レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -446ページ目

踊る警官

夕刻、小腹が減ったので店の近くのコンビニに買い物に行った。

店の前には店長がタバコをくわえながら、立っていた。

僕が店のドアに向かうのとかちあうように、

バイクに乗った警官がやってきた。

警官はかっぷくがよく、まるで三輪車に跨っているかのようにみえた。

僕が店に入って間もなく先程の警官が体をゆすり踊るように入ってきた。

そのあとに続いて店長も入ってきた。

僕は、おおっ~、事件かと、小さく呟いた。

警官は、店長に話を聞くでもなく、勢い店内を物色し始めた。

何が起こっているのだろう?

バックヤードではすでに他の警官が犯人を確保しているのだろうか?

僕の目は360度カメラのように、かっぷくのよい警官の行動をとらえた。

今、左手に何か持った。

おっと、買い物カゴだ。

えっ? 買い物カゴで何をするのか?

何かのカモフラージュか?

府警の白ヘルメットを被ったまま、

買い物カゴを持つのはどこかおかしい。

背を向けると「大阪府警」と文字がある。

右手が何かを掴んだ。

『焼そばUFOビッグ』だ。

次はなんと『どん兵衛きつねうどん』だ。

コーナーを曲がり、パンの棚に行った。

後ろを振り返り、ニンマリした。

しかし、ニヒルさに欠ける。

おっ、サンドイッチをわしづかみにして、カゴに放り込んだ。

『新鮮シャキシャキレタス』とみた。

健康にも気をつけているという示唆なのだろうか。

さてレジに向かうのか?

いや、違う。カップの味噌汁を買うようだ。

『1杯でしじみ70個分』というのを選んだようだ。

警官は満足げにレジに向かった。

スタッフが、「お箸はどうしましょう?」と。

「一本、下さい」と、ぼそぼそっと警官が言う。

一体この警官、どれだけ食べるのだろう。

いやいや、違う。事件はどうなった?

いいのかこんな展開で??

ハラハラドキドキで僕が活躍する場面はないのか?

それよりも、警官ならヘルメット着用のまま、

店内に入っても注意されないのだろうか?

腰には思いっきり凶器もぶらさげている。

天才バカボンの『本官』さんのようなキャラだったらどうするのか?

買い物に、公用のバイクで乗りつけてもよいのだろうか?

恐らくは自腹を満たす為の食料品調達は公務なのだろうか?

たくさんの疑問を残したまま、警官は踊るようにコンビニをあとにした。

何にしても、僕はこれほど違和感のある買い物客を目にした事がない。

いけねえ、思わずそのまま店を出てしまう所だった。


ペタしてね