24/04/23 遠原嘉乃 七まちの刃~堺庖丁ものがたり~ | ptureのブログ

関で研ぎ師として働く凪ちゃんが主人公。19歳で、よく見りゃかわいい子なのに、研ぎ師として一心不乱に鍛冶師の仕上げた鉄の板に刃をつける。時々頼まれごとで切れなくなった包丁を研ぐ。サビだらけの包丁をなんとかきれいにしてくれという学生さん。それはいじめを受けていた自分を優しく迎えて相手をしてくれた喫茶店のマスターの遺品だから。自分にとってはなによりも大事な包丁が捨てられてた。ちょっとよい話。マスターとの思い出がある限り大丈夫ってね。そして元の形にはできないけれど、少年の手に収まる形に作り直される。他にも短編のってるけど、仕事オタというか、仕事以外引きこもり的な凪が幼馴染のお兄ちゃんやその友達のビヨーンさん、そして各話にでてくる人たちとの交流を交えて、少しづつ、本当に少しづつ成長していく。そして最後は、昔折ってしまった水本焼の包丁に刃をつける。2本失敗。そして最後の一本。関という刃物の町の雰囲気が心地よいなあ。行ってみたい。シマノもあるから自転車の町でもあるんだって書いてあるのは嬉しいじゃないか。死んでいく奥さんが残る夫に使いやすい新品の包丁を送り、この世を去ってしまった話。ちょっといい言葉あった。 

「包丁は道具だ。 

動物と違い、鋭い爪も牙も持たない人たちが生きていくために生み出した道具だ。 

明日へ命をつなげるために日々包丁を使っていく。瀬踏は夫に命が尽きる日まで生きてほしいと願って包丁を贈ったのだ。 

今まで凪は考えたことはなかったけど、嫁入りをするから包丁を道具として持たせるとか、家から独立するからと言って包丁をもたせる人の気持ちにはそういった意味があるのだろう。 

生きていくために包丁を使う。 

だから凪は生きていこうと考える人たちに向けて包丁を研ぐのだ」