今回は「精神科の転院」について、注意すべき点をお話しします。


引っ越しや転勤など、地理的な事情でやむを得ず転院する場合は別として、「今の病院に不満がある」「納得がいかない」といった理由で、自分に合うところを探すのは悪いことではありません。私自身、これまでの投稿でもその考えをお伝えしてきました。


ただし、転院の際にはいくつか注意が必要です。

先生との相性が合わない、カウンセリング・デイケア・r-TMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)など薬以外の治療を受けられる医療機関に移りたい、あるいは予約方法や通院システムが合わないといったようにその理由が病院ごとに差別化できるものによる場合は、転院することで不満が解消されることがあります。


一方で、「今の薬ではなかなか良くならないから病院を変えたい」という場合、注意が必要です。


実際にそのような方の処方内容を見ても、特に問題があるケースはほとんどありません。なかには症状が長引いているために薬の種類が増えていたり、薬物に依存ぎみとなり治療に苦労しているケースが多い印象です。


また、「不安が強くて薬をもっと増やしてほしいのに先生が出してくれないから転院した」という方も時々おられますが、これも難しいケースです。

というのも、きちんとガイドラインに沿って治療を行っている医師ほど、薬の種類や組み合わせの上限を守り、必要以上に増やさないようにしているからです。


つまり、「断られた」こと自体が、むしろ適切な医療判断である場合も多いのです。


十分な説明がなければ患者側からしたら何もしてくれてないと不信感を持たれることは理解はできます。


ですからそのような理由で当院に転院されてこられた方に対して必ずしも希望された通り薬を増やすことはできないときちんと説明はさせて頂きます。



精神科の専門医として研修を受けた医師であれば、基本的にはガイドラインに沿った標準的な薬物治療を行っています。その病院にだけある「秘伝の薬」はないのです。


したがって、診断や処方内容に大きな差があることはそこまではないかと思われます、転院によって必ずしも治療が劇的に変わるわけでもないことに気がつくこともありがちなことです。