体調不良で会社に行けないと相談に来られた方には、まず詳しく経緯やご本人のお考えを丁寧に伺ったうえで、基本的には休養を勧め、必要に応じて診断書を発行しています。

(治療については、症状や状況によってはお薬を処方することもありますが、休養だけで回復が見込める場合も多く、その際はご本人の意向を確認したうえで、あえてお薬を出さないこともあります。)


なぜなら、健康より優先させるべき仕事はないと考えているからです。

しかし、「自分さえ我慢すれば」「会社が辞めさせてくれない」といった考えにとらわれ、自分を追い込んでしまう方も少なくありません。


仕事を辞めるかどうかを決める権利は基本的に本人にあり、会社が本人の意思に反してそれを止める法的な権限はありません。


特に、社会に出たばかりの若い方にとっては、今の状況が乗り越えるべき試練なのか、それとも避けるべきものなのか迷うことも多いと思います。その点については、休養を勧める立場として私自身も悩み続けています。


ただ一つ、これだけは理解していただきたいのは、自分の健康を犠牲にして無理をし、心身を壊してしまうことは、本人にとっても、雇っている会社にとっても不利益にしかならないということです。


「会社に行くのがつらい」といった相談は、5月の連休明けや年始の休み明けに特に多く寄せられます。

連休明けには、当日初診をうたっている大規模な精神科クリニックであっても、かかりつけ患者さんの対応に追われ、初診の予約が取りにくくなることが少なくありません。 そのため、当院のような小さな町医者でも当日に電話でご相談をいただくケースも多く見られます。当院では、診察枠に空きがある場合には、当日受診に対応できることもあります。


当院では、仕事をきっかけに一時的なメンタル不調をきたした方については復職もしくは転職、退職後、短ければ3ヶ月ほど、長くても半年程度でいったん診察を終了するケースが多く、かかりつけ患者さんが過度に蓄積しにくい体制となっています。そのため、新しい患者さんを比較的受け入れやすい状況です。


一方で、統合失調症や慢性的にうつ症状が続く方については、継続して診療を行っています。

また、いったん診察が終了した場合でも、再発の可能性に配慮し、「何かあれば再度ご連絡ください」とお伝えしています。最終受診から3か月以上経過した再受診の方は再初診扱いとなり、まったくの初診よりも予約が取りやすくなっています。


ただし、傷病手当金などのように、定期的な診察を受けていることが書類作成の要件となる制度をご利用の場合には、定期的かつ継続的な通院が必要となります。


医療機関との「マッチング」という視点について

病院を受診する際、
「この症状ならこの診療科」と比較的すぐに判断できる場合もあれば、
最近ではITに詳しい方などは ChatGPTなどのAIに症状を入力して、考えられる病気や受診すべき診療科を知る こともできるようになりました。

そのため、以前に比べると
「どの診療科にかかるか」自体は、そこまで難しくなくなってきた と言えるかもしれません。


精神科受診が難しい理由

一方で、精神科の場合は少し事情が異なります。

 •最初から「メンタルの問題かもしれない」と思って精神科を受診するケース

 •体の不調だと思って内科や耳鼻科を受診し、検査では異常が見つからず「精神的な要因の可能性がある」として精神科受診を勧められるケース

このように、精神科にたどり着く経路自体はさまざまです。

しかし、実は本当に難しいのは
「精神科かどうか」ではなく、「どの精神科に行くべきか」 という点です。


精神科にも「得意分野」や「診療スタイル」の違いがある

内科の場合でも、
 •内科全般を幅広く診るクリニック
 •糖尿病・内分泌に強い医師
 •循環器(心臓・血圧)を専門とする医師

など、同じ内科でも得意分野(サブスペシャリティ) があります。

精神科も同様に、医療機関ごとに守備範囲や診療スタイルは異なります。
 •精神科全般を幅広く診るクリニック
 •児童精神科や発達障害を中心に診ているところ
 •トラウマや依存症など、特定のテーマに力を入れている外来

★さらに、
精神科の中でも治療の軸はさまざまで、
どちらかというと薬物療法を中心に行っている医療機関もあれば、
心理士が多数在籍し、心理療法やカウンセリングに力を入れていたり、m-ECTなど薬物以外などの治療を行っているところもあります。

逆に言えば、
「この分野はあまり扱っていない」「専門外である」ケースも少なくありません。

ミスマッチが生む不幸

こうした専門分野や診療スタイルの違いを理解しないまま受診すると、
 •患者さんは「思っていた診療と違う」「期待していた関わりと違う」と感じる
 •医師側も、本来得意ではない領域の診療を続けることになったり、折角受診して頂いたのに無駄に終わる

結果として、
患者にとっても、医師にとっても不幸なスタートになってしまうことがあります。


ミスマッチを防ぐためにできること

こうしたミスマッチを防ぐために、
患者さん側でもできる対策があります。
 •医療機関の 公式ホームページを確認する
 •どのような疾患・年齢層を主に診ているのか
 •薬物療法が中心なのか、心理療法にも力を入れているのか
 •口コミや体験談を参考にする
 •実際に受診した人の感想は、診療の雰囲気を知る手がかりになります(もちろん、すべてを鵜呑みにする必要はありません)


自分を守るための「事前準備」

受診前に少し情報を集めるだけでも、
 •無駄足になる事を防ぐ
 •不必要な出費を抑える
 •そして何より、気持ちの消耗を防ぐ

ことにつながります。

精神科受診においては、
「どこに行くか」も治療の一部です。

なるべくミスマッチを起こさないための準備は、
患者さん自身を守るための大切な行動と言えるでしょう。


追記: 精神科に受診しようと思うくらいメンタルが追い詰められてたら調べるという行為も大変かもしれません。当院では予約のお電話の際にミスマッチがないように患者様の状況をお伺いしてご案内しています。

当院は発達障害は得意分野とはしておらず、発達障害かどうか知りたいという方には心理士が在籍している他医療機関への受診をお勧めしておりますが、
発達障害を専門としている医療機関がなかなか予約がとれないところが多いためか、専門でないにもかかわらず、どうにかみてほしいとゴリ押ししてこられるケースもありますが、待ち時間があってもミスマッチは避けた方が良いかと思われます。

ジン•メンタルクリニック