レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -259ページ目

さびしさ

明け方に二度、同じような夢をみた。

そこには二十歳の僕がいた。

護岸を兼ねて作られた石畳の散歩道を、僕は急ぎ足で歩いている。

隣には見知らぬ女性がいる。

女性は僕の手をとり、時折辺りを窺っては、行く手を確認している。

そして「あなたはここに居るべきじゃない。私についてきて」と、呟くように言う。

女性の年の頃は僕より少し上にみえる。

背丈は僕と同じくらい。女性にしては随分、長身だ。

栗色のショートカットがよく似合っている。

場所は、京都のとある川辺。

川辺からショッピングモールが見え、電車が吸い込まれるように消えて行く。

どうやら女性は、僕をそこに連れて行こうとしている。

途中で手が離れ、僕は人混みに紛れてしまう。

そこで、目が覚めた。

暫くして眠りに落ちた僕はまた同じような夢をみた。

同じ女性が現れ、やはり途中で手が離れ、僕は一人で電車の駅へと向かう。

改札口を探そうとするが、通路や階段が複雑に走っていて、構内にさえ入れない。

場所は、河口に近い川辺。松並木がどこまでも続いている。

阪神間の海に面した町にそんな川辺がある。

夢に出てきたその女性にはどこかで出会っている。

そして、例えようもなく懐かしい。

そんな夢をみたのは、昨夜、高校時代のアルバムを見ていたからなのだろう。

アルバムを引っ張り出してきたのには理由がある。

昨日、高校時代の同窓会の案内ハガキが届いていた。

その案内ハガキをみて、無性に同級生の写真を見たくなった。




今朝、店に出向いてから同窓会の幹事にメールを送り、

ふと思いついて同じクラブにいた友達に電話をした。

友達が「おおお~、めちゃくちゃ久し振り~!元気か~」

と言うので、「何をたいそうな」と言ったが、

以前、連絡をとってからすでに10年も経っている事に気が付き、「確かに」と頷いた。

しばらく話をして友達が「ソフトボール部のMちゃん、覚えてる?」と。

「覚えてるよ。かわいくて、人気者やったな。同窓会に来るかな?」と、僕は期待を込めて言った。

少し間があって「随分前に亡くなったって」と、友達が言った。

「あほな・・・」

「なあ、会える時に会っとかんとあかんで。おいら達、先の方が短いねんで」友達がしみじみと言った。

「分かった。じゃまた、同窓会で」と言って僕は電話を切った。

Mちゃんは日に焼けた肌に栗色のショートカットが印象的で、目鼻立ちのはっきりした美人だった。

少しの事でも白い歯をみせてキャッキャ笑うみんなのアイドルだった。

Mちゃんと言うと、青空の下、グランドを駆け回っている姿が思い起こされる。







今日はMちゃんが亡くなったという言葉が心に突き刺さっている。

何だか無性に寂しくて、口笛を吹きながら通販の処理をしているが、一向に寂しさはおさまらない。

参ったよな。まだ、死ぬには早い。

夢に見た女性はMちゃんなのか?・・・そうかも知れない。

Mちゃんは、僕をどこに連れて行こうとしていたのだろう?



きっとこれからは、夏の青空にもくもくと湧き上がる白い雲をみるとMちゃんを思い出すのだろう。