浮気をする筑波久子が可愛い 「男の銘柄」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

シネマヴェーラ的 大映女優祭 より

 

 

製作:大映

監督:弓削太郎

脚本:荒井八郎

原作:円地文子

撮影:石田博

美術:間野重雄

音楽:池野成

出演:筑波久子 大瀬康一 丹羽又三郎 石井竜一 渋沢詩子 弓恵子 根上淳 左幸子

1961年11月12日公開

 

一組の若夫婦が医者や看護婦に見送られ退院して行きました。夫は高校教師の志村豊男(大瀬康一)、妻は里枝(筑波久子)。里枝は献身的に夫の看病をする妻である一方、彼女には株で儲ける才能がありました。里枝は株屋で親友の長谷部朋子(左幸子)も舌を巻くほど鋭い勘を働かせ、へそくりを貯めています。ところが、里枝は療養中の夫の行動に不審を抱きます。豊男はかつて学校の事務員をしていて、現在はバーのホステスをしながら、株にも手を出している浅野香芽子(渋沢詩子)の相談を受けるうちに、深い関係になっていたのです。

 

この事実を知った里枝は、夫への腹いせに、かねてから彼女に思いを寄せていた純情なサラリーマンの富永繁(丹羽又三郎)と一夜を共にします。妻の浮気を露知らぬ豊男は、口実をもうけては休日に外泊するようになり、夫の行動に呼応するように里枝の外泊も多くなっていきます。そんなある日、里枝は朋子からコマーシャル・デザイナーの花輪喜一郎(根上淳)を紹介されます。

 

彼のアトリエには鞭・鎖、手錠などSEXに関するあらゆる攻め道具が用意されており、里枝は花輪の性技の虜となっていきました。また、花輪の助手である小森(石井竜一)が、彼女と花輪の睦事に刺激され、彼にまで犯されてしまいます。一方豊男も、香芽子の株の買い占めを手伝うようになり、益々夫婦の溝が深まっていきます。そんな最中、里枝と香芽子の所有していた株が暴落し、花輪も薬の使いすぎで急死するのですが・・・。

 

本作は日本には珍しい艶笑劇。得てして日本では、道徳やモラルが邪魔をして、弾けた浮気話が作りにくいですが、この作品では主婦が浮気に然程罪悪感を抱かずに行動するところが嬉しくなります。尤も、夫も浮気をしているので、そこはお互い様。ヒロインは株の才能があり、株屋の朋子としばしば男を株の銘柄に見立てた会話が交わされ、聴いていて楽しくなってきます。

 

里枝の夫は学校の教師で、堅実だけが取り柄の男。里枝も安全牌であることを気に入っています。ところが、安心と思っていた株が乱高下すればどうなるか?当然価値は下がりますわな。ただし、豊男は結核で長期入院していた経緯があり、医師からしばらくの間夫婦の営みを禁じられ、里枝もそのことを固く守るため、気の毒な面はあります。性欲の捌け口がないことが浮気に走る一因にもなっています。

 

それでも、豊男にはムッツリ助平の面が見受けられ、結核が完治してもいずれ浮気をした可能性が無きにしもあらず(笑)。気弱で流されやすい性格の男は、大瀬康一にハマリ役と言えます。川崎敬三が演じても似合いそう。夫の浮気が発覚してからの里枝の行動は、エマニエル夫人並みにアヴァンチュールを楽しみます。途中、里枝、豊男、里枝の浮気相手・富永が鉢合わせするハプニングがあり、夫も妻の行動を疑い出します。

 

一方、株屋の朋子は里枝と香芽子が顧客であることから、裏事情を把握できる立場にあります。二人のことを知った上で、花輪と里枝とを結びつけるキューピッド役になるのですから、結構な悪女とも思えます。その反面、里枝が浮気を繰り返しながら、あまり悪い印象を持たないのは、演じる筑波久子の可愛らしさもありますが、朋子の存在が毒消しをしているのも大きいです。ある種、艶笑劇の潤滑油の役割を果たしていますね。

 

また、行きつくところまでもつれた夫婦仲を、株で解決するオチも洒落ていて、艶笑劇に相応しい粋なところも見せています。鑑賞中、筑波久子が誰かの雰囲気に似ていると気になっていましたが、観終わってから、若い頃の濱田マリ(モダンチョキチョキズ)だったことに気づきました(笑)。