レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -329ページ目

高野悦子が生きた時代~平和がいいんだよ!スピンオフ編

重たく長い内容だ。

時間のない方はスルーして下され。


湿気を含んだ雲は重く垂れ込め、

それは鉛のように僕の心の底に沈澱していった。

せわしないセミの鳴き声だけが耳に残る。

こんな押し潰されそうな空模様でもセミは鳴く。

きっと彼らには、そんなに時間が残されていないという事が分かっているのだ。


夏の空はどこまでも高く、もくもくと湧き上がる雲はどこまでも白い。

少年は大空を見上げる。

その瞳はキラキラと輝き、夢と希望に溢れている。

かつては、誰もがそんな瞳を持っていたはずなのに・・・

そんな事を思うのは、今朝がた見た夢のせいなのだろう。

重苦しい夢だった。

僕はパソコンのディスプレイを食い入るようにみている。

そして、ディスプレイに向かい静かに言った。

「僕は、出口のないトンネルには入らない」

「時として人というのは、掘ってはいけないトンネルを掘り、

入ってはいけないトンネルに入るものよ」

ディスプレイの向こうの女性が言った。

僕は溜め息をついた。

「僕は掘ってはいけないトンネルを掘っているのか」

「私のようにね」

目が覚めたが、すぐにうとうととする。

また、同じ問答が繰り返される。

何度目かで、僕はタオルケットをはねのけ顔を洗いに行った。

声の主は恐らく高野悦子。

勿論、会った事もなければ、声を聞いた事もない。

知っているのは「二十歳の原点」に収められている顔写真だけ。

そこには穏やかな笑みを浮かべた女性が写っている。

彼女を思い起こしたのは何気なくつけた深夜テレビのせいだろう。

そこには新安保条約やベトナム戦争反対運動の様子が映し出されていた。

かつて学生運動が、大きなうねりとなった時代があった。

1960~70年代あたりの事だ。

それらは、政治と絡み合って、日々泥沼化していく感があった。

どのような活動でも、意思統一は難しい。

やがて、いくつかの力のベクトルが生じ、

それぞれが勝手な方向に走り出す。

日本を席巻した学生運動もそうだった。

彼らと同時代に生まれていたら、

僕もヘルメットを被り、ゲバ棒を片手にしていたのだろうか?

彼らの思想運動の是非は別にして、

彼らは本気で政治に抗議し、よりよい日本を作ろうとしていた。・・・と、思う。

そんな時代に我が身を置き、力なき自分に絶望した高野悦子。

結局、彼女は自死という道を選ぶ。

彼女の死後、何冊かのノートが見つかった。

それらをまとめたものの一つが「二十歳の原点」として、出版された。

僕が最初に「二十歳の原点」を読んだのは、

社会に出て間もない頃だったと思う。




二十歳の原点 (新潮文庫)/新潮社

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面白くも何ともない内容だった。

大体、なぜ彼女が、なぜそんなに行き詰まらなくちゃいけないのか

僕にはとんと理解できなかった。

そして、その後その本を何度か読み返すなんて思ってもみなかった。

何が彼女を自死へと追いやったのか?

精神を病んだと言ってしまえばそれまでだ。

サラリーマン時代、かつて大学闘争に没頭した上司がいた。

上司はそれについて多くを語らなかった。

彼らは何かに憑かれたかのように、

ヘルメットを被りゲバ棒を持ち、

時には大学を封鎖し、機動隊とぶつかり、

大きな人身事故(と言っていいのか?)を起こした。

一時、学生運動は高校にまで飛び火した。

大阪では、僕が通わんとしていた高校などはその先頭だったかも知れない。

勿論、僕が高校を受験する年代には、そんな痕跡はみじんもなかった。
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学生運動について書き出すと長くつまらなくなる。

もう充分つまらないか。
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ただ、当時若者は本気で日本を、政治を変えようとしていた。

やり方の是非は兎も角、今の我々にこれだけのエネルギーがあるだろうか?

政治にもの申し、行動をおこす覚悟があるだろうか?

それだけの強い信念をもって政治に抗議し続けられるだろうか?



「二十歳の原点」は今でも読み返す。

なぜだか、自分でも分からない。

そして、毎回思う。

人というのは、あまり掘り下げて考えちゃいけない領域があるんだ・・・と。


純粋な人間ほど、傷だらけになりながらでも自分を掘り下げて行く。

どんどん掘り下げ、何処にもたどり着けない自分を責める。

そして、自分の力では這い上がれない深みにはまってしまう。

僕は高野悦子という若き命に語りかけてみたかった。

恐らく、僕は彼女に惹かれ続けているのだ。



とりとめのない事を書いてしまった。

つまらない長文にお付き合い下さった方、

酔っぱらいの戯れ言として、流して頂きたい。