有栖川さん、来る!
ソファーに寝転がり、心地よくうたた寝に入ろうかというその瞬間、爆音が鳴り響いた。
咄嗟に剣道歴40年、少林寺拳法歴15年の体が跳躍した。
が、それは爆音でなく、長男が勢いよくドアを押し開けただけだった。
長男が小躍りするように、部屋に入ってきたが、はたと不思議そうに僕を見た。
「おとーさん、何もがいてるの?」と。
くそっ、若い頃とちょっと動きが・・・
「ちょっと、手足ブラブラ運動してただけや」
「ところで、○△大学に有栖川さんが来るって」
有栖川有栖・・・なかなかのミステリー作家だ!・・・と、思う。
「んっ? いつ?」
「え~、6/18」
「大学に? 何しに?」
「友達が知らせてくれただけやからよう分からん。聞いてみる」
こんな時期に学園祭でもないよな。
暫くして長男が、部屋に戻ってきて「開学何十周年かの記念講演やて」
「ほぅ、それは在学生対象か?」
「申し込みさえすれば、誰でもOKやて。僕、申し込んでみるわ」

有栖川さんとは、もう何年会っていないだろう?
お互い多忙を極め、なかなか調整がつかない。(と言いたいが、忙しいのは僕じゃない)
○△大学は僕の店からそんなに離れていない。
店の都合で、講演会には行けないが、
その後、誘拐の如く連れ去るという手はある。
そんなこんなで、有栖川さんとは講演終了後、大学正門前で待ち合わせる事になった。
だけど、お気軽に講演会場まで行くものじゃない、とその迂闊さに深く反省した。
知人というだけなの事なのに、守衛や職員の方々に随分気を使わせる事になってしましった。
僕にそんなに丁寧な対応をしてもらう必要はない。ただのおっさんなのだから。

その後、有栖川夫妻を怪しげな店、成穂堂にご案内し、家内を交えてしばし歓談。
高価なアンティーク品と、沢山の本も購入頂いた。
知人に商品を買ってもらうのって、どこか照れ臭いものだ。
夜は我が家で、餃子パーティー!
いやあ、食った食った。どれだけ食べんねんというくらい食べた。
頂いたスイーツは皿まで食らいたいくらい美味しい。
そして、みんなネジが飛んだかのようにバカ笑いした。
意識している訳ではないが、お互い仕事の話にはならない。
最近あったでたらめな話や過去の笑い話で盛り上がる。
気を許すと、口に含んだ珈琲を吹き出してしまう。
有栖川夫人が、「二人ともどうみても社会人ではないですよね。学生の乗りのまんま」と、笑う。
ほんとうだ。こんなに無邪気に笑ったのは何年ぶりだろう?
自然と昔に時間が巻き戻るんだな。
ご夫妻が帰ったあと、長男が「おとーさん達があんなに子供みたいに笑うなんて知らなかった」と。
いかんなあ。いつの間にかしかめっ面で、日々を過ごしてしまっているのだろうなあ。

最後の最後に、長男が暴挙に出た。
書きためていた小説原稿を有栖川さんに差し出したのだ。
就活の志望動機さえ文章に出来ないのに、小説が書けるのか?
そんな作業をコツコツとしているなんて、これには心底驚いた。
そして、そんな積極的だとも思わなかった。
聞けば、高校時代に書き始めたという。
まあ、プロの作家に添削して貰う機会なんて早々あるものじゃない。
経験は血となり肉となる。
長男よ、君には踊るような未来がある!楽しめ!
帰り際、有栖川さんが長男に言った。
「最初は憧れの作家の模倣でいいんだ。書いているうちに自分のスタイルができる。
肝心なのは最後まで書き上げるということだ。それが書くと言うことの始まりだ」
そうだよな。一つの事を最後までやり通すことは終わりではなく物事の始まりなんだ!
咄嗟に剣道歴40年、少林寺拳法歴15年の体が跳躍した。
が、それは爆音でなく、長男が勢いよくドアを押し開けただけだった。
長男が小躍りするように、部屋に入ってきたが、はたと不思議そうに僕を見た。
「おとーさん、何もがいてるの?」と。
くそっ、若い頃とちょっと動きが・・・
「ちょっと、手足ブラブラ運動してただけや」
「ところで、○△大学に有栖川さんが来るって」
有栖川有栖・・・なかなかのミステリー作家だ!・・・と、思う。
「んっ? いつ?」
「え~、6/18」
「大学に? 何しに?」
「友達が知らせてくれただけやからよう分からん。聞いてみる」
こんな時期に学園祭でもないよな。
暫くして長男が、部屋に戻ってきて「開学何十周年かの記念講演やて」
「ほぅ、それは在学生対象か?」
「申し込みさえすれば、誰でもOKやて。僕、申し込んでみるわ」

有栖川さんとは、もう何年会っていないだろう?
お互い多忙を極め、なかなか調整がつかない。(と言いたいが、忙しいのは僕じゃない)
○△大学は僕の店からそんなに離れていない。
店の都合で、講演会には行けないが、
その後、誘拐の如く連れ去るという手はある。
そんなこんなで、有栖川さんとは講演終了後、大学正門前で待ち合わせる事になった。
だけど、お気軽に講演会場まで行くものじゃない、とその迂闊さに深く反省した。
知人というだけなの事なのに、守衛や職員の方々に随分気を使わせる事になってしましった。
僕にそんなに丁寧な対応をしてもらう必要はない。ただのおっさんなのだから。

その後、有栖川夫妻を怪しげな店、成穂堂にご案内し、家内を交えてしばし歓談。
高価なアンティーク品と、沢山の本も購入頂いた。
知人に商品を買ってもらうのって、どこか照れ臭いものだ。
夜は我が家で、餃子パーティー!
いやあ、食った食った。どれだけ食べんねんというくらい食べた。
頂いたスイーツは皿まで食らいたいくらい美味しい。
そして、みんなネジが飛んだかのようにバカ笑いした。
意識している訳ではないが、お互い仕事の話にはならない。
最近あったでたらめな話や過去の笑い話で盛り上がる。
気を許すと、口に含んだ珈琲を吹き出してしまう。
有栖川夫人が、「二人ともどうみても社会人ではないですよね。学生の乗りのまんま」と、笑う。
ほんとうだ。こんなに無邪気に笑ったのは何年ぶりだろう?
自然と昔に時間が巻き戻るんだな。
ご夫妻が帰ったあと、長男が「おとーさん達があんなに子供みたいに笑うなんて知らなかった」と。
いかんなあ。いつの間にかしかめっ面で、日々を過ごしてしまっているのだろうなあ。

最後の最後に、長男が暴挙に出た。
書きためていた小説原稿を有栖川さんに差し出したのだ。
就活の志望動機さえ文章に出来ないのに、小説が書けるのか?
そんな作業をコツコツとしているなんて、これには心底驚いた。
そして、そんな積極的だとも思わなかった。
聞けば、高校時代に書き始めたという。
まあ、プロの作家に添削して貰う機会なんて早々あるものじゃない。
経験は血となり肉となる。
長男よ、君には踊るような未来がある!楽しめ!
帰り際、有栖川さんが長男に言った。
「最初は憧れの作家の模倣でいいんだ。書いているうちに自分のスタイルができる。
肝心なのは最後まで書き上げるということだ。それが書くと言うことの始まりだ」
そうだよな。一つの事を最後までやり通すことは終わりではなく物事の始まりなんだ!