「ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ」「人類遺産」を観て | パンクフロイドのブログ

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ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ 公式サイト

 

 

チラシより

2011年、連邦下院議員だったアンソニー・ウィーナーの人気は凄まじいものだった。若くハンサムなルックスに鋭く明快なトークスキルは多くの有権者に支持され、7期連続当選という輝かしい実績を誇り、長年、ヒラリー・クリントンの右腕を務める才色兼備の妻フーマと並ぶ姿はまさに「理想のカップル」そのもので、オバマ大統領に続く民主党の若手として注目される存在だった。そんなある日、ウィーナーは誤ってツイッターに自らの「ブリーフ一枚の下半身写真」をポストしてしまう。なんと彼には、女性と性的なメッセージや画像を送り合う〝セクスティング〟という隠された性癖があったのだ!彼の性スキャンダルは瞬く間に全米に知られ、泣く泣く議員を辞職するはめに。しかし二年後、ウィーナーは再起を賭けてニューヨーク市長選に立候補する。「もう一度、チャンスを与えてほしい」と訴える真摯な姿勢は人々の心を動かし、アッという間に支持率トップに!と、思った矢先、またしても新たなる疑惑が持ち上がる……。

 

製作:アメリカ

監督:ジョシュ・クリーグマン エリース・スタインバーグ

撮影:ジョシュ・クリーグマン

音楽:ジェフ・ビール

出演:アンソニー・ウィーナー フーマ・アベディン ヒラリー・クリントン ドナルド・トランプ

        ビル・クリントン バラク・オバマ カルロス・デンジャー シドニー・レザー

2017年2月18日公開

 

選挙がらみのドキュメンタリーで言えば、川崎市議会の補欠選挙に立候補した山内和彦を取材・撮影した想田和弘監督の「選挙」が思い浮かびます。「選挙」では異業種の人材が選挙に立候補したことで、一般人の常識と議員の常識の感覚のズレに面白さがありましたが、本作をザックリ言うと“懲りないバカ”を描いています。特に当初製作者側が予期していなかったことが撮影中に起きたことにより、ぐいぐい楽しくなっていきます。

 

ただし、ウィーナーの馬鹿馬鹿しい言動は憎めないところがあり、同じ民主党議員でも、クリントン財団を通して金を集める狡猾なヒラリー・クリントンよりも人間臭さがあります。ヒラリー絡みで言えば、昨年の大統領選挙の際に、ヒラリーの選対副本部長を務めていたフーマ・アベディンが、ウィーナーの元妻だった関係から、ウィーナーがツイッターに露出写真を挙げる事件の捜査に絡んで、フーマのメールも捜査対象になった結果、ヒラリー・クリントンのメール問題が発覚した経緯がありました。

 

ウィーナーの奇行を紹介する一方で、映画は彼の一挙手一投足を報じるメディア側にも問題があることを仄めかしています。彼の掲げる選挙公約よりも、瑣末なスキャンダルで揚げ足をとるやり方は、有権者が本当に知りたい情報を伝えていません。テレビの視聴率の数字をとりたい、新聞を売りたいという、さもしい根性が透けて見えます。

 

これは大統領選挙中や大統領就任後も、執拗にトランプを批難するCNNやニューヨークタイムズも同様ですね。確かにトランプは基本的には今までの秩序を覆す破壊者であり、トンデモ発言が目立ちもしますが、ポリティカル・コレクトネスの行き過ぎによって声に出せなかった人々の意見を汲み取ってもいます。一方、彼を攻撃するメディアは自分たちこそ正しいという驕りから来ており、そんな傲慢な態度に嫌気が差したアメリカ国民が、トランプに一票を投じた要因のひとつに思えてきます。

 

日本のメディアの報道も相当酷いですが、最近のトランプ叩きや本作を観ると、アメリカのメディアも日本とさして違いはないと分かり、ホッとするやらガッカリするやら・・・。“懲りないバカ”はウィーナーだけではないようですね。

 

 

人類遺産 公式サイト

 

 

チラシより

記録的なロングランヒットとなった『いのちの食べかた』(07)で一切のナレーション・音楽を排し「食糧」の生産現場を見せ、『眠れぬ夜の仕事図鑑』(12)では世界の「夜に活動する人々」に焦点を当て、美しい映像のなかにも痛烈な社会批判や、現代社会に警鐘を鳴らすメッセージが込められた作品を撮り続けるゲイハルター監督。彼がこの最新作で切り撮るのは、かつて人間の手によって作られ、利用され、やがて人間の都合で放置され、朽ちゆく世界の“廃墟”だ。これまで通り何の説明もいらない圧倒的な映像美のなか、本作ではついに人物すら登場しない究極の世界観を創り上げている。約30年前の大雨で湖底に水没し、近年の干ばつによって奇跡的にその全貌を現わしたヴィラ・エペクエン(アルゼンチン)の町並み。アメリカ・ニュージャージー州の海上遊園地を襲ったハリケーンにより、海へと崩落した巨大なローラーコースター。そして、日本の高度成長期を支え、最盛期には5000人以上が生活していた炭鉱の島・端島(軍艦島)の鉄骨アパートの部屋では、時を止めたカレンダーが風に揺れている―。誰もいない廃墟の風景に、まるでその場にいるかのような臨場感と不思議な生命力さえも感じさせられる。私たちが見ている光景は過去の産物なのか? それともこれが未来の世界なのか? そもそも人類がこの地球に存在する意味とは何なのか? “棄てられた風景”が、今静かに語りかけてくる―。

 

製作:オーストリア ドイツ スイス

監督・撮影:ニコラウス・ゲイハルター

2017年3月4日公開

 

一口に廃墟と言っても、長い風雨に曝され朽ち果てた建造物もあれば、福島の立ち入り禁止区域のように、予期せぬ災害で見た目には損傷がなくとも放置された建造物もあり、一括りにはできません。この映画で紹介される廃墟も様々で、時には美しさすら感じさせるものもあります。海に浸かるローラーコースターなどは、シュールな世界を築いており、それ自体がアートであるかのようにも映ります。

 

このドキュメンタリーにはナレーションや音楽はなく、人間すら登場しません。僅かに虫の羽音や鳥のさえずりによって、生き物の存在が認められるのみ。それぞれの廃墟の背景や情報に関しての説明は一切なく、ニコラウス・ゲイハルター監督の「どのように受け取ってもいいですよ」という姿勢が、逆に観る側にとっては試されているようで怖いです(笑)。