お酒怖いねえ。主人公のラジオディレクターが、彼女で美人漫画家兼ラジオパーソナリティーの殺人事件に巻き込まれる。というより思いっきり犯人と疑われる。生きてる間に最後に彼女の家を訪れていて、第一発見者で、彼自身が酔っ払っていて、家に行ったときの記憶がまるでない。さらに死因は彼女にプレゼントされた高級ネクタイ。彼自身も俺はやってないと言い切れない感じ。酒飲んだ翌日、前日の後半、店での記憶ないし、どうやって帰ったかもわからないのは、よくあるんだよな。ということで他人事じゃないんですけど。当然刑事の追い込みも過酷と思いきや、意外にマイルド。バリバリの容疑者と考えてもいい主人公の話をしっかりきいて、彼がそういってるもんなあ、みたいに一度考えを改めたりして。今回密室殺人なんだけど、そのからくりを一生懸命に主人公に考えさせてんのわらった。だめじゃん。あ、主題は密室トリックなんすか?いや、その展開にびっくり。そしてトリックの開示。うん、王道だ。糸とかでてくるし。現代風にもなってるし。真犯人の、トリック思いつきの下り、うまいなあ。おもしろかった。
もっとお気楽な話かと思ってた。みんなでがんばって、世代を受け継ぎついに達成しましたみたいな。もちろん、本筋はそのとおりなんだけど、この高校自体のハードさよ。教育困難校。最も偏差値の低い学校で、勉強へのモチベーションが極めて低い学校。それがねえ。よくぞ、ここまでたどり着いたって感じ。サバ缶が宇宙にいくのはほんの足がかり。自身で課題をみつけ、考え、行動することができるようになる教育。それはただのお題目ではなく、日本一と評価された。この先生、すげえなあ。生徒もだけど、先生、ほんとすげえなあ。宇宙飛行士のみなさんの態度もすげえなあ。高校生とかじゃない。あくまで仲間?いや職人としての会話にきこえるもんなあ。サバ缶をサンプルに、人が生き生きと満喫した人生を進むための秘訣を教えることが飾り気のない文体で書かれてる。おもしろかった。
喫茶店は単なる待ち合わせ場所。待ち合わせの理由は?どういう関係?どこでなにするの?とバリエーションの豊富さを感じる短編集といった感じ。最後の話以外はマスターや店員さん、ほぼ空気みたいだし。でも、それがいい。喫茶店の居心地のよさが伝わってくるよ。アクセ作りが趣味の男子高生と70代のお婆ちゃんの趣味仲間というか友人関係。あらまー。いいねえ。そういう関係って、これまであんまり見かけなかったかも。男の子、その趣味にコンプレックスもってたけど、それをいとも簡単に切り崩す友人の、すげーっていう心からの言葉。拍手喝采だよ。売れっ子美人女優さんと1週間を何をするでもなく一緒に過ごす仕事を引き受けた無職中の青年。なんだ、この空気感は。まったりでいいわー。仕事と自分に誇りをもち、それでいて代役はいくらでもいる、それを理解したうえで働いてるんだという潔さが心地よいな。そして、マスターさんの小学生時代の心残りが最後の話で霧消する。ハッピーエンドで大満足。ああ、洋食屋オリオンの作家さんでしたか。おもしろかった。
いきなり警官がヤクザもんみたいなのに殺されちゃったよ。ん?上司からのお使いじゃなかったっけ?と、そこに正義の味方的な。プロローグで全体像が掴めそう。そう、警察の中の互助会と呼ばれる秘密団体。彼らは表向きは死人となっている。チームを組んで、法で裁けないような悪をぶったたく。もちろんただ腕力、武力だけじゃない。警察を凌駕するIT技術もある。人の始末のアウトソースを受ける連中が存在する。そいつらのターゲットを確認したチームメンバーは逆に始末屋たちから情報を得ようと捕獲しようとする。もうほぼ戦場。中国のすげえ(らしい)殺し屋はでてくるわ、警察署にマシンガンとかもって、突進して獲物を奪いにいくわ、互助会にしても有無を言わさず、相手をしとめちゃうわと。おや、戦場用の犬ロボットまででてきたよ。こんな感じでどっかーん。わーってな感じならすかっとして終わるんだけど、捕まった警察官が拷問にあったり、仲間が死んじゃったりと、重たいところもある。重さはも少しなくしてもらったほうがいいはいいんだけど。続編あり。よし、読も。おもしろかった。
興味がそそられるタイトル。アフリカ発祥とか、ホモ・サピエンスとネアンデルタールとか、なんとなく知識もあるし、何万年もかけて世界を移動する大きな矢印がついた世界地図も思い浮かぶけど、あらためて本で読んだことはなかったし、ということで。内容は生物学的な話が結構印象に残る。骨格による種の比較、異種の場合は2世代以降の子孫はできないという話、縄文と弥生は祖先が違うのかどうか。え、人類で乳房が膨らんだり、唇がみずみずしく厚いのは隠れた性器を代替するものだと言う論。これはなんかアホらしいけど、学者さんが言うんだからホントなのかも。あたらめて学者さんの発想の柔軟さに拍手だな。昔の人類は海をわたり新地に到達することで地球に人類が広がっていくわけだけど、俺的には、なぜ彼らは海の向こうに新地があると考えたのだろうという点。遠くに陸地が視えるならまだしも、水平線の向こうは見えないでしょう。それこそ太陽がでてきて沈むところでしょう。なぜ進める?これには回答なかったけど、こんな疑問をもてるのが本を読む楽しみ。楽しみました。
