ここ最近、社会の変化やお仕事・家庭でのストレス、人間関係の悩みなどが重なり、心の不調を感じる方は昔よりずっと増えました。「しんどいときは相談していい」という空気ができてきたこともあり、精神科を受診される方は年々増えています。


当院でもご多聞に洩れず、初診のお問い合わせは以前より増えてきています。



## 当院の診療体制


当院では、1日に診療を行う人数の目安をおおよそ医師1名あたり30名前後までとしています。


以前は、当日に「今日どうしても診てほしい」という初診のお問い合わせに対して、多少、無理をしてでも枠を調整してお受けすることもありました。しかし、かかりつけの患者さんが増えてきたこともあり、現在は当日の初診受付が難しい日が多くなっています。


とはいえ、当院はまだ初診は1週間以内に受診していただけることがほとんどです。地域に根ざして長くやっている精神科クリニックでは初診が数ヶ月待ちとなったり近隣の方限定で予約を受けるところも珍しくありませんので、比較的受診しやすい状況かと思います。



## 数と質のバランスについて


患者さんを必要以上に多く受け入れようとすると、


- 診察の時間が短くなる

- お待たせする時間が長くなる

- 落ち着かないまま診察に入ることになる


といった形で、結果的に来院された患者さんにご負担をかけてしまうことがあります。


私は診療に使うエネルギーを「カルピスの原液」に例えることがあります。原液には限りがあり、患者さんが増えるほど薄めざるを得ません。無理に多く受ければ、診療全体が淡白になり患者さんの満足度も医師の診療に対するモチベーションも下がり結果的に誰も得をしない事になります。


そのため、当院では「数量」と「質」のバランスを見ながら、無理のない範囲で診療を行うことを大切にしています。



## 最後に


なるべく丁寧に向き合う診療を続けていくためには、無理をせず、ちょうど良い濃さで診療を保つことが必要だと考えています。


ご不便をおかけすることもあるかもしれませんが、ご理解いただけましたら幸いです。

今回は「精神科の転院」について、注意すべき点をお話しします。


引っ越しや転勤など、地理的な事情でやむを得ず転院する場合は別として、「今の病院に不満がある」「納得がいかない」といった理由で、自分に合うところを探すのは悪いことではありません。私自身、これまでの投稿でもその考えをお伝えしてきました。


ただし、転院の際にはいくつか注意が必要です。

先生との相性が合わない、カウンセリング・デイケア・r-TMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)など薬以外の治療を受けられる医療機関に移りたい、あるいは予約方法や通院システムが合わないといったようにその理由が病院ごとに差別化できるものによる場合は、転院することで不満が解消されることがあります。


一方で、「今の薬ではなかなか良くならないから病院を変えたい」という場合、注意が必要です。


実際にそのような方の処方内容を見ても、特に問題があるケースはほとんどありません。なかには症状が長引いているために薬の種類が増えていたり、薬物に依存ぎみとなり治療に苦労しているケースが多い印象です。


また、「不安が強くて薬をもっと増やしてほしいのに先生が出してくれないから転院した」という方も時々おられますが、これも難しいケースです。

というのも、きちんとガイドラインに沿って治療を行っている医師ほど、薬の種類や組み合わせの上限を守り、必要以上に増やさないようにしているからです。


つまり、「断られた」こと自体が、むしろ適切な医療判断である場合も多いのです。


十分な説明がなければ患者側からしたら何もしてくれてないと不信感を持たれることは理解はできます。


ですからそのような理由で当院に転院されてこられた方に対して必ずしも希望された通り薬を増やすことはできないときちんと説明はさせて頂きます。



精神科の専門医として研修を受けた医師であれば、基本的にはガイドラインに沿った標準的な薬物治療を行っています。その病院にだけある「秘伝の薬」はないのです。


したがって、診断や処方内容に大きな差があることはそこまではないかと思われます、転院によって必ずしも治療が劇的に変わるわけでもないことに気がつくこともありがちなことです。


追記

受診を検討されておられる方へ

当院では下記の対応は原則お断りしております。

1. 現在の時点で精神科の薬が7種類以上服用されている場合


2. 他院で断られた診断書の当院での依頼


3. 精神科以外の薬の処方(現在、内科などで出されている胃薬や鎮痛剤など)




こんにちは精神科専門医Dr. ヤンです。

今回はめまいに関するお話です。

皆さんはめまいを頻繁に感じるようになればまずはどこの科に受診されますか?恐らく耳鼻科もしくは内科だと思いますし、今流行りのチャットGPTで調べてもそのように提案されます。


しかし、内科や耳鼻科を受診しても、検査では異常が見つからず、めまいに効果があると言われる薬を処方されたけれどなかなか良くならない……


そんな方が「心因性かもしれないから精神科へ行ってみては」と言われて受診されることがあります。


ただ実際には、前医から検査結果やこれまでの処方内容を丁寧にまとめた紹介状を持って来られるケースは少なく、

「うちでは分からないから、他に行ってみて」という“受診勧奨”の延長線上で来られる印象を受けることもあります。(担当医にサジを投げられた気持ちになられるかも知れません)


昔なら「精神科でみてもらえだと? ということは自分の症状は気のせいだと言いたいのか!」と憤慨して受診しなかった方も少なくなかったでしょう。


しかし最近は、紹介状がなくても「言われたから来ました」と気軽に精神科を訪れる方も一定数いらっしゃいます。





心因性めまいとは?



心因性めまいは決して珍しい病気ではなく、施設によってはめまい患者さんの20〜80%に認められるといわれています 。


「心因性」といっても大きく二つに分けられます。


  • 精神疾患そのものが原因となる「狭義の心因性めまい」
  • メニエール病などの前庭疾患があり、それが不安や抑うつなどの精神的要因で悪化しているケース(広義の心因性めまい)



つまり、単に「気のせい」と片づけられるものではなく、身体と心の両面から診ていく必要があります。





精神科での印象と対応



私の臨床経験では、精神科に来られためまいの方に抗不安薬などを試すと「少し楽になった」とおっしゃるケースはあります。

ただ、めまいそのものがすっきり消えるというよりは、「めまいが残っていても気分的に和らいで生活しやすくなる」という程度です。


そのため、初診の段階から「精神科でめまいが完全に治る」という期待を持たれるよりは、「めまいを抱えながらも気持ちが軽くなること」を目標にしましょうと、事前にお伝えすることが多いです。





治療の基本姿勢



心因性めまいに対する治療は、まず生活指導(規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動)から始まります 。


薬物治療では、一般的な抗めまい薬が効きにくいことも多いため、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、場合によっては漢方薬などを使います。


ただし、薬は長期投与を避け、副作用や依存性に注意することが大切です。


精神科での役割は、「症状をなくす」よりも「症状と付き合いやすくする」サポートと考えていただくのが現実的だと思います。