こんにちは精神科専門医Dr. ヤンです。

今回はめまいに関するお話です。

皆さんはめまいを頻繁に感じるようになればまずはどこの科に受診されますか?恐らく耳鼻科もしくは内科だと思いますし、今流行りのチャットGPTで調べてもそのように提案されます。


しかし、内科や耳鼻科を受診しても、検査では異常が見つからず、めまいに効果があると言われる薬を処方されたけれどなかなか良くならない……


そんな方が「心因性かもしれないから精神科へ行ってみては」と言われて受診されることがあります。


ただ実際には、前医から検査結果やこれまでの処方内容を丁寧にまとめた紹介状を持って来られるケースは少なく、

「うちでは分からないから、他に行ってみて」という“受診勧奨”の延長線上で来られる印象を受けることもあります。(担当医にサジを投げられた気持ちになられるかも知れません)


昔なら「精神科でみてもらえだと? ということは自分の症状は気のせいだと言いたいのか!」と憤慨して受診しなかった方も少なくなかったでしょう。


しかし最近は、紹介状がなくても「言われたから来ました」と気軽に精神科を訪れる方も一定数いらっしゃいます。





心因性めまいとは?



心因性めまいは決して珍しい病気ではなく、施設によってはめまい患者さんの20〜80%に認められるといわれています 。


「心因性」といっても大きく二つに分けられます。


  • 精神疾患そのものが原因となる「狭義の心因性めまい」
  • メニエール病などの前庭疾患があり、それが不安や抑うつなどの精神的要因で悪化しているケース(広義の心因性めまい)



つまり、単に「気のせい」と片づけられるものではなく、身体と心の両面から診ていく必要があります。





精神科での印象と対応



私の臨床経験では、精神科に来られためまいの方に抗不安薬などを試すと「少し楽になった」とおっしゃるケースはあります。

ただ、めまいそのものがすっきり消えるというよりは、「めまいが残っていても気分的に和らいで生活しやすくなる」という程度です。


そのため、初診の段階から「精神科でめまいが完全に治る」という期待を持たれるよりは、「めまいを抱えながらも気持ちが軽くなること」を目標にしましょうと、事前にお伝えすることが多いです。





治療の基本姿勢



心因性めまいに対する治療は、まず生活指導(規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動)から始まります 。


薬物治療では、一般的な抗めまい薬が効きにくいことも多いため、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、場合によっては漢方薬などを使います。


ただし、薬は長期投与を避け、副作用や依存性に注意することが大切です。


精神科での役割は、「症状をなくす」よりも「症状と付き合いやすくする」サポートと考えていただくのが現実的だと思います。





精神科専門医Dr.ヤンです

こちらをご覧の方の中には、これから精神科を受診しようと考えている方や、すでに通院されている方もいらっしゃると思います。

一口に「精神科」と言っても施設の種類や役割はさまざまで、初めて受診を考える方にとっては分かりにくい面もあります。

そこで今回は「精神科の歩き方」と題して、精神科医療機関の種類と特徴を大まかにご紹介します。





1. 総合病院の精神科



  • 大学病院や地域の総合病院の一部に設置されています。
  • 一般の総合病院では精神科の医師数は多くなく、外来診療を行ってない所もあります。(地域による)
  • 主な役割は他科に入院している患者の精神的な問題へのリエゾンやコンサルテーション。
     例:術後せん妄、がん患者のうつや不安、認知症に伴う行動症状など。
  • 入院設備があっても短期・急性期が中心で、慢性期の長期療養には向きません。




2. 単科精神科病院


(1) 公立の単科病院


  • 「◯◯県精神医療センター」などの名称を持つ施設。
  • 精神保健指定医が多く、**重症例や司法精神医療(措置入院・鑑定入院)**を担います。
  • 地域精神医療の拠点として機能します。




(2) 民間の単科病院



  • 「◯◯サナトリウム」「◯◯温泉病院」といった名称を持つこともあります。
  • 主に統合失調症や気分障害などの慢性期患者を支え、長期入院や療養が可能です。(国の方針として入院期間を短くする取り組みが行われてきています。)
  • デイケアや作業療法などリハビリ機能も備えていることが多いです。





3. クリニック(診療所)



(1) 一般的な精神科クリニック



  • 外来中心で、うつ病・不眠症・不安障害など軽症〜中等症の患者を対象とします。
  • 「精神科」だけでなく「心療内科」と標榜しているケースも多い(患者が相談しやすいように配慮されている)。
  • 都市部では駅前やビル内に多く、アクセスの良さが特徴です。
  • 従来は個人で開業しているクリニックが多かったですが、最近は都市部を中心に複数の分院を展開している企業型?クリニックやオンライン診療を行うところも増えてきているようです。




(2) 専門特化型クリニック



  • 特定の領域に絞った診療を行うクリニック。例として:
    • 発達障害専門(子ども・大人のADHD・ASDなど)
    • 依存症専門(アルコール、薬物、ギャンブルなど)
    • 摂食障害やトラウマ専門
    • 睡眠外来(不眠症や睡眠時無呼吸症候群など、睡眠障害に特化)




スタッフ構成による機能の違い

 どのような職種のスタッフが在籍しているかにより対応できるところも変わっています。


  • 臨床心理士・公認心理師:心理検査、カウンセリング
  • 精神保健福祉士(PSW):社会資源の活用支援、生活相談
  • 作業療法士(OT):生活リズムの改善、復職(リワーク)支援
  • スタッフ体制によって、以下のプログラムが展開可能:
    • デイケア(生活訓練・対人交流)
    • カウンセリング(心理的支援)
    • リワークプログラム(復職支援)





「鬱(うつ)は大人のたしなみですよ。それぐらいの感受性を持ってる人じゃないと俺は友達になりたくない。こんな腐った世の中では少々気が滅入らないと……。 

 社会はおかしい、政治は腐ってる、人間の信頼関係は崩壊してる、不安になる。正常でいるほうが難しい」


これは俳優であり文筆家でもあるリリー・フランキー氏のあるインタビューでのコメントです。


初めてこの言葉を目にしたとき、「確かに言われてみればそうかもなぁ」と思いました。今の世の中は生きづらさに満ちていて、多くの人がその中で“平常心”を健気に保とうとしている。その姿は、私自身の感覚とも重なります。


社会が悪い、誰が悪いと他責的に言いたいわけではありません。ただ、時折り閉塞感を感じているのは自分だけではないのだと知ると、少し救われたような気持ちになります。


実際、多くの方が心を病み、時にはメンタルクリニックを訪れます。本来はそうした人がもっと少なく、自分のような医療者が忙しくない世の中こそ望ましいのかもしれませんが….


「鬱は大人のたしなみ」という言葉は、弱さの肯定ではなく、感受性を持って生きていることの証左でもあるのだとも感じさせられます。