LIVE「D.H.C 新宿 2024.6.8」① | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

Damian Hamada's Creatures 「魔界小学校修学旅行~魔界巡礼~」 ZEPP SHINJUKU 2024.6.8

燃え上がる炎と大地を赤く染める血。混乱の中に響き渡る悲鳴。深紅に染まって行く地球。しかしながら、その地獄の光景を作り出したのは人類自身である。本当の悪魔は誰か・・・。

 

Damian Hamada’s Creaturesの新聖典「最後の審判」(2024年)収録の「Gates of Hell」とラストを飾る「Crimson Earth」を聴き、そこから1曲目「審判の日」に戻ると収録曲すべての歌詞が色合いを変え、作品が描き出す物語を1回目とは違った視点で聴く事ができる。

 

つまり、何度でも聴き込む事で歌詞の深みが増すのである。最初に聴いた時のインパクトが、2回目には違った形での衝撃として聴き手の感情を揺さぶり、3回目は更に違った色彩となって聴き手の心を染め上げる。無限に抜け出せない「魔力」に堕ちて行くのだ。

 

その新聖典「最後の審判」を発表したD.H.Cが、全国主要都市を廻るツアーを行った。御承知のように、前回はデーモン閣下との合同ツアーだったので、ワンマンとしては久々である。今回は「魔界小学校 修学旅行~魔界巡礼~」というタイトル。

 

6月1日の大阪から始まったツアーは、名古屋を経て3公演目の東京に辿り着いた。会場は昨年(2023年)春にオープンしたばかりのZEPP Shinjuku。歌舞伎町のど真ん中にあるホールだ。D.H.Cがここでライヴを行うのは初。

 

ZEPP系列のホールは場所によって様々な建物の作りをしているが、新宿は地上で受付をした後、地下4階まで降りる。そこにステージと客席がある。後に話があったように、本公演はチケット完売らしい。よって後方の座席まで満員だ。

 

開演を待つ間、場内にはダミアン浜田陛下の楽曲をシンフォニックにアレンジしたBGMが流されている。「PLANET/THE HELL」「メフィストフェレスの肖像」「世界破滅への序曲」などがあった。

 

18時を少々過ぎた頃、さくらシエル伊舎堂氏(Vo)による陰アナウンスが始まった。注意事項を述べた後、「この会場に充満する魔力を皆さんがステージにぶつけてください。その魔力を私たちが倍にして皆さんに返します!」と意気込みを語る。

 

シエル氏が先導して場内からはD.H.Cコールが沸き起こり、照明が徐々に落とされた。闇を包み込むかのように大音量で「聖詠」が流れ、改臓人間の方々がステージに登場。舞台向かって右側にアックスKAZUMA氏(g)、左側にRENOファウスト氏(g)。

 

中央後方にリリス一ノ瀬氏(b)、そしてドラム台にKAZAMIクロウリー氏(ds)という定位置だ。前回のツアーでは転換時間を考慮してか、雷電湯澤氏のドラム・セットが既に組まれていたため、KAZAMI氏のセットは舞台向かっての左寄りだったが、今回は中央に要塞の如く聳え立っている。

 

そのKAZAMI氏が「聖詠」の終盤に銅鑼を叩き、分厚いシャ~ン!という音色が響き渡った。その迫力たるや凄まじい。カウントから始まったのは最新大聖典の1曲目でもある「審判の日」である。

 

シエル氏が「手を上げて行きましょう!」と観客に呼びかける。重厚感のある冒頭を経てKAZAMI氏が2バス連打の疾走リズムを叩き始めた。客席では拳を突き上げ、髪を振り乱す人の嵐。メタルのライヴらしい光景に。

 

KAZAMI氏のドラミングとパフォーマンスはパワフルでありつつ、蝶が舞うような華麗さがある。新聖典発表後に新宿タワーレコードで行われたイヴェントにて、KAZAMI氏は「疾走曲は更に手数を増やしてライヴで披露する!」と宣言。今ツアーにおける注目点のひとつだ。

