フリッツ・ラングが手掛けたラブコメ 「真人間」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

フリッツ・ラング監督特集 より

 

シネマヴェーラ渋谷は2006年の開館以来、入れ替えなしの2本立て上映を続けてきましたが、今回のフリッツ・ラングの特集から1本立ての入れ替え制を導入しました。私の場合会員になっているので、1100円で2本観られていたのが1本800円になったことで、単純に計算すると、1本あたりの料金は550円だったのが800円になったことになります。昨今の名画座、ミニシアターの経営状況を鑑みれば、2本立てでの上映は厳しいことは良く分かります。

 

料金の値上げは致し方ないにしても、2本立てが1本立てになると、目当ての映画しか観られない寂しさはあります。2本立て上映には、本来観るつもりのなかった映画に出会える楽しみがあり、それが目当ての映画よりも面白かった経験は何度もあります。そうした機会が失われるのは残念でなりません。とは言え、閉館よりは存続してくれたほうがありがたく、これからもシネマヴェーラ渋谷には通い続けるでしょう。

 

 

製作年:1938年

製作:アメリカ

監督:フリッツ・ラング

脚本:ヴァージニア・ヴァン・アップ

原作:ノーマン・クラスナ

撮影:チャールズ・ラング

音楽:クルト・ワイル

出演:ジョージ・ラフト シルヴィア・シドニー バートン・マクレーン

        ロバート・カミングス ハリー・ケリー

 

ニューヨークで百貨店を経営するモリス氏(ハリー・ケリー)は、多くの前科者を店員として雇い更生させていました。仮出所中のジョー・デニス(ジョージ・ラフト)も、仮出所の期間が切れて自由の身となるまで彼の店で働いていました。同じ店にはヘレン(シルヴィア・シドニー)もいて、秘かにジョーを愛していました。しかし彼は、堅気の娘が前科者と結婚してはくれないと先入観を抱いていたので、彼女のことをあきらめるために、新しい土地に行こうとします。ところが、出発間際になって前科者でも構わないヘレンの気持ちを知り、急遽カリフォルニア行きを取り止め、再びモリス氏の店で働き始めます。

 

二人は同棲したものの、ヘレンがモリス氏は店員同士の結婚を喜ばないと言い出したため、二人が一緒に暮らしていることは誰にも知られないようにします。それでも、ジョーは他の店員同士が結婚していることを知って、ヘレンの言った事を訝しく思います。その頃、昔の仲間だったミッキー(バートン・マクレーン)がしばしば店を訪れるようになります。彼はジョーやギムピー(ウォーレン・ハイマー)を再び悪の道へ引き入れようとすしますが、ジョーは拒絶し続けます。

 

ある時、彼は妻の衣裳棚から書類を発見し、ヘレンも仮出所中の前科者であることを知ります。仮出所中の者は結婚を許されないため、彼女は二人の仲を秘密にしていたのです。ジョーは妻に裏切られた気がして自棄になり、ミッキーの強盗計画に参加します。彼らの計画は事もあろうに、恩人のモリス氏の百貨店を襲うことでした。ギムピーは心配のあまり、ジョーを引止めるようヘレンに電話します。その電話を受けたヘレンは・・・。

 

フリッツ・ラング監督には珍しいラブコメ映画です。仮出所した者の結婚は認められない設定が巧く利用されて、秘密を明かせない状況が更なる誤解を生み、どんどんドツボに嵌って行く面白さがあります。シルヴィア・シドニーが愛らしく、主人公のジョーならずともメロメロにさせられます。彼女の愛らしい面も然ることながら、終盤において犯罪が割に合わないことを、具体的な数字で示し、前科者で再犯を働こうとした男たちにコンコンと説く描写もギャップ萌えして、この場面が本作の一番の見どころとなっています。また、モリス氏の温情で救われる終わり方も後味がよろしく、犯罪者が更生するドラマに相応しい内容になっています。