このタイトルから登山系の怪談かしら。いや、ちがった。怪談らしく、人から聞いた系ではあるけど、いずれも人物名は普通。そしてストーリーだってる。いいじゃないか。しかも怖いところもある。とある田舎の、人から忌み嫌われる家の主の話。その家には主が小さなときから霊がでる。何回見ても慣れることのない、おぞましい霊。それをあえて無視しようとして失敗する両親。ちょっと、ぞっとしましたよ。ラウンドアバウトの真ん中にあるサルの入った檻。住民全員が撤去したとある公営団地。入ってはいけない裏山に登り降りると、そこは自分の家のはずなのに、なにかが違う。バリエーションも豊富だし、これは良い怪談作家さん見つけた。後半は山の話が続く。 登山系とは違うけど。なるほど、一応タイトルに紐づく態にはしてるのか。他の本選ぶときの参考にしましょうかね。おもしろかった。
今回は、彦之助さんが弁当専門の店をだしたり、お隣のおよねさんが嫁いだ娘のほうにしばらくいくことになったり、きよがむらむらお店を持ちたいと思うようになったり、その他諸々。きよさん、彦之助への嫉妬もちょっとあるのかもしれない。腕は見込んでいるものの、自分だってという気持ち。ずっと忌み子として実家の奥深くに隔離され、そんな自分を受けいれてたときに比べると、ほんと良かったなあ。やっぱ人は欲がでなきゃ、人生おもしろくないんじゃないか。欲がある分つらいけどさ。この小説の登場人物たちはみんな、欲を肯定的にとらえ、きよの味方。そして、そんなきよを妬むような人はだれもいない。うん、時代小説だ。一言、てやんでいみたいな感じで悪感情がふきとんでいくような、からっとした雰囲気いいよ なあ。クライマックス、この手の小説では珍しい、千川の3人の料理人によるしめ鯖対決。うまそうだな。押し寿司いいよなあ。腹減ったなあ。おもしろかった。
大学院生だった主人公の一馬さんが産科で宿直した際の急患治療にあたり、死なせてしまった。本来なら医療事故などではないことだったけど、ネットでの記事が引き金となって大炎上、彼は偽医者と呼ばれ社会に居場所がなくなってしまった。そして地方の雪国の小さな参院にたどり着き、医者としてではなく、居候兼手伝いとして居着く。炎上のもとになった記事を書いたライターがきたり、病院の院長やスタッフばばたちと交流したり、患者に感謝されたり、病院をのっとろうとする地元土建屋がでてきたりと、全く退屈しない。気持ちがやわらいだり、感動したり、怒ったり、ハラハラしたりと忙しい。うまいな、この作者。簡単な言い回し、地方おそらく青森の方言と食事などがいいアクセントだよな。そして、最終的に悪者がいない。日本医療の本当の問題の根源がしっかりと記載されてる。なにより、赤ちゃんが誕生するときの尊さに目をみはるよな。おもしろかった。
得体のしれないなにか。しかし、それは禁足の森で入ったものの首を刈る。ぼぎわん系っぽいホラーだな。この作者の得意とするところだし、こちらとしても、待ってました!みたいな。さらに追加で、ブラック企業による洗脳目的のセミナーがそもそもの事件の核心でもある。こうなるとブラック企業というよりも謎のカルト集団だよな、オウムとか連合赤軍的な。なんと不穏。もう全部が不穏。主人公として登場の三文ライターの小川くんも浮き足だった生活で、思い切り不穏。ぐらぐら、バランスを欠いたような気持ちのまま、ページはどんどん進む。これは止まらないやつだ。そして、明らかになる。うわ、気色わる!SFっぽいニュアンスもあるけれど、それじゃつまらない。ということで古代からの怪異と理解する。こっちのほうが情緒 あるでしょー。ちらと、イマニミテイロ、オレダッテ精神が、なんの努力もせずに発動することの虚しさみたいのが、さも教訓的に書いてあるけど、まあ、しゃーない人たちのお話ってことなのかな。おもしろかった。
え?これ七里先生?日本の力の全く及ばないところでの、主人公であるアマゾネス冴子さんへの拷問がインパクトありすぎで、ひいちゃうくらいなんだけど。スタートはほぼご当地で起きた殺人事件。だんだん情報が揃い始めてきて、中国が見え隠れする。その間に知ってる場所から死体だとか手首だとか。知ってる所が舞台になるのはちょいとテンション上がるけど、今回は怖いですよ。そして舞台はいきなりウィグル地区へ。越境は県超えではなかったですか。こりゃすげえスケールだなあ。この本読むと、中国は絶対に相容れない国だと。民主主義の対角線上にある。でも、きっと小説の中だけの話じゃない。小説読んで怒りを押さえられなくなるのは珍しい。けど、ここまでひ どいか?流石に誇張か?でもウィグル地区に関する情報はほぼでてこないよな。最後、どうやって助かるんだよ、もうページないよー。あ、そうきたか。なるほど、確かにイスラムだもんな。悪者は死んだけど体制はびくともしない。そりゃそうだと思いつつも、いつかは世界は変わるのかなあなどと思う。おもしろかった。