LIVE「ヨーロッパ 東京 2024.2.1」① | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

ヨーロッパ  東京ドームシティホール 2024.2.1

バンドの40年の歴史を詰め込んだタイムカプセル。本ツアーのステージ・セットの背景に用いられているアンモナイトの化石の如きデザインは、そのような意図が込められたと解釈できる。

 

そのコンセプトを最大限に活かした今回のライヴは、2部構成で約3時間弱(間に20分の休憩あり)という長尺の公演が行われ、バンドの歴史と発表された名曲の数々を堪能する濃密な時間となった。

 

今回の日本公演は、昨年(2023年)の9月に告知されている。これまでアルバムを発表すれば日本でライヴを行って来たヨーロッパであるが、このタイミングでの来日は特殊と言える。パンデミックを経て久々に行われる日本公演は、ファンに向けた御無沙汰の挨拶でもあり、40周年を記念する重要なライヴでもある。

 

ある意味、様々な要素が絶妙なタイミングで噛み合ったからこそ実現した公演とも言えそうだ。ツアーは1月31日に大阪で、2月1日と2日に東京ドームシティホールで公演が行われた。まずは東京公演初日である2月1日の模様から書きたい。

 

18時の開場後、客席に入るとステージは幕で覆われ中が見えない仕様に。幕にはバンドのロゴが映し出されている。開演までの場内BGMにはUFOの「ロック・ボトム」や「ドクター・ドクター」もあった。

 

ヨーロッパの前身となったフォースは、UFOのアルバム「フォース・イット」(1975年)からバンド名前を頂戴した事は知られている。これから始まるライヴはバンドの40年を凝縮した内容であるが、その前にメンバーが聴いて育った音楽のルーツがさりげなく表現されたと解釈できる。

 

さて、初日と2日目では観客の入りに差があり、この日はアリーナと第1バルコニーのみの集客と見受けられた。翌日は第3バルコニー後方まで満員。やはり木曜日という事もあり、地方から来る方は土日も兼ねて金曜日の方が都合が良い、見るなら最終日が良いなど幾つかの要因が重なり、こうなったと推測できる。物価高騰の折り、両日見るのは難しいといった金銭的な事情も挙げられるのではないか。

 

19時になると場内の照明が落とされ、大きな拍手が沸き起こる。今ツアーはオープニングにメンバー各人のインタビュー映像を放映。バンドの結成時期を語るインタビューで、懐かしいデビュー当時のライヴ映像を交えて進行。

 

字幕が無いので、英語が達者な方で無い限り全ての内容を理解するのは難しいと思うが、初期のライヴでジョーイ・テンペスト(Vo)がキーボードを弾いたら鍵盤にトラブルが発生したエピソードには場内から笑いの声もあった。その際のライヴ映像も見られるので大変貴重だ。

 

「ジョーイが再びキーボードを弾く事はあったのか?」という問いに、ミック・ミカエリ(Key)が「二度となかった」と回答している。考えてみれば、ジョン・レヴィン(b)やイアン・ホーグランド(ds)が長時間のインタビューに答える映像は珍しく、これも貴重であるのは間違いない。

 

第1部における冒頭のVTRは10分ほどで、突如としてドラムの低音が場内に響き渡る。ステージ上に眩いばかりの照明が点き、スタンバイするメンバーの姿が幕越しにシルエットとして見えた。大きな歓声と拍手が沸き起こっている。

 

オープニング曲は「オン・ブロークン・ウィングス」。7インチ・シングル「ファイナル・カウントダウン」(1986年)のB面に収録された本曲は、1曲目としては意外であり、マニア泣かせの選曲と言える。イアンの力強いドラミングをきっかけにバンドがリズム・インするとステージ前の幕が落とされる。

 

メンバーの姿が見えると、より一層、大きな拍手と声援が贈られた。落ちた幕は、舞台前方に待機していたクルー数名によって回収される。ただし、幕が大きいため回収に時間を要しており、ジョーイが歌いながらクルーに顔を近づけるなど、ちょっかいを出す場面も。