 

リズムに合わせシエル氏も髪を振り乱して怒涛のヘッド・バンギングを繰り返した。スタジオ・ヴァージョン以上にパワフルな歌声を披露。特にサビの高音パートではガナるような成分を取り入れ、クリーンな声だけではない多彩な表現を感じさせる。

 

ステージの中央と左右にはお立ち台がセットされており、ギター・ソロになるとRENO氏とアックス氏がそこに立ってプレイ。ツイン・ギターのハーモニーを奏でる姿が後方からもよく見える。「審判の日」のエンディングからバンドの音が続き、カウントを合図に「Babel」へ。これまたツイン・ギターが美しい曲だ。

 

今ツアーは「バンド」が重要なキーワードとの色合いが強い。現編成が初めて顔を揃えたのは前作「運命の支配者」(2023年)の完成後。活動絵巻聖典「The Beginning of the End」の撮影時だったという。よって「最後の審判」は、現編成で作られた最初のスタジオ・アルバムという事になる。

 

最新聖典で発揮された「バンド」としての結束はライヴにも毛細血管の如く張り巡らされており、それを感じる瞬間がライヴを通して何度もあった。そのひとつが「Babel」である。切れ味の鋭い演奏と華のあるパフォーマンス。

 

前回の「地球魔界化計画」ツアーでも2曲目の位置でプレイされただけに、D.H.Cの「今」がZEPP Shinjukuのステージに色濃く反映されていた。また「Babel」は初期の楽曲だけに、シエル氏の「今」を投影した1曲でもある。

 

現在のシエル氏は、ヴォーカルのみならず、表現力で会場全体を呑み込むかのような存在感を放っている。拳を突き上げ、髪を振り乱し、熱狂する観客の姿越しに見えるステージ。そこで演奏される「Babel」には、それぞれの時代を駆け抜けたD.H.Cの歴史が凝縮されている。

 

2曲を歌い終えて、シエル氏が「こんばんは!新宿」と挨拶。「東京がまだまだ盛り上がれるのを私は知っています。最後まで盛り上がって行きましょう!」と観客を煽る。それをきっかけにヘヴィ且つダークなギター・リフが場内を支配した。曲は「悪の華」である。

 

本曲はサンプリングの効果が全面的に出された1曲で、バンドが奏でるヘヴィなサウンドに、煌びやかなシンセ風味の音色が添加されていた。専任キーボード奏者が不在の編成でもサンプリングとの同機によって、スタジオ音源のイメージを崩すことなく忠実に再現している。

 

サウンドのボトムを支えるリリス氏のベース・プレイの素晴らしさも見逃せない。特に本曲のような重厚感のある楽曲はベースの役割が際立ち、低音が歌詞の世界観とリンクして聴き手のイマジネーションを掻き立てる。

 

RENO氏とアックス氏のツイン・ギターを経て、曲は一気にヘヴィな色合いに。客席では重いリズムに合わせて前後に身体を揺らす信者の姿も見られた。後半のサビから、再びツイン・ギターのパートが挟まれ、曲はエンディングを迎えた。

 

間髪入れずにアームを使ったギュィ~ン!という、ロックらしいギター・サウンドが鳴り響いた。ここからはRENO氏のアックス氏のギター・バトルのコーナーだ。まずRENO氏が弾き、続いてアックス氏が弾く。

 

フル・ピッキングによる高速フレーズ、タッピング、スウィープなど技巧派のプレイが火花を散らした。アックス氏はネックの上側に手を置き、まるでピアノを弾いているかのような見た目の高速タッピングを披露。視覚的にもインパクト大であり、客席から大きな歓声を浴びていた。

 

両名のフレーズが激突して火花を散らしながらも、その背景には互いへのリスペクトが存分に感じられる。交互に弾いていたフレーズが重なり合って調和し、ステージ上に「美」を構築して行く。最後にKAZAMI氏が銅鑼を何度も激しく叩き、ギター・バトルはスリリングに締め括られた。

 

続く・・・。