高校に入学したチャーリー(ローガン・ラーマン)は、誰からも相手にされず孤独な日々を送っていた。ある日、チャーリーはフットボールの観戦中に、同じ授業を選択しているパトリック(エズラ・ミラ)に思い切って声をかける。彼は気さくな性格で、後からやって来た義妹のサム(エマ・ワトソン)を紹介し、チャーリーは打ち解ける。やがて、二人の友人であるメアリー・エリザベス(メイ・ホイットマン)やアリス(エリン・ウィルヘルミ)とも知り合い、チャーリーの灰色の高校生活は色づき始める。チャーリーはサムを好きになるものの、成り行きからメアリーと交際を始める。しかし、彼は皆のいる前で彼女に恥をかかせたため、総スカンを食らってしまう。
製作:アメリカ
監督・脚本・原作:スティーブン・チョボスキー
撮影:アンドリュー・ダン
美術:インバル・ワインバーグ
音楽:マイケル・ブルック
出演:ローガン・ラーマン エマ・ワトソン エズラ・ミラー メイ・ホイットマン
ケイト・ウォルシュ ディラン・マクダーモット メラニー・リンスキー
ポール・ラッド
2013年11月22日公開
チャーリーは高校生活が始まったものの、友人を一人も作れずにいました。国語教師のアンダーソン先生(ポール・ラッド)だけが彼のことを気にかけて、課題図書の「アラバマ物語」の他に、「ウォールデン 森の生活」「路上 オン・ザ・ロード」「華麗なるギャツビー」を貸してくれています。
ある日、チャーリーは学校のアメフトの試合を観に行き、上級生で同じ工作の授業を選択しているパトリックに思い切って声をかけます。エキセントリックな性格ながら、パトリックはチャーリーに気さくに接してきます。そして試合後も、遅れて来た義妹のサムと一緒に音楽の話題で盛り上がります。
卒業生歓迎会の夜、チャーリーは相変わらず一人ぼっちで佇んでいましたが、サムとパトリックがフロアの中心で踊り出し、やがてチャーリーも加わり“壁の花”から卒業します。サムとパトリックの紹介で、チャーリーは仏教徒でパンクファッションのメアリー・エリザベス、裕福な家庭ながらジーンズの万引きを趣味にしているアリスとも知り合い、高校での自分の居場所が見つかり出します。アンダーソン先生の個人指導を受け、サムの大学受験の手伝いをするなど、高校生活も充実してきます。
やがて、クリスマスの季節がやってきました。クリスマスはチャーリーが幼い子供の頃、大好きだったヘレンおばさんが事故死した嫌な記憶があり、毎年その時期が近づくと憂鬱な気分になります。しかし、今年は仲間たちと過ごすことができ、いつもとは違うクリスマスになります。チャーリーはパトリックからはおしゃれなスーツを贈られ、サムからは作家志望の彼のためにタイプライターが贈られます。そして、秘かに好意を抱いていたサムとのファーストキスも果たします。
しかし、サムにはクレイグ(リース・トンプソン)という恋人がおり、チャーリーはサムと恋人の関係にはなれずにいました。誰にでも好かれる性格の美女ながら男を見る目がなく、常に恋愛に苦しんでいるサムを、チャーリーは一歩踏み出す勇気がないばかりに、彼女を助けてあげることはできずにいます。その結果、音楽の趣味も合わず、恋人を拘束したがるメアリー・エリザベスと、成り行きで関係を持ってしまうのです。
チャーリーはアンダーソン先生にふたつの質問をします。
チャーリー「なぜ、やさしい人たちは間違った相手とデートを?」
先生「自分に見合う相手と思うからだ」
チャーリー「本人の価値を教えるには?」
先生「試せばいい」
サムはひとつめの答えがわからずもがき、チャーリーはふたつめの答えを実行できずに苦しみます。そして、チャーリーが不用意な行動を取ったために、せっかく良い関係を築いてきた友人たちから距離を置かれてしまいます。
子供から大人に移行する端境期に、自分の問題を抱えた高校生たちが、苦しみや葛藤に苛まされながら、成長していく物語です。老若男女問わず相手の懐に一歩踏み込む勇気はなかなか難しいです。チャーリーはサムに恋心を抱きながらも、その一歩が踏み出せずに傍観者の立場を取るしかありません。また、メアリーに対してもつき合う気がないにも関わらず、相手が傷つくのを怖れた結果、最悪の事態を迎えてしまいます。
しかし、一歩踏み出すことによって、事態が好転することもあります。チャーリーがパトリックに声をかけたことにより、かけがえのない友人を得られましたし、フットボール部の連中にパトリックがやられているところに、チャーリーが介入したことにより周囲の彼を見る目も違ってきます。そして、ヘレンおばさんと交わした“秘密”と向き合うことによって、始終悩まされていた幻覚症状からも解放されるのです。
主演のローガン・ラーマンは「3時10分、決断のとき」しか観ていません。この映画では孤独と不安を抱える繊細な高校生を巧みに演じていました。エマ・ワトソンは「ハリポタ」シリーズのハーマイオニー役で有名ですが、幸い?このシリーズは一作しか観ていません。私の中で色がついていない分、ショートカットの彼女に胸キュンでした。エズラ・ミラーは「少年は残酷な弓を射る」での邪悪な少年が強烈な印象が残っています。本作では真逆の性格で、おどけながらも相手を思いやる兄貴役で好印象を与えています。
自分の好きな曲を編集したカセットテープを、好きな女の子に贈る思春期の行為は甘酸っぱさが全開。劇中にはデヴィッド・ボウイの「 Heroes 」 を始め、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「 Come On Eileen 」 、ザ・スミスの「 Asleep 」 、ニューオーダーの「 Temptation 」 、ソニック・ユースの「 Teen Age Riot 」 などが流れ、物語を盛り上げていきます。
小さな疵や軽いツッコミどころはありますが、チャーリーのように疎外感を味わった人は、自分に置き換えてこの映画が好きになると思います。ちなみに私は結構気に入っています。