良くできたミュージカルだけど・・・「ラ・ラ・ランド」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラ・ラ・ランド 公式サイト

 

 

公開初日に鑑賞したにも関わらず、記事にするタイミングを逸し

その結果この時期まで先延ばしした形になってしまいました。

 

チラシより

夢追い人が集まる街、L.A.(ロサンゼルス)。映画スタジオのカフェで働くミア(エマ・ストーン)は女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末のバーでピアノを弾くセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会う。彼はいつか自分の店を持ち、本格的なジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合うが、セバスチャンが生活のために加入したバンドが成功したことから何かが狂い始める――。

 

製作:アメリカ

監督・脚本:デイミアン・チャゼル

撮影:リヌス・サンドグレン

美術:デヴィッド・ワスコ

音楽:マリウス・デ・ヴリーズ

出演:ライアン・ゴズリング エマ・ストーン ジョン・レジェンド J・K・シモンズ

2017年2月24日公開

 

冒頭の高速道路の渋滞シーンにおいて、「Another Day of Sun」を歌い踊る人々を、ワンカットの長回しで一発カマしてくれます。話自体はハリウッドミュージカルの王道を行き、取り立てて目新しい点はない代わりに、センスの良さと楽曲の力で物語を牽引しています。ライアン・ゴズリングは代役を使わずに本人が演奏しており、ブロードウェイミュージカルの出演経験のあるエマ・ストーンも吹替えなしで歌っている点は好印象。ロマンティックなラヴストーリーには、なまじ本職の吹替えを使うよりも、経験が浅くても演者が自ら手掛けたほうが自然体で良いというのが私の個人的意見です。

 

デイミアン・チャゼル監督は前作の「セッション」でジャズを取り上げており、本作でもジャズに思い入れのあるミュージシャンを主人公に据えています。ただし、セバスチャンがジャズに関してこだわりがあるのはいいのですが、ロックやソウルをダシにして、ジャズを神聖化するかのような描写は気にかかりました。「セッション」では演奏中のプレイヤー同士の対話が醍醐味であるジャズを、教授の狂気じみた指導法によって、本来のジャズからかけ離れた歪んだ音楽にしていましたが、物語の作劇上必要なものとして受け止めることができました。

 

ところが、本作におけるセバスチャンのジャズ以外の音楽における演奏の態度が不誠実に見えるため、この人物が自分の夢を叶えようが、夢破れようが、正直どうでも良くなってきます。おちゃらけたピアノ演奏でクラブの支配人(J・K・シモンズ)にクビを言い渡されるのは当然ですし、ミアと再会する際のやる気のなさそうなa-haの「Take On Me」の演奏は、a-haのファンでない私もカチンときたし(笑)、キース(ジョン・レジェンド)率いる有名バンドに加入しても浮かない顔をするなど、あんた何様?と問いたくなりました。

 

ミアにしてもカフェのバイトの仕事ぶりに一言言いたくなります。昔サーヴィス業を経験したせいか、お客を待たせるシーンは敏感になっており、ミアが完全にお客のことを忘れていることにハラハラしてしまいました。セバスチャンにしろ、ミアにしろ、例え意に添わぬ仕事だったとしても、やる気のない姿勢には若干腹も立ち、半端な気持ちで次のステップアップに臨めるのかと説教をしたくなりました(笑)。どんなに良くできた映画でも、些細なことが気にかかり、心の底から楽しめなくなる作品がたまにあり、本作がたまたまその条件に当てはまった感じですね。

 

ミュージカルが苦手な私でも、すんなりと作品世界に入り込めた点は大いに買いますし、総体的に見てもミュージカル史に残る映画でしょう。まぁ、世間は概ねこの作品を好意的に評価していますし、観る価値のある作品であることは間違いありません。私の記事はあまり気にせずに劇場に足を運んで大きなスクリーンで観てほしいです。