レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -282ページ目

夏の匂い

木曜日は休業日としている。

一応、シャッターは下ろしているが、実際は殆ど何らかの作業をしている。

しかし、昨日は疲れていたのか、昼まで爆睡していた。

それからだるい体を引きずりながら、散髪屋へと向かった。

ご近所さんさんからは、「まめに美容室に行ってるねんね」と言われるが、

多分、2ヶ月に一度くらいしか行かない。

それも美容室ではなく散髪屋だ。

僕は酷くはないが天パである。それが、パーマをあてているようにみえるらしい。

しかし、ある程度髪が伸びだすとピョンピョンはねだす。

まあ男だ。そんなことどうでもいいか。



曇り空で気温は多少ましそうだが、

湿度が高いようで、空気が蜘蛛の巣のように身体にまとわりつく。

道中、あまり人と行き違わない。

散髪屋に行く途中、郵便局に寄ると、ガランとしていて待ち時間もない。

いつも待ち時間を予想し、本を鞄に入れて行くのだが、

これだけシーンとしていると何だか妙な感覚になる。

一歩外にでると、セミだけがけたたましく鳴いている。

彼らの声に追いやられるように散髪屋に入ると

「お~、おひさしぶり。今日は暇ですわ」と。

洗ったばかりの髪を拭きながらマスターが言った。

「水浴びですか」と笑うと

「あまりに暇なんで、相棒に髪を切ってもらってましてん」と。

冷房のガンガン効いた店内。

散髪屋独特のにおい。あれは何のにおいだろう?

ラジオからは昭和40~50年代のフォークソング。

昔から何も変わらない。

扉1枚を隔てて、そこには違った時間が流れている。

散髪が終わっても、ついつい長居してしまう。




散髪屋を出ると、眩しい夏の太陽が照りつけていた。

立ちのぼった陽炎の向こうから、

麦わら帽子や野球帽を被り、捕虫網片手に肩から虫かごを下げた少年たちが

歓声をあげ走り寄って来そうな気がする。

よく見ると、それは少年時代の僕と幼馴染み達。

そんな事を思っていると、急に雷が鳴り出した。

空を見上げると、東の空に怪しい雲が広がっている。

おかしな天気だ。


8/6 15時頃 葛城山方面~左には二上山、右には金剛山がある
夏空




子ども達は「わぁ」と言いながら、

一目散に陽炎の向こうに消えて行った。

年中待っていた夏休み。

一日中駆け回り、笑っていた夏休み。

夕立の中、ずぶぬれになりはしゃいだ夏休み。

幼馴染たちもこの空を見上げているのだろうか?

そして、過ぎ去った日々を懐かしんでいるのだろうか?

「今度、一緒に遊ぼう」と、僕は呟いた。


しばらくすると、雷雲が空を覆った。

それも少しの時間で、気がつくとまた夏空が戻っていた。

夏なんだなあ・・・







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