皆さんが病院を選ぶ際、どのような点を重視されるでしょうか。
施設の新しさや清潔さ、立地といったハード面、あるいは医師やスタッフの経験・対応などのソフト面。どれも大切な要素です。

その中で、私自身が日々診療を行う医師として、また一人の患者としても**特に重要だと感じているのが「通院にかかる時間」と「待ち時間」**です。


通院にかかる時間について

通院時間は、ご自宅や職場の場所など、患者さんそれぞれの事情によって異なります。
ただし、毎回「遠方から予約時間に間に合うように通う」ことは、想像以上に負担になります。家もしくは職場から来るのに30分以内が望ましいかと思います。

実際に、無理をして遠方から初診予約を取られた方の中には、
•数回通院した後に来院が途絶える
•予約変更やキャンセルが頻繁になる

といったケースが多いです。(わざわざ時間をかけて行くほど、何か特別な治療が受けられる訳ではないと理解されたのかと思います。)

そのため当院では、初診予約の際にご自宅や職場から無理なく通院できる距離かどうかを確認させていただくことがあります。
これは受診をお断りするためではなく、継続して通院できる環境かどうかを一緒に考えるためです。



待ち時間について

待ち時間は、患者さんの努力というよりも医療機関側の運営努力が問われる部分だと考えています。

予約制を取らず、来院順で診察を行う医療機関もありますが、患者数が多い場合、
「いつ終わるかわからない」
という状態になり、前後の予定が立てにくくなります。

一方で予約制であっても、
「10時に予約しているのに、毎回2時間以上待たされる」
というケースも珍しくなく、そうした不満をきっかけに他院から当院へ転院されて来られる方も少なくありません。


当院の考え方と取り組み

当院では、待ち時間は患者さんの満足度に大きく影響する重要な要素と考え、
できる限りお待たせしないよう、受付・医師ともに日々意識して診療を行っています。(そのため予約を一定以上取りすぎないようにしています。)

もちろん、
「待たせないために診察が極端に短い」
というのは本末転倒です。

限られた診療時間の中で、
•必要なことはきちんと行う
•無駄を減らし、要領よく診療を進める

そのための工夫を続けています。

また、窓口や電話口で予約調整を行う医療スタッフも、
•初診枠の調整
•急なキャンセル・変更
•遅刻のご連絡

などがあった際には、その時点の予約状況を踏まえ、できるだけ他の患者さんの待ち時間が少なくなるよう調整しています。

そのため、私ども医師からも、
予約の変更やキャンセルは必ず事前にお電話でご連絡ください
とお願いしています。


無断キャンセル・予約なしでの来院についてのお願い

時折、
•無断キャンセルもしくは遅刻
•予約も事前連絡もなく突然来院される

といったケースがあります。(こういうケースはスタッフの努力を無力化させてしまいます。😅)

その場合、原則としてきちんと予約を取られている方を優先して診察するため、
どうしても最後の順番になってしまいます。
また、当日の診療時間の状況によっては、後日あらためて予約を取り直していただくこともあります。

これは特定の方を不公平に扱うためではなく、
すべての患者さんのスケジュールと診療の質を守るための対応です。


最後に

当院では、
「無理なく通えて、できるだけ待たずに、安心して受診できる環境」
を大切にしています。

もちろん体調が悪くて連絡がとりづらかったという方もいらっしゃるかとは思います。

皆さん一人ひとりが気持ちよく受診できるよう、
どうか予約や来院ルールへのご理解とご協力をお願いいたします。

今後も、より良い診療環境づくりに努めてまいります。


ジン•メンタルクリニック

体調不良で会社に行けないと相談に来られた方には、まず詳しく経緯やご本人のお考えを丁寧に伺ったうえで、基本的には休養を勧め、必要に応じて診断書を発行しています。

(治療については、症状や状況によってはお薬を処方することもありますが、休養だけで回復が見込める場合も多く、その際はご本人の意向を確認したうえで、あえてお薬を出さないこともあります。)


