Kwon-Young Kang:The effects of eye movement training on gait function in patients with stroke.J. Phys. Ther. Sci. 28: 1816–1818, 2016


【はじめに】
正常歩行中のバランス課題を達成するために3つの機能的要因が必要となる。
・筋骨格系の支持作用
機能的眼球運動の協調性
・行動における感覚機能の統合
そのため、運動パターンが視覚フィードバックを通して調整されるような眼球運動トレーニングに関する検証が最近では見受けられる。また眼球運動トレーニングにおける神経学的基礎は前庭動眼反射(VOR)の役割からも理解できる。VORはバランス維持と平衡状態だけでなく、空間内での身体位置を感知するために重要である。そのため、眼球運動に関する研究は、バランスに関するものに集中しており、歩行に関連するものは少ない。


【目的】
本研究では、脳卒中患者における歩行機能に対する眼球運動トレーニングの効果を検証することである


【対象と方法】
発症から少なくとも6ヶ月が経過した脳卒中患者14人を無作為に実験群または対照群に割り付けた。
実験群では眼球運動トレーニングを、対照群では一般的な歩行トレーニングをそれぞれ週5回(6週間)実施した。歩行評価にはインクフットプリントを用いて評価した。
インクフットプリントとは、足底にインクを塗り紙の上を歩くというものである。

・眼球運動トレーニング内容
①一枚の絵カードが患者に示された後、他の20枚と混ぜ、机の上に表向きに広げる。患者は、その一枚のカードを見つけるように指示される。約20回繰り返す。
②セラピストは曲線を描きながら、ゆっくりとバトンを移動し、患者はバトンの先端を視線で追い続けるように指示される。このタスクでは、バトンと患者との間の距離は1m程度に維持し、約5分間繰り返す。
③患者は、横方向に可能な限り迅速に頭を振るように指示され、逆さまに書かれた文字カードを読み取るように提示される。約10回繰り返す。
④セラピストは5cm離れた点から50cm離れた地点にゆっくりとバトンを移動し、患者は視線をバトンに維持するように指示される。約5分間繰り返す。


【結果】
歩行速度は、実験群は0.39±1.52から0.87±1.08(P<0.05)、対照群では0.47±1.10から0.66±2.01(P>0.05)。
ケイデンスは、実験群は75.58±0.90から81.65±5.95(P<0.05)、対照群では78.36±2.04から81.06±2.10(P>0.05 )。
ステップ長は、実験群は0.53±0.01から0.56±0.11(P<0.05)、対照群では0.52±0.04から0.53±0.10(P> 0.05)。
歩行速度、ケイデンス、ステップ長において有意な改善が認められた


【考察】
今回の結果は、先行研究のバランス向上が、歩行においても肯定的に作用したと考えられる。
さらなる研究として、様々な時空間変数(ストライド、歩数、歩幅、歩隔)、運動力学的パラメータ(関節モーメントとパワー)に焦点を当てる必要がある。




この研究の内容だと全く歩行練習をしていないのに、歩行練習をした対照群と比較して歩行パラメータが改善したことになります。
課題指向型の概念から考えるとエビデンスに則っていないと思われますが…
自分の知識不足で、このような知見があることを初めて知りました。
半球間抑制(interhemispheric interaction)は、脳卒中後において憂慮すべき事象です。



ただ、自分もなんとなくでしかわかっておらず、何が検証され、そしてされていないのか…

理学療法学(第42巻第8号 825〜826,2015)に投稿されていました
上原一将:随意運動とinterhemispheric interactionの神経生理学的関連について


①同側一次運動野と運動課題の関係
運動課題を行う際、同側一次運動野の興奮性が高まると報告されている。
特に難易度が高い場合には興奮性が増加し、難易度が低い場合には興奮性は増加しない。

しかし、これは健常成人の上肢課題に対してであり、
高齢者においては、同側一次運動野とパフォーマンスの間には負の相関があると報告されている。



②同側一次運動野と上肢近位筋協調活動
端的に言うと、同側一次運動野は拮抗筋制御に関与している可能性が示唆されている。



③随意運動における左右半球間のneural interactionについて
運動課題において、半球間抑制が何らかの制御機構の一部を担うことは予測できるが詳細は明らかになっていない。
研究の目的は、dual coil TMS法を用いて健常成人を対象とし、片手随意運動中の短潜時半球間抑制(SIHI)と長潜時半球間抑制(LIHI)の動態を明らかにすることである。
結果、安静時と比較し随意運動中では、SIHIのみ有意な増加が認められた。
つまり、SIHIが優先的に随意運動に関与していることが明らかとなった。



この論文では、主に健常成人および上肢課題の話でした。
まだしっくりこないな。
Lucas R Nascimento et al:Walking training with cueing of cadence improves walking speed and stride length after stroke more than walking training alone: a systematic review.Journal of physiotherapy.2015.61:10-15

疑問:脳卒中患者において、テンポに対してキューイングを与えた歩行トレーニングは歩行速度、ストライド幅、ケイデンスと対称性を改善するのに歩行トレーニング単独よりも優れているのか?

デザイン:無作為化または対照試験のメタ分析を有すシステマティックレビュー



参加者:脳卒中を既往に持つ大人。以下詳細を述べる。



介入:テンポに対してキューイングを与えた歩行トレーニング。
キューイングは、それぞれ音楽(ビート)3件、メトロノーム2件、音楽とメトロノーム2件であった。参加者は、10〜30分間(週3〜5回、3〜6週間)のトレーニングを実施した。

アウトカム指標:歩行速度、ストライド長、ケイデンスと時間的下肢対称性。

結果:テンポに対してキューイングを与えた歩行トレーニングは、歩行トレーニング単独より歩行速度、ストライド長、ケイデンス、対称性を改善した。


歩行速度


ストライド長


ケイデンス


対称性



結論:このレビューは、非常に安価なテンポに対しキューイングを付与した歩行トレーニングは、ただ歩行トレーニングを行うよりも歩行速度と歩幅を改善するという証拠を提供する。しかし、ケイデンスと対称性の点からはばらつきが大きいため利点を生む可能性がある程度に留まる。つまり、脳卒中によって障害を有する歩行を改善させるためには、テンポに対してキューイング付与した歩行トレーニングを30分、週4回、4週間することを強く勧められる根拠がある。


臨床場面で取り入れやすいトレーニングかと思います。本文の中で、より歩行速度を高めるのであればメトロームまたは音楽のHzを高める(患者さんが可能なレベルで)と良いと記載がありました。
携帯のアプリでメトロームって調べると案外あるので、臨床応用できればと思います。







※知識
脳卒中患者の歩行に関するシステマティックレビューでは、歩行速度は脳卒中0.4〜0.8m/s(健常者1.0〜1.2m/ s)、ストライド幅は脳卒中1.1〜1.4m(健常者0.50〜0.64m)、平均ケイデンスは脳卒中50〜63歩/分(健常者102〜114歩/分)、時間的下肢対称性は0.40〜0.64(対称性1.0)であるといわれている。