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花は季節を教えてくれる。

たとえ時計やカレンダーのない生活を送ったとしても、四季の花が咲く花壇があれば、私は季節を感じ取れる。


たちあおい。


私はこの花で夏の始まりを感じ取る。

梅雨時期の花といえば、なんといっても紫陽花が有名だけど、私はこの花のほうが好き。

この花は梅雨の始まる前にたくさんのつぼみをつけ、梅雨を迎えたころから下から上に向かって

だんだんと花を咲かせていく。


高い背丈、夏を待ちわびるように太陽に近いてっぺんを目指して咲いていくたちあおい。

そしてその花がてっぺんまで上り詰めたとき、

その時が夏の始まり・・・

「あと、八・三三切り捨て時間くらいですよ」

 女の子の人形が分かりにくい言い方で何かの残り時間を示した頃、兎は電話帳程まで膨
らませた手帳をぺらぺらとめくり何かを探していた。
 智鳥はと言えば、 
「なあセリカ、俺達寝ている間に変な所に来たんじゃないか?」
 などと兎の熱気に押され話しかける事もできず、横にいるセリカに問い掛けているし、
当のセリカはどう思っているのか、にゃあと一鳴きしたのみで知らん振りを決め込み、響
はといえば表情はともかく、この状況を楽しんでいるようだった。


彼女のにおい



今日、今年初めて蝉の鳴き声を聞いた。

たしか去年も今頃初めて、聞いたんだった。


昔に比べて季節の移り変わりに鈍感になっている自分。
ちょっと前まではなんとなく色々なところから感じられた夏。
カノジョでない彼女が教えてくれた。
でも今は職場は屋内で帰宅時間も日没後なせいか、もっぱら朝の通勤途中で見る稲穂の成長でしか
季節の流れを感じないようになっていた。

あの夏の終わりに彼女はボクの前から姿を消した。
あの夏を最後に、ボクは彼女の姿を見かけることはなかった。


そろそろ梅雨が明ける。
夏ってやつはその気配を生暖かい雨に隠しながらやってくる。
でもね、アンタ個性強すぎ(笑)
いくら何かで隠そうとしたって、それがアンタのにおいでプンプンにおうよ。
何年経ってもアンタのにおいは嫌いになれないだろうな。
それは私が産まれた季節のにおいだし、彼女のにおいでもあるからね。。。

 兎は人形ごと時計をつかみ取り出すと、少しの間眺め、無造作に胸の裂け目の中に押し
込んだ。それは、ちょうど心臓を取り出し眺めた後、押し込むような感じに見えた。ただ、
心臓の代わりに時計を取り出し、血飛沫のわりに木の屑が床を汚している。
「すいませんが探し物をしているんです。歳は五一七三分で出身はドイツ。体を様々な色
に塗ったコンクリート片で銀製の古い懐中時計を持っています。名前は・・・」
 名前を忘れてしまったのか、兎は懐から一冊の手帳を取り出すと、縁の部分の突起して
いる所に口を当てた。
 次にする事は予想がついた。威張れることでは無いがそれ以外は、考えもつかなかった。
余りにも馬鹿馬鹿しい、アメリカアニメの使い古された手段で、今まさに兎は手帳を本く
らいまで膨らまそうとしていた。
 この滑稽さに精神は刺激され、冷静さが戻ってきた。兎が本の中に空気を入れ始めると
同時に・・・。

「あと、一時間くらいですよ」

 兎の方から女の子の声が聞こえた。
 そこには兎の他に何もいなかった、訳では無い事を思い知らされた。
 兎の胸の中ほど辺りが裂けたかと思うと、そこから懐中時計を持った青い目をした女の
子のお人形さんが、ひょっこりと出てくるのを見たからだった。
 一匹と一瓶はともかく、一人は硬直していた。
 血は出てこなかった。代わりに木の屑がぼろぼろと零れてくる。
 こんな時でも掃除の事を考えてしまうのは、非常識な事態に慣れてしまったせいだろう。
 少なくとも、血飛沫飛び散るスプラッタは智鳥とセリカ、そして多分ではあるが響も好
きではなかった。