なぜなら、健康より優先させるべき仕事はないと考えているからです。

しかし、「自分さえ我慢すれば」「会社が辞めさせてくれない」といった考えにとらわれ、自分を追い込んでしまう方も少なくありません。


仕事を辞めるかどうかを決める権利は基本的に本人にあり、会社が本人の意思に反してそれを止める法的な権限はありません。


特に、社会に出たばかりの若い方にとっては、今の状況が乗り越えるべき試練なのか、それとも避けるべきものなのか迷うことも多いと思います。その点については、休養を勧める立場として私自身も悩み続けています。


ただ一つ、これだけは理解していただきたいのは、自分の健康を犠牲にして無理をし、心身を壊してしまうことは、本人にとっても、雇っている会社にとっても不利益にしかならないということです。



「つらい=病気」ではないという話



恋人に別れを告げられて悲しくて涙がでて、眠れなくなった。

職場で不正が発覚し、懲戒処分を受けて気分が沈んだ。


こうした出来事をきっかけに精神科を受診される方も、頻繁ではありませんが、これまでに実際に経験したことがあります。

その多くは、出来事が起きてからまだあまり時間が経っていない段階で来院されるケースでした。


もちろん、落ち込みが長期間続き、仕事や日常生活に明らかな支障が出てくれば、専門的な支援が必要になります。

しかし、嫌なことや望ましくないことが起きて気分が落ち込むのは、病気でも異常でもありません。

それはむしろ、ごく自然な人間の反応です。


医療機関としては、受診していただけること自体は経営上ありがたい側面もあります。


けれど、だからといって安易に薬を処方し、結果として薬への依存を生んでしまってよいのか。

その点については、医師として常に慎重であるべきだと感じています。


悲しいときには、思いきり涙を流して悲しむ。

自分の落ち度でやるせない気持ちになったときには、その感情を糧にして次へ活かす。


感情をきちんと味わい、受け止めること。

それは、健全なメンタルを保つために欠かせない過程だと思います。

安易に薬に頼るよりも、そのほうが長い目で見れば、心はしなやかに保たれるのではないでしょうか。(必ずしも薬を求めて来院されてる訳ではないでしょうが)





なんでもかんでも「病気」にしてしまうことの弊害



かつて、大相撲で一時代を築いた横綱  朝青龍 が、

疲労骨折の診断書を提出し親方へ断りなく巡業を休場後、母国モンゴルへ帰国し、現地で楽しそうにサッカーをしている姿が報道されバッシングを受けた事がありました。


その後、マスコミを避けて引きこもるようになった彼に対して、

精神病ではないか、解離性障害ではないか、いや神経衰弱状態だといった、さまざまな憶測的診断がメディアで飛び交いました。


そのとき、精神科医の 小田晋 がテレビでコメントを求められてひとこと


「単に不貞腐れているだけでしょう」


この一言は、揶揄でも軽視でもなく、

人間の感情を過剰に「病名」で説明しようとする風潮への、極めて的確な指摘だったように思います。


(小田晋氏も本人を直接診察したわけではないため、あくまで推測の範囲ではありましたが、その後の朝青龍の言動を見る限り、この見立ては比較的、的を射ていたように思われます。)






医療が踏み込みすぎないために



現代は、メンタルヘルスへの理解が進んだ一方で、

「つらい=病気」「落ち込む=治療対象」と短絡的に結びつけてしまう危うさも併せ持っています。


医療として介入すべき状態と、

人生の中で誰もが経験する失望や挫折、悲嘆といった感情とを、

きちんと区別すること。


それもまた、精神科医の重要な役割だと思っています。


人は、傷つき、悩み、立ち止まりながら成長していきます。

その過程まですべて医療化してしまうことが、本当に本人のためになるのか。

そこには、慎重な判断が必要です。


必要なときに、必要な医療を。

そうでないときには、人として自然な感情を、自然な形で生きる。


なんでもかんでも病気として扱わないこと。

それもまた、健全な社会と健全な医療のために大切な視点ではないかと思います。