刑事に身代金をもたせ、走り回せる誘拐犯。実に14時間。最後は規定時間を数秒遅れた理由で被害者の女子高生は惨殺死体で発見される。当の刑事は退職。誘拐犯は数年後に縊死。しかし、また同様の事件が発生し、誘拐犯は先の元刑事を身代金の運び役に指名し…という話。14時間って人間そんなに走れるのか?しかも最後遅れたことを避難する警察の人間もいたとか。そりゃバカだろ。二回目の事件で、何事につけ文句をつけ、事を決定しない参事官。こんなやつがなんで偉くなれるんだ?なんてあたりがまずは思い出しちゃう。果たして、犯人は死んでいなかったのかどうか、そして人質は無事に救出できるのかという点が主題になるわけだけど、さすが。人質や家族の素性、死んだ犯人の遺品などがストーリーをどんどん深めて、そして最後にはひっくり返していく。特に二回目の事件は体力よりも知力勝負、時間内に謎をとかなきゃいけないというのも、つい一緒に謎解きできるわけで、ひこまれるなあ。はい、おもしろかった。
余命のない患者さんの、願いを叶える特別なホスピスの話。金に糸目はつけない。願いを叶えるためなら何でもする。主人公は10年働いた特養老人ホームを退職した30代の女性介護士さん。この人の虚無感が凄まじかったな。原因はホームの職員の人間関係。なるだけ巻き込まれないように、深く付き合わないようしてたら、すっかり心が干からびてたわけで。だからこそなんだな。感動がひとしお。義足の社交ダンス選手の話、お父さんが消防士の少年の話、そして主人公が介護する30代の女性の話。思い出すだけで胸が締め付けられると同時に涙が出てきそうになるような話ばかり。いずれも若い人たちなんだよな、患者さんたち。特に少年。お父さんみたいな消防士になるという望みがかなった満面の笑顔。よかったねえと思うと同時に、運命は変わらないのかと。この団体の正体が気になってしょうがなかったけど、途中からもうなんでもいいや、ここは楽園なんだということにして、ただエピソードに没頭した。あ、作家さんはお医者さんかあ。まあ納得。ああ、おもしろかった。
1991年の小説。主人公はヤクザを文字通り殺すことになんのためらいもない刑事。ちなみに先祖代々の暗殺者の家系で、始まりは大化の改新からそういう家系なので古武道の達人で手裏剣なげちゃうし、パチンコ玉を銃のように指から撃つし。笑っちゃうよな、ここまでくると。バブルの頃はヤクザもえらく元気だったんだな。今回は産廃の廃却をヤクザが請負い、それを弱い業者にやらせるべく、ひどい脅しをかけてる。その情報を掴んで刑事の佐伯涼が潜入捜査する。ん?この名前既視感が。冴羽獠と一字違いなのは狙ったのかしら。今回のこの作家はバイオレンス全開。ちなみに初刊時のタイトルは「聖王獣拳伝」だって。かけ離れたタイトルだよなあ。公衆電話から連絡して、現金払いが普通で、紙のタバコをガンガン吸って。さらにはCDにデータを書き込、閲覧や検索ができる機械がでてきたり。90年初頭はもうセピア色なんだなあ。はい、何も考えないでよくておもしろかった。
前巻からだいぶ間が空いた。4年くらい?読んだということしか覚えてない。あと、天狗絡みだったことくらいか。6冊読んでてもやっぱだめ。読みながらキャラや設定を思い出す。さて、今回はエレベーターの階をある順で回ると最後は異世界にいけるという都市伝説にひっかけて大学の友だちが行方不明になったという話。那須高原のリゾート開発に、沼のヌシが祟ると猛反対する老婆の話。人魚の肉をだす秘密のレストランの話。どれも怪異ではない。でも登場人物は怪異というか特殊な人たちばかりというちぐはぐさがいいじゃないか。そして、結構ダークな結末なところも趣味。ドラッグにハマったとか、人魚の肉は実はだとか。そうかー。比丘尼様もかわいい感じで登場してたかー。ところで今どき大規模リゾート地開発なんてまだやってるんかなあ。楽しみました。
依存症なのか。著者は依存症専門のドクター。なので、学術的な視点から盗撮依存症を紐解き、治療について語ってる。盗撮のための盗撮。最後はそこに行き着いちゃうものと理解した。始めは理由があって酒を飲み続けるのだけど、気づいたら飲むのがやめられなくなるというのと一緒。そして社会への影響、被害者や他人のことなど何も考えなくなる。あれ、カメラ構えて傍若無人の鉄オタも依存症なんじゃねなんて思う。
精神医学だからだろうけど、カタカナ単語が多いな。ちょっと鼻につく。あれに付き合う患者たち、最初は大変だろうな。
