怒涛の運命がJKたちに襲い掛かる「半處女」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

玉石混淆!?秘宝発掘! 新東宝のとことんディープな世界 より

 

製作:新東宝

監督:内川清一郎

脚本:岸松雄 赤松長義

撮影:岩佐一泉

美術:鳥居塚誠一

音楽:大森盛太郎

出演:南風洋子 左幸子 南壽美子 片山明彦 沼田曜一 和田孝 安西郷子

1953年8月25日公開

 

浅野日左子(南風洋子)、佐川圭子(左幸子)、篠田靖子(南壽美子)、大野美代(城実穂)は高校3年生の仲良し四人組。今日も授業中にプールではしゃいでいるうちに、圭子が飛び込み台から落ちて、靖子の胸を強打したために、靖子は保健室に運ばれます。その際に、靖子は三田先生(相馬千恵子)から、父親の浩三(石黒達也)が娘の成績の落ちているのを心配していることを知らされます。

 

靖子の父親は厳格なため、思春期の娘に何かと干渉しがち。靖子もそんな父親に反発する悪循環が続いていました。夏休みに葉山にある日左子の別荘で過ごす話も、当初は父親に却下され、靖子は益々意固地になっていきます。

 

しかし、三人の友人の力添えで靖子も別荘行きが可能になり、四人は葉山の海に繰り出し夏休みを満喫します。その際、靖子に気のある日佐子の兄の明(片山明彦)が、モーターボートで彼女を沖合に連れ出します。ところが、エンジンが止まってしまい、成り行きで二人は結ばれます。

 

一方、圭子は貧困に喘いでおり、学業を続けながらアルバイトをしています。それでも生活は苦しく、とうとう夜の世界に足を踏み入れます。彼女は年齢を偽り、ホステスのアルバイトを始めますが、兄の宏(沼田曜一)の友達の隆(和田孝)に諌められます。その頃、露天商の宏はパンパンのリリー(安西郷子)に慕われていました。

 

ところが、彼女は結核と性病を患い自暴自棄になっていました。宏はそんなリリーを根気よく説得して、病院に入院させます。その一方で、日佐子も宏に好意を抱いており、二人の仲が気になってしょうがありません。そんな折、靖子が学校で倒れ、妊娠騒動が持ち上がります・・・。

 

戦前に小島政二郎の原作を映画化した同名の作品がありますが、それとは全く別物です。本作は、女子高生四人組と彼女たちの周囲にいる男たちとのラヴロマンスの話かと思いきや、JKたちがどんどん大人のディープな世界に踏み込んでいきます。左幸子と南風洋子のスクール水着を見られただけで、ほぼ元を取ったようなものですが、敗戦から8年経った日本の世相が反映されて、そちらも興味深く観ることができました。

 

仲良し四人組のリーダー格は日左子で、親は病院を経営しており、葉山に別荘があります。美代は芸者置屋の娘で、靖子も父親が厳格なだけで、生活に困っている様子はありません。この3人が比較的裕福な暮らしをしているのに対し、圭子は両親を戦災で亡くし、露天商の兄も稼ぎがいいとは言えず、オルゴールや天体望遠鏡の内職で食いつないでいる状態。

 

それに加えて、売れない画家の隆も兄妹の家に居候しているのですから、圭子が年齢を偽って水商売のアルバイトを始めるのも仕方のない面があります。したがって、同い年で売春せざるを得ないリリーへの距離の取り方も、圭子と日左子では異なってきます。汚いものでも見るような日左子に対し、圭子はリリーを擁護します。

 

圭子も一歩間違えば、リリーと同じ身になった可能性を実感しているだけに、彼女には自然と同情的な立場になります。その感情は兄の宏の影響も大きいです。宏はリリーがパンパンであることを知っても、分け隔てなく彼女と接し、だからこそ、リリーも兄のように宏を慕って来ます。

 

日左子がリリーに反発するのも、彼女も宏に気があるからで、女としての嫉妬の部分が大きいかもしれません。非常に好感度の高い青年を、粘着質の悪役を得意とする沼田曜一が演じているのも面白いところで、若干変人な面はあるものの、これほど爽やかな沼田を見るのは初めて。

 

女子高生たちはこの時代でも弾けていて、圭子は年齢を偽ってホステスの仕事をした挙句、未成年にも関わらず、賭けをして酒まで飲みます。靖子は厳格な父親への反動からか、日左子の兄と海の上で交尾をします。初体験が青姦かぁ・・・。

 

気位の高い日左子は宏への想いが遂げられないこともあり、美代と何やら怪しい雰囲気に。美代は美代で、卒業後は芸者に転身するなど、若い頃でなければできない思い切った行動に走ります。その一方で、病に侵されたリリーがひっそりと死を迎える悲劇もあり、本作は高度経済成長期に差し掛かる時代の希望と影が、カオス状態となって展開される一編と言えます。