Den otter AR et al:Gait recovery is not associated with changes in the temporal patterning of muscle activity during treadmill walking in patients with post-stroke hemiparesis.Clin Neurophysiol.2006 Jan;117(1):4-15.

目的:
脳卒中片麻痺患者の歩行機能回復がトレッドミル歩行時における下肢筋活動と共収縮の時間的パターンの変化と一致するかを検証することである。

方法:
対象はリハビリセンター入院直後の片麻痺を要する慢性期患者グループとした。
測定は、両脚から筋電図(EMG)データ、最大歩行速度、遊脚相の非対称性と臨床上測定?を行った。初期評価からEMGデータは、筋活動の時間パターン異常を識別するために、健康な対照群から得られた評価と比較した。

結果:
初期評価時のEMGパターンは、単脚支持期(SS)中での大腿二頭筋(BF)と最初の両脚支持期(DS1)での内側腓腹筋(GM)における筋収縮の異常に長い持続を示した。さらに、両脚において筋収縮の延長が、SS中に大腿直筋(RF)で観察された。また、BF-RFの同時収縮の持続期間は、対照群よりも麻痺側で長い。時間経過とともに、歩行自立度、ボディモビリティ、および最大歩行速度が有意に上昇し、それは歩行能力の大幅な改善が発生したことを示す。これらの改善にもかかわらず、筋(共)収縮の持続期間と遊脚相の非対称性のレベルはリハビリ中に変化しなかった。具体的には、最初の評価時に観察された筋(共)収縮のタイミング異常は有意な変化がなかった、これらの収差は機能的歩行の改善のための障害ではなかったことを示す。

結論:
下肢における歩行関連の筋活動の時間的パターンの改善は、脳卒中後片麻痺の患者における歩行の機能回復のための前提条件ではなかった。どうやら改善された時間的な筋の協調性以外の生理学的プロセスが、脳卒中後の歩行能力の回復の重要な決定要因であるに違いない。



この研究から解釈すると、麻痺側下肢の筋活動および共収縮の時間的変化は歩行機能回復のためには必ず必要ではないとあります。
自立度や歩行速度というパラメータに歩行の質的改善が重要であることに変わりはないと思うのですが…
アブストラクトしか見れていない分、何とも言えないですね。
私が第28回兵庫県理学療法学術大会で発表したスライドです。




はじめに当院で積極的に使用しているT-Supportは即時的に歩行速度を向上させることが検証されてきました。しかし、その効果の持続期間についての検証は多くありません。


本研究の目的はT-Supportの治療効果がどの程度持続するのかを検証することです。


まず、T-Supportとはスライドの図のように体幹前面と下腿前面を弾性バンドで連結された歩行補助具をいいます。特徴として、立脚期では主に立脚中期〜後期にかけて弾性バンドが張力を発揮し、股関節屈曲モーメントを補うことで股関節伸展角度および足関節背屈角度の増大が認められています。
遊脚期では、スイングをサポートすることが認められています。


対象は60歳代で初発脳卒中片麻痺患者です。ブルンストロームリカバリーステージはⅥであり、随意性は高い方です。指示理解に影響を及ぼすような著明な高次脳機能障害はありません。
歩容に関して、右立脚後期の股関節伸展角度が減少しており、右下肢振り出し時に過剰努力を認めました。前述した歩容はT-Support装用により、即時的に改善が認められたため、30日間の歩行トレーニングを実施しました。


検証方法についてです。当院入院から3日目よりT-Support装用期とし、10m歩行時間にて装用・未装用で差が認められなくなった33日目から装用利得がなくなったと判断し、未装用期としました。
そして未装用期から何日間持続効果が得られるかを記録しました。アウトカムは10m歩行での時間、歩数を約1週間毎に測定しました。



結果です。
T-Support装用期には装用利得がありましたが、それ以降はグラフに示した通りT-Supportの装用利得はほぼ認められず装用期の状態を維持していました。33日目の10m歩行所要時間はT-Support未装用期で9.25秒、歩数は17歩でした。40日目では8.03秒・16歩、47日目では8.65秒・17歩、55日目では8.85秒・17歩、64日目では9.12秒・17歩でした。


治療効果に持続が得られた要因として、生体力学的および神経生理学的観点から考察します。
T-Supportの弾性バンドによる補助は、伸張されながら張力を発揮するため、立脚中期〜後期にかけて大腰筋が遠心性収縮をすることに類似します。
つまり、T-Supportによる股関節伸展-屈曲動作の補助機構は股関節の軟部組織で生じる動きと生体力学的に相似が高いと考えられます。


また歩行動作を再建する上では、学習方法が重要であると考えられています。
生体力学的相似の高いT-Supportによる補助は、より無意識的な潜在学習という学習形式をとり、その筋収縮様式の類似した感覚情報は主に小脳によって処理されていると考えられます。
つまり補助があることによって生体の歩行に近い状態でスムーズに歩くことができるため、T-Supportは神経生理学的観点からも汎化されやすいと考えられます。


まとめです。
即時的にT-Support装用の効果があった者に30日間T-Support装用での歩行トレーニングを実施しました。継ぎ目なくT-Support未装用での歩行トレーニングを実施し、T-Supportの効果は約30日間の持続を認めました。本症例において、T-Supportに依存することなく装用時の歩行が汎化されたことを示唆する結果となりました。



Sawa R et al:The association between fear of falling and gait variability in both leg and trunk movements.Gait Posture.2014;40(1)

【目的】
FoFは、地域在住高齢者の歩行時の両下肢と体幹の動きの変動に関連していたかどうかを検証することである。

【方法】
対象者は93名の高齢者はとした。
各参加者は、FoFを持つことに基づいてFear群とNo-Fear群のいずれかに分類した。

測定は、参加者に快適速度で15メートル歩行を行ってもらった。
ワイヤレスモーション記録センサユニットは、L3棘突起と歩行時の右踵骨後部表面に付着させた。
歩行速度、ストライド時間およびストライド長を算出した。
下肢の動きの変動は、ストライド時間の変動係数(CV)で表した。
体幹の変動は3方向(垂直:VT、内外:ML、前後:AP)での自己相関係数(AC)によって表された。
歩行パラメータは群間で比較し、そしてさらなる分析は、年齢、性別、転倒経験、身長、体重、および歩行速度にて調整後に一般化線形回帰モデルを用いて行った。

【結果】
歩行速度、平均のストライド時間、ストライド長はグループ間での有意差はなかったが、ストライド時間CVと全てのACにおいてFear群に有意な悪化が認められた(ストライド時間CV:p=0.003,β=-0.793; AC-VT:p = 0.011、β= 0.053; AC-ML:p = 0.044,β= 0.075; AC-AP:P = 0.002,β= 0.078)
我々の結果は、転倒への恐怖が地域在住高齢者の歩行時の両脚と体幹の動きの変動に関連していることを示唆する。さらなる研究は、因果関係を証明するために必要とされる。


健常高齢者が対象となっていますが、転倒への恐怖心(FoF)によってストライド時間にばらつきが大きく認められること、体幹の動きが大きかったということがわかりました。
そもそもばらつきや体幹動揺が大きくて恐怖心があったのか、恐怖心によって動作に影響を及ぼしたのか。