旬の天地真理が見られる 「愛ってなんだろ」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷 【昭和の銀幕に輝くヒロイン 特別篇 天地真理】 より


浅見麻里子(天地真理)は、おもちゃメーカーのデザイナーで、会社のフォークグループでリードヴォーカルもしている。専務の息子の青木(小松政夫)がしつこく麻里子を誘うが、麻里子は企画部に新しく入社した河内俊二(森田健作)に好意を抱いていた。俊二と麻里子は新製品の人形の売り出しに向けて仕事を進めて行くものの、俊二の人形のイメージが麻里子のデザインと異なるため二人は衝突する。やがて麻里子は地蔵からヒントを得て、ようやくデザインが俊二に気に入られる。しかし、二人の進めてきた企画は、途中で新しい企画に変更されてしまう。



パンクフロイドのブログ-愛ってなんだろ


製作:松竹 渡辺プロ

配給:松竹

監督:広瀬襄

脚本:田波靖男

撮影:高羽哲夫

美術:重田重盛

音楽:竜崎孝路

出演:天地真理 森田健作 小鹿ミキ 尾藤イサオ 小松政夫 賀原夏子

    井上順 田中邦衛 谷啓 佐藤蛾次郎 レッツゴー三匹

197352日公開


オープニングタイトルから天地真理が「ふたりの日曜日」を歌い、アイドル歌謡映画らしさを見せていきます。ちなみにこの曲のアコースティックヴァージョンは初めて聴きました。


祖母と伯父が経営する洋菓子店の2階に下宿している浅見麻里子は、オモチャ会社でデザイナーをしています。専務の息子の青木から絶えず言い寄られているものの、軽くあしらいながら、職場の女性たちとフォークグループを結成して楽しくやっています。


その会社の企画部にイケメンの河内俊二が入社してきます。女性たちは早速俊二の歓迎会を開き、彼をフォークグループに入れる算段をします。彼女たちは俊二の歌の実力を確かめるため、歓迎会で麻里子がトワ・エ・モアの「ある日、突然」を歌い、引き継ぐ形で俊二に誘い水をかけますが、その曲を聴いた途端、彼は店を飛び出してしまいます。


麻里子の勤めるオモチャ会社は最近ヒット商品が出ていませんでした。新製品開拓会議の席上、俊二は素朴で心のこもったおもちゃを提供することを提案します。その結果、彼が責任者となってプロジェクトを立ち上げ、麻里子はデザインを担当することになります。


麻里子は何度も人形のデザインを提出しますが、悉く俊二に却下されます。具体的な顔のイメージを尋ねても、自分の頭の中にあるイメージは、言葉では伝えられないと無茶苦茶なことを言われます。それは、プロジェクトのリーダーとしてダメでしょ。


ムシャクシャした麻里子は、青木とドライヴに出かけウサを晴らそうとします。ドライヴ中に麻里子は地蔵を目に留め、具体的な人形のイメージが湧き、その場でスケッチを始めます。麻里子は青木を置き去りにして、会社に行って仕上げをしようとして、休日出勤していた俊二と顔を合わせます。彼女は自分のスケッチを見せて、初めて俊二に認めてもらえます。


俊二は麻里子の仕事を労い食事に誘います。彼女はある小料理屋を指定して、俊二と食事に出かけます。麻里子の伯父・才太郎(田中邦衛)は、小料理屋の女将・志津(川口敦子)に熱を上げていて、祖母のりく(賀原夏子)に商店会の会合と偽って通い続けていました。麻里子は俊二と一緒に女将の人柄を見極めようとします。


そこに才太郎が現れ、麻里子は祖母に内緒にする代わりに食事代を奢らせます。その場には才太郎と女将を取り合っている植村(谷啓)もおり、女将が三人の相手をしているのが気に入らず、テレビをつけます。テレビの画面には人気歌手の水野明が映し出されますが、その姿を見た俊二は、またしても店から飛び出してしまうのです。


麻里子は休日に職場仲間や洋菓子店で働く平吉(佐藤蛾次郎)と連れ立って、サイクリングに出かけます。「虹をわたって」が流れる中、一行は楽しく遊びますが、女性の一人が怪我をしてしまい、近くの保育園で応急手当を受けます。そこには何故か俊二がいて、保育園児の世話をしていました。保育園を経営している孝子(小鹿ミキ)との関係は、ここでは説明されずに後日明らかになります。


その頃、オモチャ会社では新製品の企画変更があり、俊二が進めていたプロジェクトが中止となります。俊二は新しい企画を持ち込んだ青木と衝突し、青木はモノの弾みで俊二の過去を暴露してしまいます。俊二はそのことにショックを受けて出社しなくなります。ただ、俊二という人物、自分の歓迎会で席を立ったり、無断欠勤したりと、社会人としてどうかと思う行動が多いです。


ところが捨てる神あれば、拾う神あり。社長が俊二の企画を気に入り、元のプラン通り進められていきます。この会社、大丈夫か(笑)。会社側はパテントの件で俊二と連絡を取ろうとして彼の居場所を探しますが、一向に手掛かりはつかめません。そこで麻里子の同僚の一人が一計を案じて、俊二が麻里子に贈った曲を利用して彼を探し出そうとするのです。


天地真理の人気絶頂期に作られた映画で、彼女の歌も存分に聴け、ファンには堪らない作りになっています。ビートルズ映画で言えば、「HELP!四人はアイドル」よりも「ビートルズがやって来る ヤア!ヤア!ヤア!」に近いです。


ストーリー自体は他愛ないものですが、非常にわかりやすく、俊二の秘密の正体というミステリー要素で話を引っ張っています。田中邦衛、谷啓、佐藤蛾次郎、井上順、レッツゴー三匹が笑いの部分を受け持っており、殊に井上順のテレビのバラエティ番組のアドリブと見紛う、自然なノリで連発するダジャレ芸が楽しめました。


70年代はアイドルの幻想がまだ信じられた時代で、天地真理と森田健作が恋に落ちそうで落ちない展開は、当時のファンの願望に添ったものと言えます。保育園児の誕生会で「ひとりじゃないの」を歌わせる演出は、意地悪な見方をすれば、幼い子供をダシにしてアイドルとして好印象を与えようとするあざとさにも受け取られてしまいそうですが、歌の内容がある人物たちを祝福する点で一致するため、ギリギリセーフと言ったところでしょうか。旬のアイドルの輝きを記録した映画として、記憶される映画です。