レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -861ページ目

日々是好日

遙か昔、僕は怠惰な学生生活を送っていた。

ある日、悪友が一冊の文庫本をくれた。

五木寛之「青春の門」だった。

暇をもてあましていた僕は、目の前にボールを投げ与えられた犬のように、その本に飛びついてしまった。

「青春の門」・・・
飛び出せ青春(言うても知らん方のほうが多いか)のような熱血だぜ、爽やかだぜ、というものは全くない。

複雑に入り組んだ迷路をさまよっている様な感じだ。

ちょっと読むの、しんどいかも・・・でもこのままじゃ、僕は永遠に迷路から抜け出せない。

1冊読み終わって、悪友に「あの本の続きは?」と聞くと

あっさり「ないよ」と。

ゲッ!やられた。気づくのが遅かった。もう先は読めている。

当時、僕は書店でアルバイトをしていたので、コツコツ全巻買い揃えることになる。

待っていましたとばかりに、悪友が、その本を借りに来る。

案の定、その展開になった。

まあそれはそれとして、そのあと「青年は荒野を目指す」を読んだ。

読み終えても、悶々とした気持ちは消えなかった。

僕は、まだ迷路の中にいる。

五木さんの作品は、当時の自分にはどうもずしっと重かった。

それ以来、五木さんの作品には手をださなかった。

それから随分たって1冊だけ、エッセイを読んだ。

タイトルは忘れてしまったけど、印象に残っている箇所がある。

そこには、「何をやっても気が晴れない時期があった」というような文章があり

「毎日、どんなささいな事でもいいから、良い出来事を探し出して、それに感謝しよう

と思った。そういう風に、日々を見つめると、必ず良いことが見つかるものだ。

それを続けているうちに、陰鬱な日々から抜け出している自分があった」

と、いうような内容だった。・・・と思う。

多少、色々なものと混ざってしまっているかもしれないけど、大筋ではそんな所だ。

そのエッセイのお陰で、僕はあの迷路の出口を見つけたような気がした。

人というのは不思議なものだねえ。

青春の門とそのエッセイは何の脈絡もないのに、ふとしたことが人の心に響くことってあるんだねえ。

今日のオールディーズ・バット・グッディーズ
青年は荒野をめざす フォーククルセイダーズ