去年のこの日、何があったか覚えてる人は少ないと思います。




一年前にことだもんね、覚えてなくて当然。だって、大半の人は3日前の晩に食べたものすら思い出せないんだから。






2004年7月13日、新潟県中越地方で大水害があった日。


三条、中之島、見附、長岡・・・


惨劇が連日ニュースを賑わせました。

大切な人を失った人・・・家を失った人・・・仕事を失った人・・・

当時はそれはそれはひどいものでした。


私の家は幸い(あと1mちょっと川の水位が上がっていたらアウトだった)無傷でしたが、会社の同僚や友人宅が浸水、その惨劇も目にしました。

こういうことがあると、大自然にいい気になっている自分が窘められている気分になります。


去年と同じ日の今日も、またどこかで大量の雨が降っているのだと思うと、人事のようには思えません。




人間も地球上の生き物として、自然には逆らうことはできません。

しかし、人間には他の動物より秀でた知恵と文明があります。

それらで自然に逆らうのではなく、自然の驚異を受け流すことができると思います。




今朝、去年決壊した五十嵐川堤防付近を通り抜けてきましたが、あれから一年経つのに、まだ堤防工事、拡幅工事が行われています。

やはり受け流すといっても相手は自然、そう簡単には行えないのですね・・・・・


 三、不思議の国の法則と海



「御初にお目にかかります。私は『時を刻む兎』と言う者です」
 少し時代掛かったような感じで目の前の大兎が喋った。無論、会釈も忘れてはいない。
 その辺はさっきのコンクリートの破片とどっこいどっこいであったが、こちらには取り
合えず名前があるらしい。
 それにしても愛称でないとしたら、センスとしてはなかなか『切れてる』所がある。
 兎は部屋の中の方に興味があるらしく、失礼と言いながらそのままもそもそと入ってき
た。
 少なくともこの狭い廊下で『兎…の縫いぐるみ』、さらには『その口と手から出ている
歯と爪…鋼の輝きを持った』と、擦れ違いたくないと思っているであろう智鳥を、インパ
クトで押し戻した。

「何のようだ ここは何もない部屋だ・・・・・多分・・・」
 勇気の一片を振り絞って兎に言い放つ。最後で少し弱気になったのは、今までの不可解
な出来事を見てきたからだった。あんな事があった後なので、驚くなどと言う神経は麻痺
してしまったが、ついでに常識に対する自信も麻痺してしまったようだった。
<無職の若者「焦っていない」4割超>

 内閣府は30日、「青少年の社会的自立に関する意識調査」の結果を発表した。無職の青少年の4割超が「焦っていない」とする一方、7割近くは親の「働いた方が良い」という厳しい視線を感じていることがわかった。
 調査は1、2月、15~29歳の青少年とその親7500人ずつを対象に実施した。回答率は54・5%。
 青少年では、回答者の4・0%(162人)が無職だった。このうち、41・4%は「求職活動中」だったが、「ニート」と見られる「特に何もしていない」人も18・5%いた。
 無職の人のうち、働いた経験のある人に離職理由を聞いたところ、「仕事が合わない、つまらない」が27・4%、「人間関係が良くない」が21・2%だった。
 無職の状態を「焦っている」人は54・3%だったが、「焦っていない」も42・0%いた。69・8%が「親から働いた方が良いと思われている」と答えた。
 内閣府は調査結果に合わせ、若者の自立支援策をまとめた報告書を公表した。〈1〉若者や親の相談窓口「ユースサポートセンター」設置〈2〉関係支援機関のネットワーク化〈3〉若者を継続支援するユースアドバイザーの養成――などを掲げている。



[記事]:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050630-00000015-yom-pol
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 私達がまだ若い頃、ちょっと年を食ったオッサンやジーサンに、
「最近の若いモンは・・・」
と、よく言われたものだ。

