精神科では、初診の予約が取りにくいと感じられることが少なくありません。
その大きな理由の一つが、初診では十分な時間をかけて診察を行う必要があるからです。

初診では、現在の症状だけでなく、
家族構成や生い立ち、学歴・職歴、これまでの病気や通院歴、服用中のお薬などを詳しくお伺いします。
場合によっては、心理検査を行い、状態を多角的に評価することもあります。(当院では簡単な心理検査しかできませんが)

こうした診察を「じっくり話を聞いてもらえて安心した」と感じてくださる方がいる一方で、
「眠れないだけなのに、なぜ関係のないことまで聞かれるのか」と
疑問や戸惑いを感じられる方もおられます。
中には、予診の段階で多くの事を尋ねられ不安や不満が強くなり、診察前に帰られてしまうケースもありました。

しかし、一見関係なさそうな事まで伺う必要があります。
例えば「眠れない」という一つの症状の背景には、生活環境やストレス、心身の不調など、さまざまな要因が隠れていることがあります。
そのため、症状だけを切り取って薬を処方することは、必ずしも適切とは言えません。

精神科の診察では、患者さんご自身もまだ気づいていない背景や問題を、
一緒に丁寧に探っていくことを大切にしています。
その上で、必要な治療や支援を考えていく――
それが、精神科初診に時間をかける理由です。

診察室から見える、いまの働き方のしんどさ


時期にもよりますが、当院には働き始めて間もない方や、昇進・配置換えをきっかけに頑張っていた方が、電池切れを起こしたように疲弊して受診されるケースが増えています。

上司が変化に気づき受診を勧めてくれたという方もいますが、会社に出勤できなくなって初めて受診される方も少なくありません。


IT化で仕事は速くなり、密度は高くなった


ITの普及により、仕事のスピードは確実に上がりました。
メール、チャット、オンライン会議、各種システム入力。「すぐ返せる」「どこでも対応できる」ことが当たり前になっています。

しかし、その分、
同じ時間内に処理すべき仕事量と判断回数は明らかに増えています。

一つ一つの作業は短くなっても、休む間のない高密度な労働が続く。診察室で話を聞いていると、こうした疲れ方をしている方が非常に多いと感じます。



責任感の強い人ほど、休むことをためらう


疲弊して受診された方には、必要に応じて診断書を発行します。その際によく聞くのが、

「今、自分が休んだら会社に迷惑をかけてしまう」

という言葉です。

責任感の強い方ほど、この考えに縛られやすい。
結果として無理を重ね、回復までに時間がかかってしまいます。



休む前提で仕事を回すのは、会社の役割


社員が突然休むことは、事故による怪我、急病での入院など、いくらでも起こり得ます。

そうした事態でも業務が回るように体制を整えるのは、本来、会社が考えるべきことです。

個人がすべきなのは、「倒れるまで働くこと」ではなく、日頃から自分の体調を整え業務に臨み、不調に早く気づくことだと思います。


なぜメンタルの不調だけ、特別視されるのか


メンタルの不調で休むことに、
強い気兼ねを感じる方は少なくありません。

しかし、心の不調も体の病気と同じです。
突然、一定期間の休養が必要になることはあります。

それを「申し訳ないこと」と感じさせる空気こそが、
不調を長引かせているように、医師として感じます。


町医者として伝えたいこと


限界まで我慢してから受診する必要はありません。
「少しおかしい」と感じた時点でブレーキをかけることは、逃げではなく、適切な自己管理です。

診察室で起きていることは、社会の縮図です。
IT化で仕事が速くなった今こそ、
無理を前提にしない働き方が本当に求められているのではないでしょうか。



皆さんが病院を選ぶ際、どのような点を重視されるでしょうか。
施設の新しさや清潔さ、立地といったハード面、あるいは医師やスタッフの経験・対応などのソフト面。どれも大切な要素です。

その中で、私自身が日々診療を行う医師として、また一人の患者としても**特に重要だと感じているのが「通院にかかる時間」と「待ち時間」**です。


通院にかかる時間について

通院時間は、ご自宅や職場の場所など、患者さんそれぞれの事情によって異なります。
ただし、毎回「遠方から予約時間に間に合うように通う」ことは、想像以上に負担になります。家もしくは職場から来るのに30分以内が望ましいかと思います。

実際に、無理をして遠方から初診予約を取られた方の中には、
•数回通院した後に来院が途絶える
•予約変更やキャンセルが頻繁になる

といったケースが多いです。(わざわざ時間をかけて行くほど、何か特別な治療が受けられる訳ではないと理解されたのかと思います。)

そのため当院では、初診予約の際にご自宅や職場から無理なく通院できる距離かどうかを確認させていただくことがあります。
これは受診をお断りするためではなく、継続して通院できる環境かどうかを一緒に考えるためです。



待ち時間について

待ち時間は、患者さんの努力というよりも医療機関側の運営努力が問われる部分だと考えています。

予約制を取らず、来院順で診察を行う医療機関もありますが、患者数が多い場合、
「いつ終わるかわからない」
という状態になり、前後の予定が立てにくくなります。

一方で予約制であっても、
「10時に予約しているのに、毎回2時間以上待たされる」
というケースも珍しくなく、そうした不満をきっかけに他院から当院へ転院されて来られる方も少なくありません。


当院の考え方と取り組み

当院では、待ち時間は患者さんの満足度に大きく影響する重要な要素と考え、
できる限りお待たせしないよう、受付・医師ともに日々意識して診療を行っています。(そのため予約を一定以上取りすぎないようにしています。)

もちろん、
「待たせないために診察が極端に短い」
というのは本末転倒です。

限られた診療時間の中で、
•必要なことはきちんと行う
•無駄を減らし、要領よく診療を進める

そのための工夫を続けています。

また、窓口や電話口で予約調整を行う医療スタッフも、
•初診枠の調整
•急なキャンセル・変更
•遅刻のご連絡

などがあった際には、その時点の予約状況を踏まえ、できるだけ他の患者さんの待ち時間が少なくなるよう調整しています。

そのため、私ども医師からも、
予約の変更やキャンセルは必ず事前にお電話でご連絡ください
とお願いしています。


無断キャンセル・予約なしでの来院についてのお願い

時折、
•無断キャンセルもしくは遅刻
•予約も事前連絡もなく突然来院される

といったケースがあります。(こういうケースはスタッフの努力を無力化させてしまいます。😅)

その場合、原則としてきちんと予約を取られている方を優先して診察するため、
どうしても最後の順番になってしまいます。
また、当日の診療時間の状況によっては、後日あらためて予約を取り直していただくこともあります。

これは特定の方を不公平に扱うためではなく、
すべての患者さんのスケジュールと診療の質を守るための対応です。


最後に

当院では、
「無理なく通えて、できるだけ待たずに、安心して受診できる環境」
を大切にしています。

もちろん体調が悪くて連絡がとりづらかったという方もいらっしゃるかとは思います。

皆さん一人ひとりが気持ちよく受診できるよう、
どうか予約や来院ルールへのご理解とご協力をお願いいたします。

今後も、より良い診療環境づくりに努めてまいります。


ジン•メンタルクリニック