 

本曲のスタジオ音源を改めて聴くと、80年代特有のエコー、キーボードを前に出した音作りになっている。それに対し、今ツアーのヴァージョンはジョン・ノーラム(g)のギターを軸とした、ハードロックらしいタイトなサウンドでプレイされたのが印象的。

 

間奏になると、ノーラムが腰を落とした姿勢でギュイ~ン!とロックらしいノイズを発した後、テクニカルな速弾きを披露した。ノーラムは足元に置いてある機材類を手で調整しながらプレイしており、公演を通してしゃがむ場面が定期的にあった。因みに、ライヴの開始から3曲は白のストラトキャスターを御使用。

 

エンディングでバンドの音が拡張され、ジョーイがマイクスタンドを大きく回すアクションを見せた。「コンバンワ!トーキョー!」と観客に挨拶し、そのまま「セヴン・ドアーズ・ホテル」に繋がった。名曲の登場に、場内からは大きな歓声が上がっている。イントロの抒情的なピアノ・パートは省かれ、リズム・インする所からの演奏だ。

 

サビでは拳を突き上げながら歌う観客の姿が多く見られた。ミックは音色の使い手と言え、数台のキーボードを曲に応じたサウンドでプレイ。先ほどの「オン・ブロークン・ウィングス」は煌びやかな音色だったが、本曲「セヴン・ドアーズ・ホテル」ではハモンド・オルガン風味の重低音が効いた音で、楽曲の持つ世界観をサウンドで演出している。

 

中盤でリズムが3連符になり、ノーラムとミックが美しいメロディを奏でる。このパートを聴くと、ヨーロッパがアメリカやイギリスのバンドではなく、スウェーデンのバンドであると再認識できる。この透明感は唯一無二のサウンドだ。

 

エンディングで強音を鳴らして「セヴン・ドアーズ・ホテル」が終わると、そのままイアンがハイハットでリズムをキープ。場内は手拍子の嵐となった。ジョーイが「Rock now rock the night!」と歌ったのを合図に、ノーラムが「ロック・ザ・ナイト」のリフを弾き始めた。

 

本曲の持つアリーナ・ロック級のパワーは凄まじく、サビではジョーイと一緒に客席で大合唱が沸き起こった。ジョーイはお馴染みの白いマイクスタンドを客席側に伸ばし、観客に歌うように促す。サーチライトのように場内を照らすライティングも、壮大なスケール感を演出していた。

 

中盤で観客参加型のシンガロング・パートが盛り込まれており、ジョーイが「トーキョー!」と煽ってサビのメロディを歌うように促す。もちろん大合唱だ。そこからノーラムのギター・ソロに流れ込む。実にスリリングであった。

 

ハイハットのカウントから、ムード感のあるアルペジオが始まる。再結成アルバム「スタート・フロム・ザ・ダーク」(2004年)のタイトル曲「スタート・フロム・ザ・ダーク」だ。本曲は当時モダンとされていたダウン・チューニングで書かれた曲であり、ノーラムはギターをレスポールに持ち替えてプレイ。

 

リズム・インすると身体の芯まで響くほど、ヘヴィなリフが炸裂する。ギター・ソロのパートでは、ノーラムが魂を込めた表情でフレーズを弾いている。曲調に合わせてステージ上の照明も暗めで、正に闇を想起させる光景だった。

 

しかしながら、歌メロはキャッチーであり、一緒に歌う観客の姿も。誤解を恐れずに書くなら、この辺りの楽曲は再結成以降のアルバムを毎回聴いているファンのみ知る曲という位置づけになるはず。それは次の「ウォーク・ジ・アース」も同様。これら2曲演奏時の観客は、乗るというよりステージをじっくり見る、音に身を任せるといった感じに見受けられた。

 

続く・・・。