで、1時間半ほどの時間に収めれば、もっと緊迫感のあるスリラーになったとは思いますが、この映画自体喜劇風味である上に、こうしたユルいスタイルがインドの娯楽映画の良さでもあるので、一概に否定はできません。そんなユルい部分もありながら、十分楽しませてもらいました。