結構毒を持つ 「ピッチ・パーフェクト」を観て | パンクフロイドのブログ

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ピッチ・パーフェクト

ピッチ・パーフェクト

チラシより
音楽プロデューサーになるのが夢のベッカ(アナ・ケンドリック)は、親の勧めで嫌々ながらも大学へ入学。そこでひょんなことからアカペラの世界に出会う。最初はダサいと思っていたが、活動を続けるうちに徐々にその魅力に気づき始める。ガールズアカペラ部で苦手なタイプと思っていた風変わりなメンバーたちとは、時に衝突しながらも次第にお互い自分をさらけ出せる女子の友情が芽生え始め、信じられないくらいに素敵なハーモニーを生み出せるように!果たして、ベッカと仲間たちは競争激しい大学アカペラ界の頂点を目指せるのか!彼女たちの挑戦が今始まる!


製作:アメリカ
製作年:2012年
監督:ジェイソン・ムーア
脚本:カイ・キャノン
原作:ミッキー・ラプキン
撮影:ジュリオ・マカット
美術:バリー・ロビンソン
音楽:クリストフ・ベック マーク・キリアン
出演:アナ・ケンドリック レベル・ウィルソン アンナ・キャンプ
   ブリタニー・スノー スカイラー・アスティン
2015年5月29日公開

ベッカを始めとする大学生の成長物語であり、異なる資質を持つ者とのつき合い方、挫折にめげずに再挑戦するという点が強く出ています。殊に再挑戦という点では、コンテンストで失態を演じたオーブリー(アンナ・キャンプ)のみならず、表舞台から消えたかに見えたジェシー(スカイラー・アスティン)の友人が復活するあたりも琴線を刺激します。


もちろん、アナ・ケンドリックの歌、アカペラ・グループのパフォーマンスも見どころで、ラップ抜きでは成立しないほど、アカペラの世界にもヒップホップが浸透していることを感じさせられます。リーダーのオーブリーはあくまでも伝統のスタイルを重んじ、頑なに新しい手法を取り入れるのを拒むのですが、70年代や80年代の洋楽ばかり聴き、現在の洋楽についていけてない私も、実は彼女のことを笑えません

また、同胞とばかりくっつく韓国人学生を揶揄する描写や、コンテストの模様を実況する解説者2人の毒舌ぶり、2度も盛大にゲロを撒き散らすなど、青春映画でありながら毒のあるところが目立つ点も気に入りました。年内に公開が予定される2作目も是非観たいです


歌のしりとり合戦 The Riff Off




スライ・ストーン

スライ・ストーン

チラシより
ファンク・ロック・バンド“スライ&ザ・ファミリー・ストーン”率いるミュージシャン、スライ・ストーン。バンドは60年代後半に登場するや瞬く間に音楽界最大級のビッグネームに君臨するも、75年に突如解散。その後スライは長年消息不明状態であった。そんな彼を20年間以上追いかけ、執念の取材を続けたオランダ人ドキュメンタリスト・ウィレム・アルケマ。生い立ちから、華々しい成功と挫折、友情と裏切り、争い、そして2015年の勝訴に至るまで。これまでベールに包まれていたスライの波乱の半生が、ここに明かされる


製作:オランダ
監督:ウィレム・アルケマ
出演:スライ・ストーン ウィレム・アルケマ アルノ&エドウィン・コニングス兄弟
   フランク・アレラノ ジェリー・マルティーニ グレッグ・エリコ
   ジョージ・クリントン ナイル・ロジャース
2015年5月16日公開

60年代末から70年代初頭にかけて、ジミ・ヘンドリックスがロックに革命をもたらす一方で、スライ・ストーンはソウル界において新たな時代の息吹を感じさせていました。映画「ウッドストック」のステージでは、そんな二人のパフォーマーとしての姿をよく捉えています。本作はスライ・ストーンのミュージシャンとしてのキャリアを辿りながら、彼が世捨て人のような暮らしをする現在に至るまでの半生を描いています


作り手はスライにインタビューをするために、まず彼の居所を探るところから始めなければなりません。スライの所有していたオートバイが売りに出された情報を得ると、売買した書類から住所を突きとめることだけはできます。ただし、彼はメディアから大金を積まれてもインタビューに応じないこともあったため、スライのコレクターであるオランダ人の双子の兄弟から情報を得る一方で、スライのバンドのメンバーだったミュージシャンや関係者に会い、外濠を埋めていきます

スライが表舞台から姿を消した原因は、スライの音楽を戦闘的にしてブラックパワーの旗頭にしたいブラックパンサーなどの黒人解放運動家からの圧力や、バンドのメンバーとの確執によってバンドを解散したことも大きいですが、もっと売れ行きを伸ばしたいレコード会社からの圧力も加わり、様々な要因が絡み合ってスライを疲弊させたと思われます

スライはバンドを解散し、ソロ活動を行なうものの、音楽にかつての勢いはなく、80年代にマネージャーと楽曲の権利を譲る代わりに一定額の給与と経費を支払い続ける契約を結びます。ところが、マネージャーに権利を奪われたまま、給与と経費は支払われず、収入減を失ったスライは、一時ホームレスの生活を余儀なくされます

ただし、インタビューを見る限りでは、マネージャーの裏切りに遭ったことに激しい怒りは持っていても、音楽ビジネスに距離を置いたことに対して、然程失望しているようには思えませんでした。1971年発表のスライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバム『暴動』に収録されている「Runnin’ Away」の歌詞は、気の向くままに音楽活動をする現在のスライの心境を先取りしていたように思えてきます




スライ&ザ・ファミリー・ストーン Runnin’ Away