レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -289ページ目

店をつくっていくということ

ほとんど毎日のように、店に立ち寄ってくださるお得意さんSさん。

Sさんは5年ほど前に会社をご子息に譲られて、

今は気ままに日々を過ごしてらっしゃる。

自由人というか、何ともユニークな方だ。

先日は、陳列している店のソファに腰を掛けていたかと思うと、

ゴロリと横になって暫く天井を眺めてらした。

「この店、天井高いな。それに今時こんな木造の倉庫ないよな」と、Sさんがボソッと言った。

「造りが面白いでしょ」と、僕は言った。

Sさんは天井を見上げたまま続けた。

「なあKenさん。

面白い倉庫やと思うけど、なんでこんな辺鄙な場所に店を出したん?」

「唐突にどうしたんですか?」

「んっ、いつまでもこんな大通りから一歩も二歩も入り込んだところにおったらあかんと思ってな」

いつもになく真面目にSさんが言った。

「前にも言いましたやん。ここは通販用の倉庫として借りましてん。

でもね、造りも面白いし、何か倉庫だけにしておくのは勿体ないと思ったんですよ」

Sさんは体を起こして言った。

「Kenさんよ、それはそれでこの商売をするきっかけとしてはええわな。

ほんでもな、儲けなあかんで。儲けな次に進まれへんで」

僕はドキッとした。Sさんは大きな目をぎょろっとさせて

「勝手気ままなことをしてるだけではあかんで。大通りに出ておいき」と、言った。

場所を選ばない商売などない。

一等地に店を持つにこしたことはない。

それはよく分かっている。

だけど、三等地、四等地だって元気な店舗もある。

それは並大抵な努力ではないだろうけど、

(誤解を恐れずに言うなら)何も神様が導いてくださっているわけではない。

店づくりは、ほんの少しでも手を抜くと

ガラガラと崩れてしまう。

それは一等地でも四等地でも同じだろう。

問題は発想とどこに力を注ぐかだ。

僕はそう思うから、この店は手放さない。

そんな風なことを偉そうにSさんに言うと、

Sさんは少し笑った。そして言った。

「そうか。こんな四等地で待っているだけのやり方はあかんで。自ら動くこっちゃ」

Sさんはご自分の会社が軌道に乗るまで、

いつ寝る時間をとっていたのかというくらい走り回ったと言う。

Sさんからみると僕はまだまだ甘ちゃんなのだ。

でたらめに動いてもダメなんだ。

考えながら動かなくちゃ!