 戦後の日本はアメリカの庇護の元、まれに見る復興と成長を遂げた。
 その成長の中で、凝り固まった一つの考えだけではなく、多種多様な考えや生き方が尊重される国にへと変貌も遂げた。
 だから成長をしていく段階で、そういう多種多様な考えや生き方が尊重される環境になかった者から見れば、それは受け容れ難いものであり、かつ、自分が育ってきたときの環境に思いをはせ、つい「最近の若いモンは・・・」と発してしまうのも頷ける。
 だが敢えて言いたいのだが、何もかも自由や平等という名の元で多様化された考えが良いとは言い切れないのではないだろうか?
 かといって、古き亡者に取り憑かれたような一意的な考えが全て正しいとも、私は思わない。
 何が良くて何が正しくて、何が悪くて何が間違っているのか、それは生い茂った枝葉に目を捕らわれやすいもの。それ故、非常に判断を誤りやすいのだが、根の部分では何ら変わらない。それは不変なものなのである。

 『労働』

 それはどういう形にせよ、未来を築くためには必要なものだと、私は考える。
 先人(当然そこには自分の両親も含まれる)が未来を思い描き、築き上げてきたものが今我々の目前に広がっている『現在』というものなのであって、先人が負ったもの、つまり後に続く者が見るための『今(現在)』を、我々は思い描き、築かねばならない。これは「義務」だ。
 そう考えたとき、我々の人生は我々だけのものではなく、これから続いていくであろう後身達のためでもあるのだ。
 だから我々の考えや都合だけで、未来を思い描くことを止めてはならない、そう私は思うのである。
「それでは、ごきげんよう」
「おきをつけて」
「みゃあああ」
「・・・・・・・・・・」
 四者四様であいさつを交わすと和やかな雰囲気のまま冷蔵庫の扉がしまった。扉の向こ
うに消えたジャーマンの表情が気になる。
 一人だけ沈黙していたのはこの部屋の主人で、冷蔵庫の中にあった一週間分の買い置き
がきれいさっぱり無くなっているのを知ったからだった。代わりにそこには黄色いレンガ
の道が・・・・・。
「・・・・・」
 無言で部屋に引き返す智鳥を響が見咎めた。
 どうしたんですか、との問いに朝からためた不機嫌で応え、そのままヘルメットを抱え、
出かけようと玄関へ向かう。黄色いレンガの道についてはあえて言及を避けている。
 靴を履こうした手が不意に止まる。目の前の扉を叩いている者がいるのだ。
「まともな客かな」
「にゃあ」
 一緒に出かけるつもりでついてきたセリカが応え、さらについてきた響が感想を述べよ
うとしたとき、扉の鍵が弾き飛ばされた。次いでミシッ、とチェーンが引きちぎられる。
 そこに立っていたのは身長二〇〇センチメートル程の兎。それもどう見てもキャロルの
小説に出てくる、『大きな懐中時計を持った兎』にしか見えない。
 そいつは一同を見渡し、智鳥に視線を合わせて、にやり、と微笑んだ。悪魔の微笑みで。





                    二、途中の風景・・・かな --- 了

 玄関、否トイレの方から響と中年男性の声が聞こえる。声だけで判断するなら案外まと
もな人かもしれない。
もっとも響の姿を見て、なんのリアクションも示さない人物が、まともだとは思えないが。
 やがて響に連れられて来たのは、派手なボディペイントをしたコンクリート片だった。
コンクリート自身の色具合、そして針金の先に付いた値札があるところを見ると、出身は
ドイツのベルリンらしい。


「やあ、突然お邪魔します」
 コンクリート片は、黒いシルクハットを短い手で器用に挙げて見せ、続けて名前を、と
言うところで詰まってしまった。察するにまだ名前が無いらしい。
「とりあえず、ジャーマンでどうです?」
「そうですね」
 どうやら話は通じたらしい。
 智鳥は要件を聞こうとしたが、ジャーマン(仮)は手で智鳥の発言を抑えた。急いでい
るのか、しきりに古時計を気にしていた。
「みゃあ」
「お急ぎですか?」
「ええ、ちょっと・・・ すみません。急いでるものですから」
 言葉の前半はセリカへの応えで、後半は智鳥に言ったものである。あんまり長居したく
ないらしい。が、その割に声はのんびりしている。
 コンクリート片は智鳥と響に頭を下げると立ち上がって出ていこうとした。響が先にな
って歩き、玄関に行くかと思いきや、着いたところは冷蔵庫の前であった。
 そこが出口か、この分だと玄関はどこへ続いているのやら。