盗撮罪というのはない。自治体の迷惑禁止条例で裁かれるしかないから、再犯もある。でもなるほど、盗撮罪、あらためて何をもって盗撮とするのかって考えると難しい。陸上のユニフォームの女性を撮影したら?スカートを履いたOLを撮影したら?法律をつくる困難さをあらためて認識した。中身の濃い本だった。おもしろかった。
久しぶりのホラー。今回はダムの底に沈んだキャンプ場で起きた凄惨な事件を取り巻く話。キャンプ場の管理人、キャンプに来ていた男性客、同じく客だった母親と中学生男子が自身でキャンプ地に自ら穴を掘り、そして生き埋めにされる。もう一人、母親と中学生の夫であり父親である男が管理室に火を放ったうえで縊死。母親と息子はなんとか助かるがほかは死亡。古来からの比丘尼の呪によるものとされた。そして数十年後、渇水でダムの水が干上がり底がみえてくると、比丘尼が復活し、また人が死んでいくというお話。民俗学がらみホラーで、果たして怪異か否かという小説。探偵役が半分読み終わったところで唐突に出てきたよ。そう考えると横溝正史や京極夏彦の流れかな。比丘尼蜘蛛と呼ばれる2-3センチのそれが大量発生する年はよくないことが起こるという言い伝えがも少し重みほしかったな。最後の辻褄あわせ、よかった。さくっと読めて後味もそんなに悪くない。楽しみました。
阿佐ヶ谷の行きつけの飲み屋の話がすげえ。南アルプスシリーズからは、著者は気のいい山男ってイメージ強かったから、ギャップでかすぎ。それに加えて飲酒のハードボイルドイメージが懐かしいぞ。にしても、ここまで飲めるものかね。なんか、読んでて口の中、酸っぱくなってきた。酒が不味そうに感じてきたよ。著者は無事にきれいに酒がやめれて、健康になってるんだけど、成功したあとはもう、酒を飲むことが如何にメリットがないかということのオンパレード。たしかに、無理だと思ってたことが成功すると人はそうなるよな。禁煙、禁酒だとか。あるいはその逆で効果オンパレードのランニングやらのスポーツ継続成功してる場合。さすが、嫌味には読めないけど、よっぽど嬉しいんだろうな、とにったりしてしまった。おもしろかった。
今回も凄まじいねえ。渋谷の109で30kg 9億円の取引をしようとするヤクザ団体。でも警察に見つかって、そのまま109に籠城。そんだけの金額だし、捕まれば組から殺される。いや、組が特定されちゃえば殺される。もう必死。必死だから凶暴。100人以上の10代の女の子が人質。うわ、レイプの寸前。まだかまだか。でたー。瑛里華ちゃん。いよ、待ってました。強え!その強さの秘訣、強姦島で学んだことなんかがストーリーのところどころに散りばめられてて、なるほどなあなんて納得はしないけど、そういうもんかあと感心したり。この作家、そういうところ満載だよな。スマホの使い方とか身近なものを武器にしたりする方法だとか。今回はひたすら自身の体のみ。おお、手刀で首を切断しちゃったよ。練習で大木を倒しちゃったよ。なんでもあり感満載。ありゃ、瑛里華ちゃんとおんなじ顔の女の子も登場。なるほど、整形だもんな。色々考えるねえ。おもしろかった!
90歳を超えてる入院患者の老婦人を慕うひ孫の小学生の女の子。家族が、曾祖母がいよいよの時は蘇生措置をとらないことに決めたことを聞いてショックを受ける。なんで治療しないの?みすみす殺すようなことをするの?自分も小学生のときはそう思ってたなと思い出す。寿命、天命を理解してなかったんだな、でもそれは生命力あふれる子供にとっては当たり前のことだと改めて気づいた。結構医療小説読んでるのにねえ。ちょっとうれしい。主人公の卯月さん、患者さんの思い残しが見えることがある。霊感とも違うんだけど、それを看護師の友人に意を決して話す。すると友人はこともなげに信じる。看護師やってりゃ、不思議のひとつやふたつ、しょっちゅう経験しているからと。そういうもんなのか?看護師さんに言われると信じちゃうよ。ゆっくり静かに、絶望したり、希望をもったり、泣いたりと多彩な小説。おもしろかった。
なんと日本における難民問題か、今回のテーマは。確かに数年前から今に至りヨーロッパの国々で賛否入り乱れて、政権とりのメインファクタになってる。ただカタストロフ作家なので、その問題以上に退廃した人のこころがはびこる近未来の日本を舞台に、テロによる大量殺戮と首相暗殺のプロジェクトの進行こそが本筋。ひとりの犯罪者が拷問とマインドコントロールにより暗殺者になっていくってのが新機軸かも。でも、そこまですごい暗殺者になれるもんか?妻と子を殺された難民保護家が首相の暗殺につながる過程がちとわからんかったな。細かいところにツッコミ入れたいところはあれど、毎度の通り、凄まじい勢いで突破されて、はーすげえで終わった。今回も。いやあ、今回もたくさん死んでたなあ。はい、おもしろかった。